Tue.
月光に踊る長靴 6 
「そろそろ陽が落ちるな」
と言ったエディンの言葉を裏付けるかのように、あっという間に森が暗くなっていく。
そんな中現れたキジトラ―――”ケット・シー”のアイルーロスに、一行は改めて自己紹介を済ませ、ダークエルフのことについて注意を促そうとした。
しかし、いかな”ケット・シー”とは言え、大勢の前での結婚に浮き足立っているらしく、冒険者たちを妖精の広場へと案内し終わって、すぐ姿を眩ませてしまった。
(状況くらい聞けよな)
と思ったアレクの後ろから、灰色の毛並みのガートという”ケット・シー”が現れた。
「おっ、来たね」
「こんばんは。お邪魔するわよ」
様々な小動物―――に見えるが、ガートに言わせるとみな妖精らしい。小さな広場を囲むように集まってきている。
「そろそろだな」
「あ、ほらあそこ」
尻尾まで緊張させたトラ猫の”ケット・シー”の呟きに、ギルが広場の奥の闇から現れた姿を指差した。アイルーロスとコーシカの入場である。
サテュロスの少年が角笛を鳴らし、満月の祭が始まった。
幻想的な光景だった。
長靴を履いた猫が踊り、違う妖精が蝶のような紋様の羽根を蠱惑的に羽ばたかせる。
踊りの伴奏を担うのは、一見不気味な一本足。器用にリズムを取っている。
青白く浮かび上がる森の中、皆一様に楽しそうだ。
「ねえ。さっきのダークエルフ・・・・・・」
「ああ、そうだな。俺たちだけでも警戒しておこうか」
ミナスがアレクの袖を引くと、そう答えが返ってきた。
変わらぬ仲間の反応に、ほっとしたミナスが精霊たちの力の動きを感知してみた。もし、ダークエルフが不自然な精霊の働きをさせていれば、これですぐわかるはずだ。
ふと、ミナスは双子のように立ち並んだ木の一角に注目した。そこから妖精たちは出入りしてるようだ。
(ねえ、あれ―――。)
(ああ。あれが妖精界の門か・・・・・・。)
アレクが頷くと同時、ふ、と楽の音が止まった。
輪の中心―――焚き火はないが、皆が円を描いているその中に、コーシカを伴ったアイルーロスがすっくと後脚で立っていた。
「さて、お集まりのみなさん。さぞ人間をからかい、遊び、あるいは親交を深めていることと思うけど」
アイルーロスは、照れたように左の足を掻いてから言った。
「人間にはこんな習性があるのを知っているかい?それは『結婚』っていうんだ」
アイルーロスの話を聞いているものも、聞いていないものも、茶々を入れるものもいるが、構わず彼は話を続ける。
「僕は―――」
コーシカがつ、と彼を見上げ、気持ち良さそうににゃあと鳴いた。
「僕は今夜、人間のその素敵な風習に倣おうと思う。―――僕は彼女が大好きだ。人間的に言うなら、愛してる」
そう愛を宣言したアイルーロスは、コーシカとの結婚を口に出そうとして―――。
「ビンゴっ!」
(さっきの・・・・・・!うかつだった、ずっと【精霊感知】を続けていればもっと早く気づいたのに―――!)
