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Sun.

聖域といわれた森 2  

 ぴちゃん。・・・・・・・・・ぴちゃん。
 水のはねる音に気づき、ミナスは宝石のような濃藍色の瞳を開いた。
 気が付くと、暗い部屋に閉じ込められている。

「・・・・・・ここ、どこ?」

 ミナスは必死に途切れている記憶を掘り起こす事に努めた。確か、エディンが幻影の向こうにあった村を発見し、彼の先導で進んでいったはずである。
 そして・・・・・・そこで、途轍もなく大きな狼に会ったことを、彼は思い出した。

5聖域

「この村に立ち入るとは・・・・・・」

 人の言葉ではない、直接脳へと訴えかけるような声であった。
 大きな狼相手に、”金狼の牙”たちともあろうものが手も足も出せず、魔力の波動のようなもので防御の暇すらなく打ち倒されたのである。
 完全に意識を失う寸前に、綺麗な女性の声を聞いたような気がしたのだが・・・・・・。
 とにかくこのままではいけないと、ミナスは軋む体を叱咤して他の仲間を起こした。

「・・・・・・牢屋か」

 ぽつりとアレクが呟いた。
 体調が万全であれば、なんとしても鉄格子を壊し脱獄を試みるところであったが、戦士である彼自身も、他の仲間たちも、重傷を負ったままである。
 自分たちをここに閉じ込めたものが害意を持っていたとしても、気絶している合間に殺せたはずだ。
 それをしなかったのであれば、今すぐ自分達が殺されるということもないだろう・・・・・・そういう分析をアウロラが行なったので、ひとまず休んで精気を取り戻そう、というギルの提案に全員が頷いた。

6聖域

 冒険者たちは体を休めるため、また眠りについた・・・。
 そして丸一日が経過した。

「・・・・・・!足音がするぜ。軽いから多分女か子供だと思うがね」
「誰かがこっちに向かってるってことか」

 ミナスを支えるようにしながらギルが言う。
 ほどなく、一人の女性が鉄格子の向こうに現れた。黒い髪を短くした、健康そうな若い女性である。武装はまったくしていない。
 冒険者たちが目を開けている様子に気づくと、彼女は青い目を細めてにっこり笑った。

「・・・良かった!もう気がついたんですね!お体はもう大丈夫ですか?」

 その台詞自体よりも、そこに込められた本当の労りが垣間見えたような気がして、ギルやアレクは少し肩の力を抜いた。
 アウロラがそれに応える。

「もう大丈夫です。失礼ですが、あなたは・・・?」
「っあ、すいません。私は巫女をしているエレンといいます。事情があって、あなた達を牢でかくまう事にしたんです」
「かくまう?」

 鸚鵡返しに訊ねたが、女性はそれに気づくことなく早口で説明した。

「でも、もう大丈夫です。いま鉄格子の鍵を外しますので、ちょっとまっていただけますか」

 しかし、エレンという女性が通ってきた通路からもう一つ急いでこちらに駆けてくる足音がある。こちらはエレンとは違って、鎧の重々しい金属音が付き纏っていた。
 やって来たのは、エレンと同年代か、それよりもやや上のように見受けられる長い髪の女であった。
 騎士のような格好をしており、その茶色い切れ長の瞳には厳しさが覗いている。

「エレン様!お待ちください!」

 掠れたようなハスキーな声でエレンの行動を押し留めると、彼女は眦を上げて”金狼の牙”を睨みつけてきた。

「サラサール?どうして止めるの?」
「この者たち、我らの味方と決まったわけではありません。それに、突然襲ってくるかもしれません!」

7聖域

「怪我人を牢屋に放り込んでおいて、随分と勝手な事言ってくれるわねえ」

 ジーニが低い声で唸るように言ったのに気づき、慌ててエディンが彼女を抑えた。

(しっ。ここから脱出するのがまず先決だろ?)
(ああいう頭固そうな馬鹿女見ると、黙ってられないのよ!)
(いいからここは大人しくしておけって。お前さんの実力なら、いつでもあの女を取り押さえれるだろうがよ。)

 大人組みの内緒話をよそに、エレンとサラサールのやり取りも続いていたようだ。お人よしらしいエレンを心配しているサラサールが、何か言い募っている。

「・・・わかったわ。じゃぁこうしましょう。彼らが私たちに危害を加えないなら鍵を開ける。これなら問題はないでしょう?」
「・・・そういうことなら」
「あ、え?それでいいの?」

 思わずギルがつっこんだが、彼女たちはそれに構う様子はなく、危害を加える気があるか否かだけを問われた。
 当然、そんなつもりはないと答えると、「じゃあ、いま開けますね」と言って、あっさりとエレンは鍵を開いた。

「お前達!怪しげな動きでもしたら、即、私が斬るからな!」

 実力的に絶対無理だろう、とは思いつつも”金狼の牙”は大人しく従った。
 牢屋の鍵を開けてくれたエレンは、ここで話すのもなんだから場所を移そうと言って、先に立って案内をしてくれる。
 彼女が一行を連れてきてくれたのは、質素な居間であった。

「まずは椅子にお掛けください」

 木製の粗末な椅子に腰をおろすと、彼らの足元に二匹の動物がやって来た。ミナスが嬉しそうに目を細める一方で、ジーニがなんともいえない顔になる。
 片方は耳の垂れた犬、もう一方は空色の瞳をした黒猫に見える。
 犬のほうはパトラッシュという名前だとエレンが説明した。お利口さんだが少々臆病だという。

「こっちの子は・・・・・・」
「その子犬は神精族の子供なんです。私が巫女なので一時的に預かっているんです。名前はヴァンっていうの」
「・・・・・・え。犬なの?」

 はてしない違和感に襲われて、ミナスは目を忙しなく瞬かせた。なんでも、魔物の幻影を創ったり、村の結界を一時的に解除したのもヴァンがやったことらしい。

「へえ・・・・・・すごい子なんだねえ」
「?? ワン!」

 ミナスはヴァンの小さな頭を優しく撫でた。
 大人たちはその様子を微笑ましく思いながらも、エレンとサラサールから事情を聞きだすのに余念がない。
 村で”金狼の牙”を攻撃してきた大きな狼は、なんと伝承にある守り神にして神精ファナス族の長だという。しかし、伝承とは違って「森の」ではなく、「この村の」守り神らしい。
 冒険者たちを侵入者だと思い込み攻撃してきたそうで、「悪気はないんです、許してあげて下さい」とエレンが困ったように言うのに逆らう事も出来ず、渋々彼らは頷いた。

「・・・まぁ、神精族の攻撃を受け、生きていられただけ感謝するんだな」

 ぼそっとサラサールが言葉を漏らす。
 ギルは首を傾げた。

「神精族?・・・さっきもこっちの子犬のことでその単語聞いたけど、それって・・・?」

 不可思議な力を秘めた、幻獣より神に近い属性の獣のことを指すらしい。それ以上の説明をサラサールはしようとしなかった。
 諦めて話題を変え、この村自体について訪ねてみるが・・・・・・とたんにエレンとサラサールの顔が曇る。
 思いつめたような双眸をこちらにひたと向け、エレンは切迫した声でこちらに話しかけた。

「あなた方には私たちに協力をしていただきたいのです。そのためにあなた方を、この村に招いたんです」

2013/04/14 17:00 [edit]

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