Thu.

異国の華 2  

 とりあえず今までの仕入れルートがどうなっているのか確認ということで、”金狼の牙”は船着場に訪れていた。
 ギルは近くにいた、手の空いていそうな船乗りに話し掛けた。

4異国の華

「ちょっといいかな?東方の国に行きたいんだが・・・ワコクっていう」

 人懐こい感じのする船乗りは、うーんと唸って腕組みをする。

「ワコクねぇ・・・そこに行くには一苦労だな。いい船使ったとしても、行くだけで2ヶ月くらいかかるぞ?」
「ええ!!」

 驚いた声を上げるギル。
 そんな事も知らないのかと、ため息混じりに船乗りは「あたりまえだ」と漏らした。
 彼に代わってアウロラが進み出る。

「困りましたねえ・・・何とかなりませんか?」
「こればっかりはなぁー。まぁ、航海図見て納得してくれよ」

 リューンの船乗りの大部分は、女性に甘い。
 しかも若くてそれなりに可愛らしいとあれば、その性向も大分に発揮されてしかるべきだろうが、人間できることとできないことというのは厳然として存在するのである。
 船乗りの広げた航海図を全員が覗き込むも、あいにくとその見方がよく分からず首を捻ることとなった。

「よくわからないな・・・」
「そういや、俺ら海洋冒険はやったことないもんなァ」

 アレクとエディンの会話を頭上に聞きながら、ミナスが「ありがとう、もういいよ」と礼を言って航海図を返却した。
 とりあえず船着場から離れ、リューンの街中に戻った一行はこれからの方針を相談し始める。

「困ったなぁ」

と呟いたミナスが、他の仲間の顔を振り仰いだ。

「とりあえずみんなの案は?」
「ないのなら作っちゃえばいいのよ」

5異国の華

 すごい発想を始めたのはジーニであった。自分でやらないこと前提だからか、手芸店の材料でもってワコクの服を作っては・・・と言うのだ。
 もしそうなれば自分がこき使われること必至であるアウロラは、「行く途中の戦争に参加しちゃえばいいのさ!」と主張をするギルを宥め、頬に手を当てて考え込み始めた。

「どうしたの、アウロラ?」
「・・・ワコクって言っても、船で飛ばせば何とか期日内にいけるんじゃないでしょうか」

 航海図の見方の詳細を知らないので断言はできないが、と断りを入れて、

「もう一度航海図をチェックしてみませんか?いい航路を発見できるかもしれません」

と言う意見に大人組みは顔を見合わせた。プロである船乗りが無理と断言したものだが、この娘であれば本当に見つけかねない。
 先ほどから黙り込んでいるアレクに濃藍色の瞳が視線を定めると、彼は無言で肩をすくめた。

「・・・・・・」

6異国の華

 特に思いつくものもなかったらしい。
 エディンの意見はとアウロラが話を振ると、彼はにやりと笑った。

「俺たちは・・・冒険者だ。宝探しは得意分野。元々、ワコクのドレスを失くした原因は海難事故だと依頼人は言ってただろ」
「ええ。・・・・・・って、まさか」
「ブツは海ン中って事だ。だったら探し出すまで」
「気は確かですか?ものは布ですよ?・・・腐らないわけないじゃないですか・・・」
「いや、それがそうとも言えねえのよ」

 脱力したアウロラにエディンが説明した。
 上流階級のサロンにとって価値のあるお宝なら、包装は厳重である。少なくとも、他の品物のように潮風に当たるに任せるわけにはいかない。
 そういう時、ほぼ完璧な密閉状態を作れるような特注のチェストを使って保存するのが通例だと言うのだ。

「かえって、金塊とかなら腐りも錆びもしないからな。ああいうのはむき出しだ。食料やそういう腐るお宝に関しての保存は、船乗りにゃ結構な課題なんだぜ?」
「なるほど・・・・・・。よくご存知ですこと」
「これもまあ、若いときに得た知識なんだがな。・・・っと、悪い。ミナスの意見を聞いてなかったな」

 エディンに急に「お前はどうしたらいいと思う?」と訊かれ、少し目を白黒させていたミナスだったが、彼は黙って首を横に振った。アレクと同様、特に思いつくことはなかったらしい。
 ギルはそこで意見をまとめた。

「えーっと、サルベージ船か、海図の見直しか、手芸店か、傭兵登録か・・・」
「アンタ、≪狼の隠れ家≫で最近戦闘ばっかりとか言ってたじゃない・・・」
「じゃあ傭兵は止めとくか?でも船の支度の心配とかは、これだと要らないんだぜ?」
「それなら手芸店だってそうよ?」
「ただ・・・それも問題でして・・・」

 ギルとジーニの言い争いの途中で、”金狼の牙”における家事のほとんどを引き受けるアウロラが、困惑を滲ませて口を開く。

「私はあいにくと、ワコクのドレスというものの形も作り方も存じません。まずはそこを調べてとなると、相当時間かかるかもしれませんよ」
「あ、そうか・・・アウロラもワコクのドレスなんて知らないわよね」
「ただ、海図の見直しとサルベージも問題がないわけじゃない」

 アレクがそこで口を挟んだ。

「沈んだドレスがどこの地点にあるか、はっきりと分からないと無駄足になる。一方、海図はプロである船乗りが無理と口に出していた。協力が得られるかどうか・・・」
「だよなあ・・・どうする、リーダー?」

 ブルネットを掻きつつ問いかけたエディンに、ギルは決心した答えを口にした。

2013/04/25 12:18 [edit]

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