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Sat.

雷雲と神風 5  

 【鷹の構え】によって意識を集中し始めたギルの横を、アレクが駆け抜ける。
 たちまち、聖雷教会の者たちの中へと飛び込み、その場で剣舞を放った。超高速の【風切り】である。

「・・・・・・風よ!」

 先ほど吹き荒れた突風の一部を刀身に纏い、アレクの体が熟練の踊り子のように舞った。
 その姿に口笛を吹いたエディンが、死角からエリック司教をレイピアの刺突と短剣の斬撃で傷つける。

「ぬう!」
「悪いな・・・!こっちも、ちったあ本気ださねえとやばそうだからな」
「いくよ、皆!」
「こちらもいきますよ!」

 ミナスとアウロラが、ほぼ同時に【蛙の迷彩】と【祝福】を唱えた。二人の声が辺りに美しい合唱のように溶ける。
 その後、ミナスが呼び出したイフリートの吐息の一部とギルの斧技で聖雷教会の人間たちは吹き飛ばされ、或いは気絶したものの・・・。

「神様ねえ」
「一応は神様・・・みたいなものなんでしょうね」

 額から血を流しているアウロラが銀灰色に煌く装甲を睨み上げつつ、少し肩を痛めたらしいジーニの横でそう返した。
 薄い肩には雪精トールが乗っかり、必死でその打ち身を冷やしている。

「でも神を名乗らせたくはありませんね。あんな人形に」

 その指に神聖な光が宿り、たちまち密度を濃くしていく。【光のつぶて】の呪文である。

雷と風13

「ジーニの≪エメラダ≫で動きを止められている、今がチャンスです。ギルやアレクも分かってると思いますが・・・」
「大丈夫だよ、仲間だもの」

 ミナスがアウロラの前に立ち、小さな体で一所懸命に庇いつつ笑う。
 そのさらに前方では、無闇と大きな敵を相手に前衛たちの打ち合わせが行われていた。

「いいかい、リーダー。俺とアレクでちょっと時間を稼ぐ。その隙に飛び込んできてくれ」
「おっけー。二人とも気をつけろよ!」
「誰に言っている」
「年上に任せろよ」

 そう言い捨てると、二人はギルが【風割り】の体勢に変わったのを見届けて走り出した。
 まずはエディンがジグザグにステップを踏んで、雷神の左足首の辺りにわずかな傷を作る。
 そこへ鳥のように跳躍したアレクが、思い切り剣を振りかぶって叩きつけた。

「まだか!硬いな」
「とおおりゃあああ!」

 すかさず、非実体をも断ち割る斧が大きめのひびを作る。――あと少しだ!
 同じ箇所に当たるよう、角度を変えてジーニとアウロラもそれぞれの魔法を放った。
 その後も波状攻撃を繰り返し・・・・・。

「これで・・・終わりだ!」

雷と風14

「ガ・・・」

 アレクが対魔法生物への技として習得をした、絶対命中の剣・・・【緋色の翼】が、赤い魔力の軌跡を空に残して太い雷神の足を打ち砕いた。

「や・・・。やりましたぞ!勇者様!」
「・・・あ、はい、どうも・・・」

 枯れ枝のようなグラム司教から抱きつかれ、アレクは複雑な面持ちになった。やっぱり、こういうシチュエーションは女性の方がありがたい。

「邪教は今、ここで朽ちました!」
「ハイハイ。良かったわね」
「こんなにめでたい事がこうも続こうとは・・・!」

 追加報酬なしで戦ったことがよほどに精神に堪えたのか、勝ってもふてくされているジーニの機嫌が直る様子はない。
 それに気づいていてか、はたまた他者のテンションはどうでもよかったのか。

