Mon.

魔女の館 3  

「これでいいと思うんだけど・・・」

 鍵の掛かっていた扉の先、土のような黄土色の玉に触れたジーニはそっと感覚を研ぎ澄ませた。
 ヒュイィィィ・・・・・・という何か魔法的な反応を示す音が部屋に響き、

「な、なんだ?」

魔女の館7

とギルが辺りを見回した。

「さしずめ【魔法の鍵】を大掛かりにしたもの、といったところかしら」

 ジーニはこれで先に進める筈だと言う。

「いよいよ、魔女とご対面ということか・・・」
「さっき、魔力が集中していた箇所に戻りましょ。あそこに変化があるでしょうから」

 急いで一同が最初のT字路に戻ると、彼女の予見したとおり、今まで無かったはずの扉がそこに現れていた。

魔女の館8

「こんな所に扉が・・・」
「今まで遮蔽魔術で扉が隠されていたようね。それがあの仕掛けを解いたから現れたのよ」

 ミナスが呟くのへ、ジーニが解説を行った。

「罠はないし鍵もかかっていない・・・。この先すぐに何か潜んでるな」
「では補助魔法をここでかけていきましょう。ミナス、いいですか?」
「うん!」

 アウロラとミナスがそれぞれ支援のための魔法をかける。
 その間に、アレクが≪天翼の短剣≫で擬似的な魔法の翼を生やした。

「・・・あ、そうだ。相手、魔法使いなんだよな?」
「リーダー、話聞いてただろ。何を今更」
「いやいやいや、それが大事なんだって!俺の鎧!」
「あ」

 そう、ギルの鎧は完全魔法防御の結界を作る鎧なのである。
 味方からの回復魔法も意味がなくなってしまう諸刃の剣ではあるが、雪精トールの癒しはその状態でも通用することは判明しているので、ギルは仲間たちの同意を得て≪冷界の魔鎧≫の能力を解放した。

「・・・・・・これでよしっ。どこからでもこい!」
「・・・じゃ、開けるぜ」

 距離的には館の中央あたりだろうか。
 冒険者達が扉をくぐると、目の前には広大な空間が広がっていた。
 その広大な部屋を見渡すと、一人の黒髪の女性がたたずんでいることに気がつく。
 整った顔立ち、華奢な身体、優雅な立ち居振る舞いとは裏腹に恐ろしく人間離れしたオーラが感じられる女性であった。

「・・・・・・いたな」

 彼女は、武装した突然の来訪者の呟きに臆する事もなく声をかけてきた。

魔女の館9

「あら、お客様かしら。一般の方は入れないようにしてあったはずだけど・・・・・・」
「あいにくと、俺らは一般からは遠いらしくてね」

 ギルの返答に、女性は酷薄そうな唇を歪ませて嘲笑した。

「まぁいいわ。パーティへようこそ。私は貴方たちを歓迎するわ」

 そして優雅に胸をそらし、甘い蕩けるような声音で話した。

「私はこの館の主アニエス。よろしければ皆さんのお名前も教えてくださるかしら」
「その手は食わねぇよ、姐さん。悪ぃがな」

 エディンが鼻で笑って一蹴する。彼はちゃんと、事前に館に入る前の注意事項を覚えていた。
 いわく――もし魔女に名前を聞かれても絶対に教えてはダメだ。魔女に名前を知られたら恐ろしい目に遭う――と。

「あら、匿名希望ですこと?まぁ構いませんが――って、あら?もうやる気満々なわけ?」
「御託は結構です」
「うふふ、せっかちさんなのね。それじゃあ早速始めましょうか」

 魔女はほうきに乗ると天井近くまで軽やかに舞い上がった。
 そしてほっそりとした腕を振るう。

「まずは、このコでお相手するわ」

 床から、何やら途轍もなく重いものを引きずるような音がする。
 前衛たちが身構えたその瞬間、彼らの前に身の丈10m以上あろうかという鋼のゴーレムが姿を現した。

「さァ、パーティを始めましょう!ここ100年ばかり、お客さんがめっきり減って少々退屈していたのよ」

 魔女は言う。だから退屈させないように、遊び相手を次々に出してあげようと。

「結構よ、間に合ってるわ!」

 ジーニはそう言うと、≪エメラダ≫を掲げて鋼鉄のゴーレムの足を止めた。
 途端にアニエスの顔が歪む。

「生意気な!地獄に燃え盛る業火よ!」

 魔女のたおやかな指先から、ミナスの魔法の倍はあろうかという巨大な火の塊が迸る。
 ギル以外の”金狼の牙”たちは、たちまち軽い火傷を負った。

「っつう・・・・・・。アウロラの防護様様だな。やばかったぜ、これは」
「早めに片をつけるに越したことはないな」

 エディンのぼやきに、アレクが頷いて言った。

「まずはあの魔女をどうにかしないとな・・・」

2013/03/25 20:32 [edit]

category: 魔女の館

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