Thu.

金狼の牙の再調整 3  

 かつて娘さんがならず者たちへのトラウマを克服する為に、決闘を行なった裏山にてのこと――。
 黄金色の斧の刃が間断なく襲い掛かってくるのを、軽いというよりは精妙なステップで回避し続けたエディンは、重い刃が振り抜かれた隙をついて猛然と攻勢に出た。
 凄まじい速さの細剣の突きと、懐に潜りこむようにした短剣の斬撃という二つの攻撃を、鎧の硬い箇所を当てる事でどうにか防いだギルが焦った声を上げる。

「ちょ、ちょっとちょっと!何か本気の速さなんすけど!?」
「言い訳なんて見苦しいぜ、リーダー」

 左耳の上を危うく細剣が掠め、ギルの黒髪がニ、三本宙に舞った。
 エディンは深緑都市ロスウェルで盗賊ギルド同士の争いに首を突っ込んだ際に、さる道場に立ち寄ったことがある。
 その際に見かけた双剣の技を、自分で使える様に練習中なのである。
 ロスウェルにいた頃に理論と動き方だけを覚えておき、実力がついてからそれを習得しようと思っていたのだが・・・。
 存外難しく、こうしてギルに実戦紛いの訓練に付き合ってもらいながら、自分のものにしようとしているのだ。
 両手の気力を集中・硬化して、それを相手に飛ばして切りつける技なのだが・・・・・・戦いのさなかに気力を集中させるまではともかく、それを硬化するまで持っていくのが大変らしい。

「ちっ。こいつを使えるようになれば、色々と便利だっていうのに」
「舌打ちしながら、さり気なく【暗殺の一撃】を使ってるんじゃねー!!」

 その技じゃないだろ!とギルがツッコミを入れた。
 喉に向けて突き出された短剣を斧の柄で叩き、軌道を逸らす。
 だがその合間に、エディンの細剣が鎧の脇にある隙間から刺し込まれようとしていた。

「・・・・・・!!」

 もう距離を取るだけの時間が無いと感じたギルは、咄嗟に体を回転させ急所を刺されないようにすると、背中を向けたままエディンに体当たりをぶちかました。
 二人の体がごろごろと地面を転がり、10mほど離れて立ち上がる。

「あっぶね。危うく刺されるとこだった」
「・・・っつー。いてて、おっさんに乱暴なことするなよ・・・」
「エディンの攻撃は、的確に人体急所狙うからこえーんだよ!」
「細剣は突き用なんだから当たり前だろっ・・・と。・・・・・・待てよ?」

 ロスウェルの双剣術の師匠――サクラスという名前の身軽そうな優男だった――が、「この技は斬撃そのものを気力で具現化し、相手に飛ばす技だ」と言っていた。
 つまり、突きを多用している今のエディンの技では、いつまで経っても身につけられないということである。
 しかし、師匠の言う事が本当であれば、技を使うための剣には斬るための刃は必要ないはずだ。『斬る』のは剣ではなく、剣の持ち主の気力なのだから。
 エディンは【花散里】を使う時のイメージを脳裏に描いた。
 あれは本来であれば、魔力で生み出した氷片を扇によって花びらのように舞い散らせるという技である。
 エディンの場合は扇を使わず細剣の刀身に氷片を作っておき、しなやかな細剣を振り抜くことで同じような効果を発生させているわけだ。

「・・・・・・なーるほど。答えはすぐ近くにずっとあったってぇワケか」
「ん?何か言ったか?」
「リーダーに礼を言ったのさ。まあ見ててくれよ」

 エディンは動きの止まったギルに背を向けると、近くにあった大岩へと向き直った。
 そしてしばらくそれを睨みつけていたかと思うと、両腕をいきなり交差させる。

「?」

 一体どうしたのだろうとギルが眺めていると、見る見るうちにエディンの腕が盛り上がっていった。

「ハアァァ・・・・・・!」

 丸太のような腕になったかと思うと、そこからうっすらとした光が細剣と短剣に伝い流れる。
 その光が全て二つの得物に流れていったと思った直後、エディンは両の腕を振り下ろしていた・・・・・・!

 スパアアアァァンッ!!!

