Mon.

魔女の館 2  

 灰色の石で造られた館は禍々しい妖気を放っており、人を寄せ付けない異様な雰囲気が漂っている。
 勘の良い者ならば、この先に危険な相手が潜んでいることは容易に理解できるであろう。
 アレクがその入口を眉をしかめて睨みつける。
 独特の歩調から盗賊の動きに変わったエディンが、まずドアを調べた。

「鍵は開いてるぜ。すぐ入れる・・・罠はねえよ」
「行こう」

 エディンとギルを戦闘に、アレク・ジーニ・ミナス・アウロラの順で開いた扉を通り抜けていく。
 館は広く、外観よりはいささか淡い色合いの灰色の石による柱が整然と立ち並んでいた。
 入って少し進むと、すぐT字路に行き当たる。

「どっちにいったもんかねぇ。気になる跡とかは別にねえんだが」
「右手の法則でも使うか。・・・・・・魔法による永久回廊とかでなければいいが」

 アレクの言葉に、ジーニはじっと辺りを見まわし魔力を集中した。
 その厳しい顔つきに、思わずギルが声をかける。

「・・・・・・」
「どうした、ジーニ?」
「しっ。・・・ちょっと【魔力感知】を使ってみるわ」

 そう言うと、彼女は≪蒼石の指輪≫をベルトポーチから取り出し、合言葉を唱えた。
 ジーニの紫に染まった視界の中で、ある一点にオーラが集中している事が分かる。

魔女の館4

「4箇所からここへ魔力が流れ込んでいるわ。ここに仕掛けの元があるのだろうか・・・・・・?」
「・・・それは、4箇所にある仕掛けを解くことで、その元とやらが解除されるということでしょうか?」
「多分ね。面白い、解いてやろうじゃないの」

 ジーニは軽く腕まくりをした。
 その横でずっと奥のほうを睨むようにしていたミナスが、エディンのマントを引っ張る。

「どうした?」
「・・・・・・生き物の気配とは違うんだけど。何か嫌な予感がするんだ。戦闘の用意をした方がいいかもしれない」

 ミナスの精霊術師としての知覚は、かなり鋭敏である。もしそれに館の何かが反応しているのだとしたら、確かに前準備をした方がベターであろう。
 エディンはアウロラに目配せした。ミナスもそれに気づき、【蛙の迷彩】の呪文を唱え始める。

「神よ、我が仲間たちに十全なる援護と、防護のお力を与えたまえ・・・」
「周りに溶け込む蛙の皮膚よ、我らが結界となって覆え!」

 魔法による支援を纏った一行は、アレクの提案通りに右回りに館を捜索することにした。
 途中、また枝分かれした通路に入り込む。
 すると、霞の人型をした「何か」が天井から染み出してきた。通路奥からは、魔法人形らしい空ろな目のゴーレムが襲い掛からんとしている。

「やれやれ。ミナスの勘は大当たりだな」
「暢気に言っている場合ではないですよ、アレク」
「実体の無いモンスターに普通の攻撃は無意味よ。気をつけて!」

 ジーニのアドバイスに短く首肯すると、アレクは魔法人形の一つに駆け寄っていつの間にか焔に包まれた刀身を振り下ろした。【炎の鞘】の技である。
 霞人形はそれにやや怯む様子を見せたが、気を取り直しでもしたのか、杖を構えて詠唱に集中し始めたミナスに指を突き出す。
 途端に、ぞわりと小さなエルフの身体が振るえ、額から脂汗を滲ませ始めた。

「・・・やばい、今の呪文は【病魔の呪詛】だわ!アウロラ、あの子お願い!」
「分かりました!」
「まったく・・・人形の癖に生意気なのよ!」

 ジーニがかざした≪エメラダ≫に気を取られ、魔法人形のうち3体の動きが止まる。
 その隙に、ギルが渾身の力を込めた一撃を繰り出した。たちまち、1体が崩れる。

「僕の・・・・・・ことは、心配、しないでっ」

 ミナスは気丈にも、身体の奥底から満ち始めた呪詛の悪寒に耐えつつ、イフリートを呼び出した。

「お前の息吹をここに!業火の精霊よ!」

 小さな手の平から信じがたいほどの炎が渦巻き、たちまち敵全体を覆った。
 ・・・・・・呪文が終わった後、残っていたのは魔法人形一体のみである。

魔女の館5

 人形は指先から炎の弾丸を打ち出し、エディンの左腿に少し火傷を与えたものの抵抗はそこまで、後はエディンが最小の動きで突き出したレイピアによって破壊されたのであった。
 戦闘を終えた一同はミナスの呪詛を治すと、通路の突き当たりにあった部屋の前まで移動してきた。

「魔法の鍵が掛かっている。魔法を解除しないと開かない」
「はいはい、あたしの出番ってわけね」

 ジーニは進み出ると、≪閂の薬瓶≫をベルトポーチから取り出し、目の前の扉へと振り撒いた。

「・・・よし、これでいいわよ」
「お疲れさん。じゃあ開けるぞ」

 そうして入室した”金狼の牙”たちを出迎えたのは・・・。

「宝玉?なのかな?」
「みたいですね・・・」

 渦巻く風のような緑色の玉であった。

魔女の館6

 ジーニがポケットから、青年より貰ったメモを取り出す。

「・・・なあるほど。こいつが『風』ね。ちょっと皆、下がってて」
「・・・何をするんだ?」
「つまりね。この玉は、あたしたちが再三口に出している『仕掛け』って奴だと思うのよ」

 ジーニはアレクの質問に、人差し指を一本立てて答えた。

「風には魔の力を。・・・つまり、この玉に魔法を何でもいいからかけてみろってことよ」

 そう言うと、彼女はおもむろに【魔法の矢】の呪文を唱え始めた。

「万能なるマナよ・・・。魔の矢となりて敵を穿て!」

 彼女の言うとおりの仕掛けは確かにあったらしい。妙に響く音を残して、玉の輝きが失せた。

「やっぱりね・・・。さ、他にもこういう『仕掛け』があるはずよ。さくさく行きましょう」
「その代わり、きっと他にも敵が出てくると思いますけどね・・・」

 アウロラがため息をつく。
 そしてその懸念は当たり、”金狼の牙”たちは次々と現れる敵たちに戦いを挑まれていた。

「空飛ぶ目玉とか卑怯くせえ!」
「ギルも一応、遠距離攻撃はもってるでしょう?」
「【暴風の轟刃】を撃つ前に、アレクに【召雷弾】撃たれたから機嫌わりぃーんだろ」
「おまけに、≪天翼の短剣≫で飛んでいったから、接近戦まで取られてたもんね・・・」

 ギルの憤慨に、アウロラとエディン、ジーニが突っ込んだ。
 すでに『仕掛け』は三つまでを解除しており、後は地の玉だけとなっている。彼らはむしろのんびりとした足取りで、最後の部屋に向かった。

2013/03/25 20:31 [edit]

category: 魔女の館

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