Sun.
聖域といわれた森 4 
「なにぃっ!?・・・自警団!何をやっている!あいつらを止めるんだ!」
自警団のうち、何名かが物陰からの【魔法の矢】によって戦闘不能となり倒れるのを見て、ガラードは焦りながら指示を出した。
「遅い遅い。そんなんじゃ、あたしたちは止めらないってね」
急いで冒険者を止めようと立ち塞がる自警団に、用意周到な”金狼の牙”の攻撃が降り注ぐ。
ベンヌの神聖なる炎やイフリートの吐息にたたらを踏んだ彼らに、アウロラの【氷姫の歌】が炸裂する。
異形の美貌を讃える歌に恐慌状態となったところへ、前衛たちが飛び込んで武器を縦横に振るった。フラフラになりながらも残っていた敵も、ジーニの【旋風の護り】によって吹き散らされていく。
「・・・クゥ・・・!役に立たん奴等だ!」
「どうする、残りはそちらさんだけのようだがね?」
エディンの挑発に激昂したガラードは得物を構えて突進してきた。

「・・・俺が片をつけてやる!」
「ふふーん。理想的な布陣、まさに飛んで火にいる夏の虫ってとこね」
「油断したら危ないよ、ジーニ」
鼻歌交じりに≪エメラダ≫を構え始めた賢者へ、ミナスが釘を刺した。
「だーいじょうぶ。あいつら、回復は傷薬頼りみたいだからね・・・そんなんじゃあ、あたしたちは止めらないわよ」
そして彼女の予測どおり、冒険者たちが大した怪我を負う事もなく、ガラード含む最後の自警団の勢力はあっという間に取り押さえられた。

「ここで失敗するとは・・・・・・」
「なにを考えているかは知らないが、もう諦めるんだな」
颯爽と言い放ったサラサールの顔を睨みつけつつ、ガラードが呻く。
「・・・負けるわけには・・・いかない!」
怪我を押して立ち上がろうとする彼を、エレンが慌てて止めた。
「ガラード!もうやめて!もう勝負はついたはずよ」
「あの方に宝珠を渡すまでは・・・」
「・・・・・・あの方?」
不審そうに顔を歪めたギルが問いただそうとした瞬間。
ガラードの体に眩いばかりの魔力光が突き刺さった!
「ぐぁ・・・・・・!」
「見苦しい奴だ・・・。お前の役目は終わったのだよ」
どこから現れたのか、男が一人・・・遺跡の中央に立っていた。
事切れたガラードに悲しげな視線を向けてから、エレンは震える声で訊ねる。
「・・・なに?あなたは・・・誰?」
「・・・お前達に名乗る必要はない。邪魔者は消えるがいい!」
謎の男の腕がまっすぐ伸びて、ガラードを殺した時以上の魔力が収束していく・・・・・・。
だがしかし、その魔法が放たれることはなかった。
「・・・チッ!・・・気づかれたか」

横目で森のほうをちらりと睨んだ後、男はガラードの懐から何かを奪い・・・転移呪文を唱えると、一瞬の間に男は去っていた・・・。
呆然とした様子で、サラサールが呟く。
「・・・どうなってるの?」
「それはこっちの台詞だ。いったい、なんだってあんな強そうなのが・・・・・・」
エディンは言葉を切った。
凄まじい速さで、こちらに近づいてくる存在がある・・・!
目配せで再び戦闘状態の構えをした一行の前に、森の中から風の如く神精族が現れた。
先頭には、見覚えのある大きな狼・・・・・・ファナス続の長の姿がある。
長は脳裏に直接響く声で言った。
「・・・一足、遅かったようだな」
「・・・・・・誰かと思いきや、あんたか。さっきの奴はそれで逃げたんだな」
ギルが斧の構えを解くと、その隣にエレンが立って呼びかける。
「ルイアール様?」
「巫女のエレンか・・・」
「どうなっているんですか・・・? 先ほどの者は・・・?」
ルイアール、と真名を呼ばれた長はしばらく黙り込んでいたが、なにを決意したのか、こちらへ再び向き直った。
「・・・汝らに話せる事は2つ・・・。あの者が、この遺跡に封印されていた宝珠を持って行ったという事」
そして、と長は厳しくも悲しげな目をして続けた。