悔しそうにこちらをねめつけるミナスをにやりと見やり、ダークエルフは言った。
「やはり居やがったか、人間ども」
「現れたか。アイルーロス、こいつはさっき俺たちに揺さぶりかけてきたんだ」
「何故それを言わなかった―――」
「言う前に、ここに駆け出したのでね」
アレクは苦笑しつつ、抜刀してアイルーロスに答えた。
親友の構えを横に、ギルが己を奮い立たせるかのように笑って言った。
「友人を守るのが、今日の務め―――。用意はいいな、みんな!?」
「おう!!!」
ギルの掛け声に、全員が応じる。
たちまち、広場は剣戟の音に満ちた。
と言ったエディンの言葉を裏付けるかのように、あっという間に森が暗くなっていく。
そんな中現れたキジトラ―――”ケット・シー”のアイルーロスに、一行は改めて自己紹介を済ませ、ダークエルフのことについて注意を促そうとした。
しかし、いかな”ケット・シー”とは言え、大勢の前での結婚に浮き足立っているらしく、冒険者たちを妖精の広場へと案内し終わって、すぐ姿を眩ませてしまった。
(状況くらい聞けよな)
と思ったアレクの後ろから、灰色の毛並みのガートという”ケット・シー”が現れた。
「おっ、来たね」
「こんばんは。お邪魔するわよ」
様々な小動物―――に見えるが、ガートに言わせるとみな妖精らしい。小さな広場を囲むように集まってきている。
「そろそろだな」
「あ、ほらあそこ」
尻尾まで緊張させたトラ猫の”ケット・シー”の呟きに、ギルが広場の奥の闇から現れた姿を指差した。アイルーロスとコーシカの入場である。
サテュロスの少年が角笛を鳴らし、満月の祭が始まった。
幻想的な光景だった。
長靴を履いた猫が踊り、違う妖精が蝶のような紋様の羽根を蠱惑的に羽ばたかせる。
踊りの伴奏を担うのは、一見不気味な一本足。器用にリズムを取っている。
青白く浮かび上がる森の中、皆一様に楽しそうだ。
「ねえ。さっきのダークエルフ・・・・・・」
「ああ、そうだな。俺たちだけでも警戒しておこうか」
ミナスがアレクの袖を引くと、そう答えが返ってきた。
変わらぬ仲間の反応に、ほっとしたミナスが精霊たちの力の動きを感知してみた。もし、ダークエルフが不自然な精霊の働きをさせていれば、これですぐわかるはずだ。
ふと、ミナスは双子のように立ち並んだ木の一角に注目した。そこから妖精たちは出入りしてるようだ。
(ねえ、あれ―――。)
(ああ。あれが妖精界の門か・・・・・・。)
アレクが頷くと同時、ふ、と楽の音が止まった。
輪の中心―――焚き火はないが、皆が円を描いているその中に、コーシカを伴ったアイルーロスがすっくと後脚で立っていた。
「さて、お集まりのみなさん。さぞ人間をからかい、遊び、あるいは親交を深めていることと思うけど」
アイルーロスは、照れたように左の足を掻いてから言った。
「人間にはこんな習性があるのを知っているかい?それは『結婚』っていうんだ」
アイルーロスの話を聞いているものも、聞いていないものも、茶々を入れるものもいるが、構わず彼は話を続ける。
「僕は―――」
コーシカがつ、と彼を見上げ、気持ち良さそうににゃあと鳴いた。
「僕は今夜、人間のその素敵な風習に倣おうと思う。―――僕は彼女が大好きだ。人間的に言うなら、愛してる」
そう愛を宣言したアイルーロスは、コーシカとの結婚を口に出そうとして―――。
「ビンゴっ!」
(さっきの・・・・・・!うかつだった、ずっと【精霊感知】を続けていればもっと早く気づいたのに―――!)
悔しそうにこちらをねめつけるミナスをにやりと見やり、ダークエルフは言った。
「やはり居やがったか、人間ども」
「現れたか。アイルーロス、こいつはさっき俺たちに揺さぶりかけてきたんだ」
「何故それを言わなかった―――」
「言う前に、ここに駆け出したのでね」
アレクは苦笑しつつ、抜刀してアイルーロスに答えた。
親友の構えを横に、ギルが己を奮い立たせるかのように笑って言った。
「友人を守るのが、今日の務め―――。用意はいいな、みんな!?」
「おう!!!」
ギルの掛け声に、全員が応じる。
たちまち、広場は剣戟の音に満ちた。
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