Sun.

聖域といわれた森 1  

「聖域と呼ばれてる森・・・・・・?」

 波打つ亜麻色の髪をジーニに弄ばれながら、少年はその貼り紙をじっくりと眺めた。
 親父さんが拭き終わった皿を置いて声をかける。

「お!その依頼に興味あるのか?」
「どんな依頼なの?」
「最近、遺跡発見で騒がしくしている真紅の都市を知っているだろ?」

 ミナスが背後のジーニを見上げると、はたして彼女は首を縦に振っていた。

「真紅の都市ルアーナでしょ。もちろん知ってるわよ」
「その近辺で≪聖域の森≫と言われているところがあるんだが・・・」

 その≪聖域の森≫は一切の魔物がいないと言われていて、平和で豊かな森だった。
 しかし、最近になってその森に魔物が現れたと噂が立ち、その調査の為の依頼が、≪狼の隠れ家≫に来たというわけである。

1聖域

「まぁ、おおかたは動物なんかを見間違えたんだろう。簡単な依頼だとおもうぞ。依頼料も500spだ」
「ちょっと安いわねー。でもま、ルアーナの近くっていうのなら、未発見の遺跡とかが森の中にあるかもしれないわね」
「ジーニ、興味あるの?」
「まあね。ギルバートに言って、この依頼引き受けてみない?」
「僕もダンジョン嫌いじゃないし、いいよ!」

 こうして、”金狼の牙”たちは真紅の都市にある森林保護協会へ向かったのであった。

 聖域の森。
 いつからそう呼ばれ始めたのかは誰も知らない。
 守り神が存在する森。魔物の姿もなく、緑豊かな動物たちの楽園・・・伝承によれば、≪聖域の森≫とはそれを指すと記されている。
 だがしかし、≪聖域の森≫で守り神を見たものはまだ誰もいない・・・。

 真紅の都市ルアーナに到着した一行は、さっそく森林保護協会の事務所へと足を運んだ。そばかすの浮いた顔の、少女めいた顔立ちをした受付の女性によって応接間に案内される。
 そのまま15分ほど経過しただろうか。ノックの後、くすんだ金髪の中年男性がドアを開けて入ってくる。

2聖域

「はじめまして、私が森林保護協会の会長を務めているクラントです」

 会長のクラントは仕事に忙殺されているのか、少しばかり憔悴しているようにも見えた。

「さて、依頼のことですが・・・貼り紙にあったように、聖域の森に現れた魔物を駆除していただきたいのです」
「どんな魔物ですか?」

 ギルのわくわくを押さえきれない声に気づいたクラントは、苦笑しながら説明を始めた。

「実は、まだ魔物の確認をとっていないのです。協会の者は、魔物を恐れて森には入らなく・・・。ですから今回の依頼は調査も含めてのことなのです」
「あら・・・・・・じゃ、本当に初めからの調査ってことね。他に分かっている事はないのかしら?」
「・・・ただ伝承によれば、あの森には守り神がいるとされています。もし森に魔物がいるとなれば、守り神をも凌ぐ強さでしょう」

 ジーニの質問に依頼主はそう答えてため息をついた。
 アウロラがやや俯くようにして「守り神を凌ぐ魔物、ですか・・・」と呟く。

「魔物がいるにせよ、いなかったにせよ、報酬は払います。ただし魔物がいた場合は、退治もお願いいたします」

3聖域

「報酬がこのままって事はないわよね?」

 クラントの台詞の一部に反応したジーニが黒い双眸を煌かせて彼に報酬の値上げを迫ったが、さすがやり手の会長と言うべきなのか、あっけなくそれは却下された。
 森林保護協会は国の援助を受けて運営しているのだが、その予算はあまり大きなものではないらしい。
 一行は森へ入る前に事務所での登録を済ませ、その場を後にした。
 エディンが口を開く。

「おい、あそこの店にちょっと寄っていこうぜ」
「ん?冒険者の店に?」

 首を傾げたリーダーに、エディンは何か≪聖域の森≫に関しての情報があるかもしれないだろ、と言って先頭に立った。
 扉を開くと、そこにはカウンターでグラスを磨く主人のほかに、三人の冒険者達がたむろしている。
 しかし芳しい情報はまったく得られず、失意の”金狼の牙”たちは森へ真っ直ぐ向かうことにした。

「・・・・・・魔物がいるとは思えないけどなあ」

 ≪聖域の森≫までの道程はさして困難なものではなく、その日の昼過ぎには問題の場所へと着いていた。
 とても緑豊かな森の様子を見て、ミナスが首を傾げる。
 青空が眩しい。アレクは目を細めて、辺りを探っているエディンが戻ってくるのを待った。

「・・・特に魔物がいるような痕跡はない。どっから行っても一緒だと思うが、リーダーどうする?」
「うーん・・・・・・。じゃあ西へ。太陽を追いかけて行こう」

 こうしてしばらく森をさ迷った≪金狼の牙≫だったが、たまさか狼や蛇などが茂みから飛び出すほかは、目ぼしいものも見当たらない。
 これは魔物とやらもただの噂だけかな、とアレクが心中でつぶやいた時、ふとエディンがある場所で足を止めた。

「・・・この周辺は妙な感じがするな」

 さっそく調べてみようと一歩踏み出すと、その途端に茂みから何かが飛び出してくる。
 どうせまた狼か蛇だろうと思ったギルが、ため息をつきつつ≪護光の戦斧≫を構えると・・・なんと、そこに立っていたのはミノタウロスであった。
 さすがに慌てた声をエディンが上げる。

「え!?嘘だろオイ!?」
「・・・・・・っ!エディン、構えろ!ミナス、アウロラ、頼む!」

 一行は今さらミノタウロスに遅れは取るまいと、連携の効いた攻撃を繰り出したのだが・・・。

「ちょっと、まったく効いてないじゃないの!?」
「これ、は・・・・・・よく見てください、幻影ですよ」

4聖域

 アウロラが魔物の正体に気づくと同時に、その姿は泡のように消えていった・・・。

「どういうことなの、一体・・・・・・」
「・・・それを知りたきゃ、もう一回調べろってこったな」

 そう言って盗賊が前に進むと、魔物が消えたその向こうに村らしきものが見える。
 ”金狼の牙”は確かめるように奥へと進んだ。

2013/04/14 16:57 [edit]

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