「・・・我らの役目が終わったという事。宝珠を監視するという役目がな」
「・・・私たちは・・・どうなるんですか?」
エレンの問いに、一瞬の間があった。
「本来なら、この村ごと滅びる定め。しかし汝らにはチャンスをやろう」
「チャンス・・・だと?」
ファナス族の世話をする巫女も、巫女を戴く村も、彼ら神精族の役目がなければ不要だというのである。
それを覆す何を提案するのかと、アレクは体を強張らせた。
「そうだ。1時間以内に結界の外へ逃げ出すか、いまこの場で我を倒すか・・・」
「・・・・・・」
”金狼の牙”たちは眉を顰めた。
相手は、自分達が手も足も出ないうちにこちらを打ち倒してきた化け物である。
冒険者としての保身を考えれば、当然だが逃げる方法を選ぶべきであろう。
しかし、それでは村に残っている人間たちが生き延びる術がない。
進退窮まったとはこのことだろう。
知らないうちに、ギルの背中に脂汗が滲んできていた・・・・・・。
自警団のうち、何名かが物陰からの【魔法の矢】によって戦闘不能となり倒れるのを見て、ガラードは焦りながら指示を出した。
「遅い遅い。そんなんじゃ、あたしたちは止めらないってね」
急いで冒険者を止めようと立ち塞がる自警団に、用意周到な”金狼の牙”の攻撃が降り注ぐ。
ベンヌの神聖なる炎やイフリートの吐息にたたらを踏んだ彼らに、アウロラの【氷姫の歌】が炸裂する。
異形の美貌を讃える歌に恐慌状態となったところへ、前衛たちが飛び込んで武器を縦横に振るった。フラフラになりながらも残っていた敵も、ジーニの【旋風の護り】によって吹き散らされていく。
「・・・クゥ・・・!役に立たん奴等だ!」
「どうする、残りはそちらさんだけのようだがね?」
エディンの挑発に激昂したガラードは得物を構えて突進してきた。

「・・・俺が片をつけてやる!」
「ふふーん。理想的な布陣、まさに飛んで火にいる夏の虫ってとこね」
「油断したら危ないよ、ジーニ」
鼻歌交じりに≪エメラダ≫を構え始めた賢者へ、ミナスが釘を刺した。
「だーいじょうぶ。あいつら、回復は傷薬頼りみたいだからね・・・そんなんじゃあ、あたしたちは止めらないわよ」
そして彼女の予測どおり、冒険者たちが大した怪我を負う事もなく、ガラード含む最後の自警団の勢力はあっという間に取り押さえられた。

「ここで失敗するとは・・・・・・」
「なにを考えているかは知らないが、もう諦めるんだな」
颯爽と言い放ったサラサールの顔を睨みつけつつ、ガラードが呻く。
「・・・負けるわけには・・・いかない!」
怪我を押して立ち上がろうとする彼を、エレンが慌てて止めた。
「ガラード!もうやめて!もう勝負はついたはずよ」
「あの方に宝珠を渡すまでは・・・」
「・・・・・・あの方?」
不審そうに顔を歪めたギルが問いただそうとした瞬間。
ガラードの体に眩いばかりの魔力光が突き刺さった!
「ぐぁ・・・・・・!」
「見苦しい奴だ・・・。お前の役目は終わったのだよ」
どこから現れたのか、男が一人・・・遺跡の中央に立っていた。
事切れたガラードに悲しげな視線を向けてから、エレンは震える声で訊ねる。
「・・・なに?あなたは・・・誰?」
「・・・お前達に名乗る必要はない。邪魔者は消えるがいい!」
謎の男の腕がまっすぐ伸びて、ガラードを殺した時以上の魔力が収束していく・・・・・・。
だがしかし、その魔法が放たれることはなかった。
「・・・チッ!・・・気づかれたか」

横目で森のほうをちらりと睨んだ後、男はガラードの懐から何かを奪い・・・転移呪文を唱えると、一瞬の間に男は去っていた・・・。
呆然とした様子で、サラサールが呟く。
「・・・どうなってるの?」
「それはこっちの台詞だ。いったい、なんだってあんな強そうなのが・・・・・・」
エディンは言葉を切った。
凄まじい速さで、こちらに近づいてくる存在がある・・・!
目配せで再び戦闘状態の構えをした一行の前に、森の中から風の如く神精族が現れた。
先頭には、見覚えのある大きな狼・・・・・・ファナス続の長の姿がある。
長は脳裏に直接響く声で言った。
「・・・一足、遅かったようだな」
「・・・・・・誰かと思いきや、あんたか。さっきの奴はそれで逃げたんだな」
ギルが斧の構えを解くと、その隣にエレンが立って呼びかける。
「ルイアール様?」
「巫女のエレンか・・・」
「どうなっているんですか・・・? 先ほどの者は・・・?」
ルイアール、と真名を呼ばれた長はしばらく黙り込んでいたが、なにを決意したのか、こちらへ再び向き直った。
「・・・汝らに話せる事は2つ・・・。あの者が、この遺跡に封印されていた宝珠を持って行ったという事」
そして、と長は厳しくも悲しげな目をして続けた。

「・・・我らの役目が終わったという事。宝珠を監視するという役目がな」
「・・・私たちは・・・どうなるんですか?」
エレンの問いに、一瞬の間があった。
「本来なら、この村ごと滅びる定め。しかし汝らにはチャンスをやろう」
「チャンス・・・だと?」
ファナス族の世話をする巫女も、巫女を戴く村も、彼ら神精族の役目がなければ不要だというのである。
それを覆す何を提案するのかと、アレクは体を強張らせた。
「そうだ。1時間以内に結界の外へ逃げ出すか、いまこの場で我を倒すか・・・」
「・・・・・・」
”金狼の牙”たちは眉を顰めた。
相手は、自分達が手も足も出ないうちにこちらを打ち倒してきた化け物である。
冒険者としての保身を考えれば、当然だが逃げる方法を選ぶべきであろう。
しかし、それでは村に残っている人間たちが生き延びる術がない。
進退窮まったとはこのことだろう。
知らないうちに、ギルの背中に脂汗が滲んできていた・・・・・・。
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