Sun.

聖域といわれた森 3  

 最近この村では、一部の村人たちが森にある聖域を荒らしているという。
 聖域とは、この村の近くにある遺跡の事で、神精族から「近づいてはいけない!」と言われていたそうだ。
 彼らの巫女であるエレンは、当然のごとく神精族の怒りを買う前に止めようとしたが、それをなし得る事はできなかった。
 森林保護協会の人間が森に立ち入ってる事を知っていたので、その力を借りようと思ったそうだが、力量を確かめるべく作り出した幻の魔物だけで逃げ出してしまい、彼らの協力を得ることを諦めた・・・というのが、今回の魔物出現の真相らしい。
 ジーニは呆れかえってため息をついた。

「なんとも本末転倒ね。あんた達の幻のせいで、ここに調査以外の人間は入らないようにされたのに」
「・・・・・・協力者を得るにしては、少々やり方が稚拙過ぎないか?」

 アレクもぼそりと付け加えるのに、サラサールが「エレン様が、お一人で一所懸命考えた策に文句を言うな!」と噛み付く。
 その場の雰囲気が一気に険悪になったのに、アウロラが宥めに入った。

「まあまあ。・・・それでエレンさん。私たちが訪れた時に、あの幻影を解いたのですよね?」
「はい、そうです。幻影を見破ったので、この村の結界を一時的に解いて、村へお誘いしました」
「それが、どういうわけでファナス族の長から私たちが攻撃されることに?」
「す、すいません!それが予想外でして・・・」

 エレンたちが”金狼の牙”を出迎える前に、巫女から何も聞かされずじまいだった長が侵入者と勘違いし、攻撃をしたということである。
 そんな凡ミスによって、危うくあの世へ直行するところだった冒険者たちは、今度こそ呆れたため息を漏らした。
 だが、すぐに一部の村人たちも侵入者に気づいて”金狼の牙”を殺そうと動いていたそうだ。そこでエレンは彼らの身柄を預かった・・・・・・。
 ギルは今までの会話をどうにかまとめて、肝心の部分を訊いた。

「ようは、聖域って名前の遺跡を荒らす村人を止めて欲しい・・・ってことでいいよな?」
「はい、そのとおりです。報酬はこの首飾りで代わりにならないでしょうか・・・?」

 エレンはその首にかけていた金色のペンダントを外し、卓上へと置いた。澄んだ輝きを放つそれは、≪縁の首飾り≫というマジックアイテムだという。
 ジーニが杖の≪カード≫を片手に、その価値をじっくり鑑定する。

「・・・・・・価値があり過ぎて、うかつに売れないんじゃないかと思うんだけど。高いものだっていうのは確かよ」
「・・・どうですか?私たちに協力していただけますか?」

8聖域

「ふーん。・・・・・・まあ、ここまで来て知らん振りもあれだし」
「また深く考えないで返事をする」

 アレクが幼馴染の答えに嘆息すると、彼は赤くなりながらも抗弁した。

「だっ、だってエレンは俺達を助けてくれたんだろ!?なら、恩返しくらいはしてもいいじゃないか・・・」
「俺たちがいきなり重傷に追い込まれたのも、彼女のせいだけどな」

 とは言うものの、ちゃんとした報酬を用意してまでの頼みであれば無碍にもできない。
 ”金狼の牙”は若干心に引っかかるものがありながらも、エレンの願いを聞き入れることにした。

「じゃあ、行動は夜になってからということで、今は家の中で寛いでいてください」
「ああ」
「あと、昼間はこの家から出るなよ」

 サラサールが横から助言した。

「村の者に見つかると厄介だからな」
「そういうことか、了解した」

 そして彼らは、一緒に食事をしたり、失くしたという指輪を探してあげたりしながら、夜までの時間をエレンの家で過ごした・・・・・・。
 焼き魚を中心とした夕飯を終え、いよいよ時間になると、エレンは真剣な顔になりこちらを向いた。

「首謀者はガラードという人で、この人を捕らえれば、何とかなると思います。ただ、彼は自警団を率いているので気をつけてください」
「わかった」

 ギルは素直に首肯した。
 サラサールの話によると、遺跡への道は2通りとのことだ。

9聖域
10聖域

 ひとつはエレンの家から村の中央を突っ切って遺跡へ行く方法。この場合、自警団に見つかる恐れがあるが、短時間でいけるという。
 もうひとつは村の周りを迂回して遺跡に行く方法。当然時間はかかるが、自警団には見つかりにくい。
 ”金狼の牙”がそこまで話を聞いたときだった。

「あのぅ・・・、私もついて行きます!皆さんの力になりたいんです」
「エレン様!危険です!お止めください!」

 急に同行を申し出たエレンを、サラサールが慌てて押し留めようとするが、存外エレンは強情な性質だったらしく「もう決めた」と言ってきかない。
 挙句の果てには、「サラサールもついてきてくれない?」とけろっとした顔で言い出した。

「・・・・・・冒険の素人を連れ歩くのは危険ですが、万が一村で不測の事態があった場合、彼女たちの助勢は必要になるかもしれません」
「ってこたぁ、村を突っ切っていく方向か」

 エレンに根負けしたサラサールも同行を決めた後、アウロラとエディンはそう言ってルートを決定した。
 途中、エレンが予め忠告していたように、自警団がうろついているのに何度も遭遇したが、ジーニの【眠りの雲】を中心とした奇襲で、何事もなく切り抜けていく。

11聖域

 やがてジーニが「飽きたー。この呪文飽きたー」と文句を言い始めた頃、ようやく森にさしかった。
 向こうには遺跡らしき建物の影が見える。

「ここから先が、遺跡になります」

12聖域

 頷いた冒険者たちは小休憩を取ると、支援魔法や召喚魔法をかけられるだけかけて突入する事にした。

「主よ・・・・・・我が仲間に新たな力を与え、その身を護りたまえ・・・・・・!」
「おいで、スネグーロチカ。ベンヌ。ここから先、君たちに頑張ってもらうよ」

 そうして準備を整えた一行は、すり足で遺跡へと近づいていった。
 遠めにもかなりの数の自警団が、遺跡を詮索しているのが分かる。中央には、指示を出している大柄な男がいた。
 あれがガラードだろうと冒険者たちが思っていると、案の定、サラサールがそれを肯定した。

「あの中央にいる奴がガラードだ。アイツは自警団を率いるだけの力は持っている。気を抜くなよ」
「もとより」

 アレクはそっと≪黙示録の剣≫を握り締めると、懐から雪精トールを取り出した。

「なんですのん、アレクはん」
「お前は範囲魔法に巻き込まれないように、注意して俺達についてきてくれ」
「そういうことでっか。了解でっせ」
「な、なんだ今のは」

 驚いて目を瞠るサラサールと、おっとりとした表情でトールを見送るエレンに、アレクはふっと笑いかけた。

「俺の大事な相棒どのさ。雪の精霊だよ」
「それよりも。ガラードさんとやらのところまで距離がありますが、どう近づくんですか?」

 アウロラの疑問に、にやりと笑ったのはジーニであった。

「そりゃあもう、あれしかないでしょ。任せてよ」

2013/04/14 17:00 [edit]

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