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コデルモリアの英雄 1  

 山麓に位置する人口30名ほどの村があり、そこでは農業を生業としていた。
 ここ50年ほどは大きな問題もなく村人たちは質素に暮らしていたのだが、2年前に状況は一転した。  
 近隣の国同士が戦争を始めたのに伴い、その国境付近にあるこの村の治安が悪化した。
 戦争が長期化するにしたがって、ゲリラ兵が山賊化し、村の近くの山に居座るようになったのだ。 

 冒険者たち――”金狼の牙”はそんなことも知らず、魔女アニエスの討伐後に魔光都市ルーンディアで少々道草をした際、この農村への仕事にありついた。

ココア護衛

 以前、町商人のココア嬢が村の人間から野菜を大量に仕入れた時の未払い金があるとかで、そのお金を届ける役割を頼まれたのだ。
 通常であれば、そんな依頼を彼らほどの実力者が受けることはあり得ないに近いのだが、その商人の振舞ってくれた酒の美味さに、思わず「YES」と答えてしまったのだ。
 事実、ギルは≪フォレスアス≫という銘柄の酒の味を、村長の話をほぼ夢現に聞きながら反芻していた。

「――領収証を発行しましょう。これで・・・このお金さえあればコデルモリアの英雄たちに給料を支払うことができるというもの」
「コデルモリアの英雄?」

 ぼんやりとギルは聞きとがめた。 
 コデルモリアの英雄の話は、冒険者たちも多少は耳にしたことがあった。
 コデルモリアの英雄――それは、七つ頭の竜を倒したことで知られる豪傑たちだ。 
 常に三人で行動し、各地でどことなく現れては住民たちを困らせている怪物たちを颯爽と倒し、名も名乗らずに去っていくという。
 講談師が作った創作だという者もあれば、この目で見たという者もいる。
 真偽の程は定かではないのだが、自分たち以外の竜殺しの有名人がこの村に来ているというのが信じられなくて、エディンは何かあったのかと訊ねた。

「実は・・・・・・」

 それまで寡黙だった村長だったが、話題が変わると雄弁に語りだした。

 村が山賊の言いなりになっていることや、食料をほとんど持っていかれたこと。

コデルモリア1

 そして、そんな村が危機のところにコデルモリアの英雄と名乗る三人組が現れたこと。
 彼らに村の窮状を話すと山賊退治を2500spで請け負ったこと。

「わだしは英雄様が来たと聞いて歓喜しただ。竜殺しの英雄様にかかれば山賊など目じゃねぇ」

 実は村長の前にいる彼ら”金狼の牙”も、かつてランプトン領にて原始的なまでの生命力を持つ蟲竜・ワイアームを退治した功績があるのだが、流石に局地的過ぎたのか、この農村にまで彼らの噂は届いていないようだ。

「・・・・・・」

 エディンは村長の話に若干の違和感を覚えたが、口に出すことを控えた。
 コデルモリアの英雄と言えば、無報酬で怪物退治をする風来坊だ。
 お金を貰って山賊退治だなんて俗なエピソードは全く聞いた事がなかった。
 ほっとした表情で話をしていた村長が、我に帰って慌て始める。

「おっと、ついつい長話してしまっただ。そろそろ夕飯時だ」
「ああ、もうそんな時刻か」

 アレクは窓の外から見える黄昏を眺めつつ応じた。

「ちょっと申し訳ないが、食事に英雄殿を呼んできてくれんぞな?村のどこかに居ると思うだに」

 遠慮がちな村長の申し出に、アウロラは微笑んで首肯した。

「かまいませんよ。お引き受けいたしましょう」

2013/03/29 05:40 [edit]

category: コデルモリアの英雄

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