Thu.

satan 12  

 教会の表側では、すでに治安局員と暴徒が少数で小競り合いを行なっているが、崩れ落ちずに残った瓦礫が遮り、表と裏の様子はお互いに分からない。

「魔物は・・・・・・いないようですね」

 きょろきょろと辺りを見回すラングに、アレクはここに残れと指示をした。
 自分も当然行くものだと思っていたラングは、気色ばんで否を唱えたが、魔物が何匹帰ってくるかをバイゼルに知らせる役目が必要なのだと彼は説明した。

「重要な情報だ。それに今度こそお前が足手まといになる」

 分かってるだろうと言われると、それ以上返す言葉は新米たる彼には残っていない。確かに、最初の後退の時でさえ彼はチームの足を引っ張っていたのである。
 渋々頷いたラングは、それでもアレクに縋るように言った。

「で、でも必ず戻ってきてください!!約束して下さい!!」
「当たり前だ」

 彼らは教会の地下へと進んだ。
 隠し階段の辺りまでたどり着くと、再びエディンは辺りを素早く伺ったが、誰もいないと結果を告げる。
 そしてエディンは、アレクを助手に階段のある部屋のガラクタをバリケード代わりに積み上げた。これで挟撃を防ぐつもりなのだ。

「もう少し灯を近づけてくれ」
「こうか?」
「ああ、悪ぃな・・・・・・ん?」

 作業の途中、灯りで照らされている範囲の端に見覚えのある影が映り、エディンは手を止める。

「ラング!?」

 何をやっていると言い咎めるアレクに構わず、ラングは自分が見たものを報告した。

「ま、魔物です!!魔物がいっぱい戻ってきました!!」
「それでどうしてこちらに来るんだ、お前は!?」
「い、いっぱいいたので・・・・・・知らせないとと思って・・・」

 珍しく動揺して後輩を叱り飛ばすアレクの背中を叩いて落ち着かせると、ギルは「何体だ?」と問うた。

「10体です!すぐそこまで来てます!」
「・・・・・・このバリケードは10体でも持つの?」

 ジーニが胡乱げな目になってガラクタの山を見つめる。エディンは小さく唸った。

「ここで応戦すれば少しは持つが・・・・・・」
「それじゃ意味が――」

 意味がないだろう、とジーニが言いかけた時。
 腹に響くような咆哮を上げて、魔物が教会地下へと侵入してきた。即座にこちらに気づいたらしい。
 アレクは持っていたフォーチュン=ベル製のランタンをラングに押し付けると、すらりと愛剣を抜き放った。

「奥に引くか!?」
「駄目だ!10体ではこのバリケードは持たない!挟み撃ちにあう!!」

 リーダーの言葉にエディンが返す。

42satan

「クソッ!!ここでやるしかないかっ!!」

 ギルはさっさと斧を構えた。最初は一匹しか近づいて来れなかったものの、ゾクゾクと魔物が地下に降りてくる。
 すでに地下は埋め尽くされてしまった。
 多すぎると舌打ちしたジーニは、ラングに向かって叫んだ。

「ラング!!そこのバリケードに火と油を投げ込んで!!」

43satan

「えぇ!?ちっ、地下ですよっ!?本気ですか!?」
「いいからやんなさい!アンタ、あたしに逆らうの!?」
「は、はいっ!!」

 金属製の手甲に包まれた腕が弧を描き、ランタン用の油と、火種を移したガラクタの木片がバリケードに投げ込まれる。
 油は若干それたが、それでも勢いよく火が燃え始めた。

「よしっ!!行くわよっ!!」

 ジーニがバリケードを杖で薙ぎ倒すと、魔物と冒険者の間に燃えさかるバリケードが崩れ落ち、炎の障壁が出来る。
 退け、という合図によって彼らは階段を駆け下り、子供の遺体を発見した小部屋まで移動した。
 まだ体力の少ないラングは、全力疾走により吐き気を催している。
 えづく後輩の背中を撫でつつ、アレクが涼しい顔で訊ねた。

「どれくらい持つ?」
「分からないわ・・・・・・。30分以上は燃えると思うけど、炎の勢いが弱まれば突っ込んでくるかもしれない」
「・・・・・・なら、躊躇してる暇はねえな」

 エディンは一行の先頭に立った。

「先に進むぞ。・・・ラング、行けるか?」
「は、はい」

 健気にもラングはすっくと立ち上がった。
 支援魔法をかけられるだけかけ、王の待つであろう広間へと向かう。
 ・・・・・・ふと、先を歩んでいたエディンの足が止まった。

(皆、止まれ。・・・・・・・・・居やがるぜ)

 大広間の前で、2体の魔物がうろついている。こちらにはまだ気づいていない。
 一行は奇襲を選択した。

(・・・・・・行くぞ!!)

 ・・・・・・準備満タンで挑んだ彼らが、2体の魔物に負けるはずも無い。あっという間に2つの巨体が地を這った。
 その死体を見つめながら、アレクが長く息を吐く。

「ヴオオオォォォ・・・・・・ン!!!」
「!!」

 後方より魔物の咆哮が聞こえる。もうあのバリケードを突破したものらしい。彼らは前方へと足を向けた。
 ところが、前にも無傷の魔物たちが集まり始めたではないか!!

「くっ・・・・・・後ろにも・・・・・・」

 ギルは後方を確認して呻いた。前方には10体程度、後方には見える範囲でも5体はいる。完全な挟み撃ちだ。

「愚痴っても仕方ないが・・・・・・ジーニ?」
「分かってるわよ。今考えてる」

 リーダーからの要請前に、ジーニの頭はフル回転していた。

「・・・・・・奥の広間に突入しましょ。真ん中の奴だけ倒して一気に行くのよ」
「突入してどうすんだよ。勝算はあるのか?」
「なきゃ言うわけ無いでしょ。あたしに賭けなさい」
「うわあ。すごい不安」

 傍らでそれを聞いていたミナスは、口ではそう言いながら顔が笑っていた。
 ギルもそれに勇気付けられて笑う。

「・・・・・・行くぞ!仕掛けられる前に仕掛ける!」

2013/04/11 18:27 [edit]

category: satan

tb: --   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top