Thu.

satan 4  

 史跡局の調査の変化は、3日目に現れた。

「!!おい!!」

 エディンの指摘に皆が注目すると、今までとは違い、本ではなく真っ暗な小さな穴が見えている。
 本をどかしてもう少し穴を広げると、降りる階段の続く道が拓けた。決して広くはないが、人が2人ほど並んで通れる。
 ラングが小さな歓声を上げた。

13satan

「やったっ・・・・・・」
「よし。ようやく先に進めるな」

 ギルが小さく笑うと、仲間たちを先へと促した。
 数十メートル下ったところにある突き当たりに、扉を発見する。

「・・・・・・さぁどうする、ラング?動揺は死を招く、落ち着けよ」

 ギルが再び主導権を彼に渡した。
 この先に魔王がいるのかも知れないと緊張していたラングであったが、ギルの台詞に数回深呼吸をして冷静さを取り戻すと、

「・・・・・・無いとは思いますが、まずは罠の確認をしましょう」

と言って、エディンに調査を依頼した。
 承諾した盗賊が繊細な指の動きで扉やドアノブ、扉前の床などを調べていくが、やがて「・・・大丈夫だ。何も無い」と言って報告する。
 それを聞いたラングは唾をひとつ飲み込むと、やや上ずった声で言った。

「じゃあ、態勢を整えて、突入しましょう」

 扉を開ける役をミーナに任せ、その瞬間に冒険者達が突入する事となった。
 ぴりりとした空気が彼らを包み込む。
 前衛で戦うものは得物を構え、魔法を使うものたちは皆、杖や指輪に意識を集中して魔力を高め始めた。
 そしてラングの合図で呼吸を合わせ、部屋に飛び込んだ一行だったが・・・・・・。

「どこだ!?魔王!!」

 舞台上の勇者もかくやというタイミングと見得で入室したラングだったが、そこにあるのはひたすら古い本棚が2つだけであった。
 無言のまま気配を探っていたギルだったが、構えていた斧をゆっくりと下ろす。

「・・・・・・特に危険は無さそうだな」
「・・・・・・なーんだ。拍子抜けですね」
「油断は禁物だ。本棚を確認してみよう」

 一応は先輩格としてそうラングに注意したギルであったが、彼も少々肩透かしを食らったような気分であった。
 その後、部屋全体を確認したが、特に気になる点は見当たらない。単なる本置き場のようである。
 (議長が喜びそうな結果ね・・・・・・)と思いながら、ふっと肩をすくめてジーニが向き直る。

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「ここはどうやら外れだったようね、ミーナ」
「・・・・・・その様ですね・・・・・・」

 案内役治安局員も張っていた気が抜けたようで、なんとも頼りなげな声を発した。
 史跡局の調査は、念の為に今日一杯を使って通ってきた通路を含め確認してみたものの得るものも無く、夜の訪れと共に帰宿した。
 その日の夜は、ミーナを交えて一杯だけというささやかな酒宴を開いた。なんといっても、片方の調査は済んだのだから。
 まずはラングが音頭を取る。

「じゃあ・・・・・・・・・乾杯!」
「・・・・・・だから、何か一言付け加えろよ・・・・・・昨日も言っただろ?」

 呆れたようにアレクが言うと、ラングは「そ、そう言われても・・・・・・何も思い浮かばないですし」と困惑したように頭を掻いた。
 そんなラングの様子を見て、にやりと嫌な笑みを浮かべたジーニが、

「ミーナのために!とかでもいいのよ」

とからかい出す。
 たちまちラングが赤面して抗議を始めるのに、ミーナはやや朱の入った顔でクスリと笑った。
 アレクが話を振ってみると、ミーナは生まれも育ちもザンダンカルで、この街から離れた事がないという。
 リューンのような大都会に憧れる気持ちはあるようで、どんなところなのかとラングや他の者たちに訊いてる。
 そんな中、アウロラは40年前にあったという革命について、宿の亭主にさり気なく尋ねてみた。

「当時、ここザンダンカルは、有力貴族のカウフマン家が支配していてな・・・・・・とにかく、やりたい放題だった」

 重税による貧困層の拡大、賄賂が招いた治安態勢の腐敗、貴族のみが儲かる制度の構築・・・・・・。
 市民たちは長い間、そんな腐りきった政治体系に苦しんでいたのだが・・・とうとう耐え切れず、40年前に革命を起こしたのだという。
 通常であれば、何の後ろ盾も持たない市民が革命を起こしたところで成功するはずもないのだが、ザンダンカル市民たちは幸運だった。
 彼らの後ろ盾には、カウフマンの圧政を苦々しく思っていた聖北教会がついたのである。
 その甲斐あってか無血革命が成功し、カウフマンは政治の表舞台から失脚を余儀なくされた。
 以降、ザンダンカルでは市民による議会制度が導入されている。

15satan

「ただし・・・・・・ここ2~3年の話だが、カウフマンの息子が軍の騎士団で台頭してきた。ようは金で爵位を買っているんだが」

 恐らく、その息子とやらが調査2日目に邂逅したカウフマンなのだろう。

「まあ。呆れた話ですね」
「うむ、失脚した父親の死がきっかけになったのかもしれん。政界に返り咲く事を夢見ているんだろう・・・・・・」

 今はまだまだ小さい影響力だが、何かをきっかけにクーデターを起こす力を得るかもしれない・・・と語る宿の亭主の目は、今の生活を手に入れてくれた者たちへの畏敬と、将来起こり得るかもしれない凶兆に揺れていた・・・。
 翌日の朝――。
 治安局からの依頼も4日目に入った。ラングが今までの史跡局での調査結果をバイゼルに報告し終わると、彼は厳つい顔をしかめる事もなく首肯した。

「そうか」
「これで、史跡局の調査は終了と言う事になりますが・・・・・・次の調査は・・・・・・・・・どうしますか?」
「その事なんだが・・・・・・」

 バイゼルは語尾を濁すようにしばらく言いづらそうにしていたが、ため息を一つつくと、教会の調査権をいよいよカウフマンに取られてしまったと告げた。

「悪ぃな・・・・・・」
「・・・・・・・・・別に俺達に謝る事じゃない」

16satan

 ギルはそう言ってバイゼルの腕を軽く叩く。
 そこまでは昨日の段階で覚悟していたことだったが、なんとバイゼルは他に頼みたい事があると言い出した。

「・・・・・・・・・別な仕事?」

 ミナスが小首を傾げてバイゼルに問いかけると、彼は子供の捜索についての依頼である旨を説明し始めた。
 昨日の朝から、両親が寝ている間に姿を消した子供がおり、今でもその行方は知れないままなのだと言う。
 現段階において、目撃証言もなければ有力な情報もなく、人手が足りないためにろくに捜索すらできていないらしい。

(失踪した子供の捜索・・・・・・こいつはちょっと厄介そうだな・・・)

と、ギルは思った。

2013/04/11 18:03 [edit]

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