 勢いのいい音と共に、大岩が真っ二つに断たれている。人間がやったとは思えないほど滑らかな切り口であった。
 ずっと経過を見守っていたギルは、呆気に取られたような顔で言った。

「すげー・・・。もう習得しちゃったわけ?【斬隗閃】って技」
「一応な。後は、どれだけ本番でスムーズにこいつを使う事が出来るかって辺りだろう」

 装飾品しか売っていない、変わった防具屋で入れてもらった左肩の刺青を無意識に掻きながら、エディンは応える。

「単体でも多数相手でも使える技だ、ちゃんと練習しておかないとな」

 刺青の意匠である黒猫とルーン文字を見つめながら、ギルは「頼んだぜ」とだけ短く言った。

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■後書きまたは言い訳
そんなわけで予告どおりの小話回・・・勝手気ままに書いたので、スクリーンショットはございません。
色々またシナリオ出してきました。

・リューン思案橋界隈(竹庵様)
・風鎧う刃金の技(Y2つ様)
・歌の一族(周摩様)
・魔光都市ルーンディア(ロキ様)
・メレンダ街ペルラの市(ブランカ様・匈歌ハトリ様)
・聖域といわれた森(OKN様)
・娘と冒険者(きちょうじ様)
・深緑都市ロスウェル(周摩様)

前に出てきたシナリオを引っ張り出すのって、書き手側でも「あ~。こんなことあったよな~」とか追憶が楽しめるので非常に好きです。

アウロラの【浄福の詠歌】に関しては少し前のタイミングで購入をしているのですが、文章の流れとして小話ではみんなのスキルと同時期に買ったことにしました。
・・・・・・憑精術で美少年が男の娘になるとか、中々おいしいですよね!(何)本当、あの方真面目な顔で販売してくださいましたが、誰も止めないこの楽しさたまらない。
メレンダ街ペルラの市にあった【春靄香】は、正確には錬金術の範囲外だと思うのですが、瓶に調合するイメージならこれでもいいんじゃないかな・・・と。「世捨ての集落(カムイ様作)」で売っている【瞳の誘惑】と迷ったんですけどね・・・あちらは詠唱いらずだし。ただ、魅了キーコードと回復が一緒になってる方が、先々便利そうだったのでこちらにしました。
エディンについては攻撃スキルの追加。便利系をつけるか迷いましたが、闇に隠れるキーコードは「魔術師の工房(Niwatorry様作)」謹製の≪霧影の指輪≫で充分だし、盗むや窃盗のキーコードは「鼠の行路(SIG様作)」の【盗賊の手】についてました。・・・・・・回避上昇スキルも「俺はもう若くないから素早くなんて動けないぜ~」と公言してるエディンに似合わないかと思って、すっぱり諦めます。
後はこっそりと自作シナリオから召喚獣買い上げたり。

それから、9レベルになった”金狼の牙”たちについて、ここで最終目標を発表します。

「敵意の雨(JJ様作)」を最後のシナリオとして定めます

・・・・・・「人生という名の冒険(テイル様作)」とどっちにしようか迷いましたが、”金狼の牙”たちって「ゴブリンの洞窟(Ask様作)」やっていないのです。クリア推奨シナリオを無視してというのもなんですし、どうせならクロスオーバー多い総決算シナリオで最後を〆るほうが、何となく”金狼の牙”らしいかと。(笑)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/04/18 05:41 [edit]

category: 小話

tb: --   cm: 2

コメント

「敵意の雨」…あのレベル10未満お断り、かつバフ技能+召喚フル活用前提のユカイツーカイ怪○くん、な戦闘シナリオですか。「人生と言う名の冒険」だとそこで一連の物語が終わりな感じですが、「敵意の雨」の終わり方のほうが確かに金狼の牙の面々にはふさわしい気がします。何かこの6人がどこかに落ち着いてしまうのが想像できなくて。

>>なんとかの希望亭のあの人
あの人、女装して自覚がないままに男女問わず無差別撃墜した前科があるから…w

URL | 堀内 #wKzDXcEY | 2013/04/20 08:32 | edit

コメント有り難うございます♪

ええ、そのユカイツーカイ○物くんな戦闘シナリオです。
何か、ギルとかアレクが若い頃の回想をする様子って中々似合わない・・・とか。(笑)
エディン辺りならまだ想像はできるんですけどね・・・。

そういえば、ピンク色に星の装飾入りのワンド持って大立ち回りやっておられましたね。メイ○服で。(笑)
尊敬すべき先輩なんですが、そういう「あれ!?」っていう要素も含めて好きです。でもアウロラは呆れてるんだと思います。(笑)

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/04/20 18:39 | edit

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