「さあ、今宵は祝宴です!飲み明かしましょう!」

と誘うグラム司教を断るだけの元気は、とてもじゃないが彼らには残って・・・。

「あのう・・・」
「はい、勇者様。何でございましょうか?」
「お気持ちは嬉しいのですが、宿の者も心配していますので・・・」

雷と風15

 ・・・・・・意外と残っていた。
 冷水を浴びせるようなアウロラの台詞に、ようやっと周りの様子を見る余裕が出来たらしいグラム司教は、

「そうですか・・・。それは申し訳ない」

と謝罪をする。
 800spの入った皮袋を報酬として手渡し、「雷神めを倒していただいた報酬」と、司祭の一人に目配せして奥から取ってこさせた呪文書を手渡してきた。

「いや、無理してくれなくても・・・」
「つまらぬ物ですが、お納めください」

 ミナスが固辞しようとしたのを、途中でジーニが遮り受け取る。
 やり取りが済み、暇乞いを告げると司教はにこりと笑った。

「お待ちください。少し、外に出て頂けますか?」
「はい」

 不思議に思いながらも頷いたアレク以下がそれに従うと、司教は他の教徒や司祭を下がらせた。

「皆様方の名は聖風神話に組み込み、無理矢理にでも後世に伝えましょう」

 何やらとんでもないことをさらっと言って、彼は一心不乱に何かの呪文を唱え始めた。

「まさか・・・」

 その呪文の術式に何か思い当たったらしいジーニが声を上げるも、時は既に遅かった。

「偉大なる風神よ、その御姿を現したもう!」
「ああああ・・・」

 グラム司教の皺くちゃな手の平から溢れた驚くほど大量の風が、”金狼の牙”たちを包み込む。

「今こそ我の願いを聞き届け、この地に風を起こしたまえ!」
「冗談・・・だよね?」
「いや、奴さんは本気だぜ?」
「つまりどういうことだよ、エディン」
「・・・この司教さん、私たちを風でリューンに送り届けるつもりよ!」

 ミナスとエディンが顔を見合わせ、一人分かった様子のないギルへジーニが叫ぶと同時。

「神風よ!この者どもを空へ!」
「ヒィィィィィィィィッ!」

 途中までは、空に巻き上げられ悲鳴を上げていた”金狼の牙”だったが、蒼穹の下、体勢が安定し周りを見る余裕が出来ると。

「・・・これは、凄いぜ・・・」

 感に堪えぬようなギルの声である。
 ≪エア・ウォーカー≫を使うよりも遥かに空高く、彼らは確かに飛んでいた。

「もしかしてあの小さいの・・・、リューンですか!?」
「どうもそうらしいな」
「リューンが私の親指よりも、ずっと小さく見えますよ!」
「それならあれは・・・もしかしてカルバチア!?」

雷と風16

 滅多に見られない光景に興奮し、口々に騒いでいた”金狼の牙”たちだったが・・・・・・大事なことを一点、忘れている。
 ギルが見慣れた建物を示す。

「・・・おい、見てくれよ!あれ、≪狼の隠れ家≫だぜ!」
「・・・本当です!」
「おおおおおおおおおいい!親父いいいいいいいいい!俺たちいいいいいいいい!飛んでるぜええええええええ!」
「・・・あのさ、ギル」
「どうした、ミナス?」
「僕、ずっと不思議だったんだけど・・・これどうやって降りるの?」
「・・・・・・あ」

 ちょうどその時、風が止んだ。
 そして・・・・・・”金狼の牙”一行は、美味い飯を作ってやろうと鍋の中身をかき回していた親父の眼前に、屋根を突き破って帰ってきたという・・・。

※収入800sp、【風の刃】※
--------------------------------------------------------

■後書きまたは言い訳

54回目のお仕事は、タチモリさんのシナリオで雷雲と神風です。レベルの割に、ご覧頂いたように軽いテンポのギャグ風味が多いシナリオとなっております。1人旅でちょっとシリアス続いていたので、流れを変えようかとこちらの作品を選択しました。しかし、いくら明るいノリとは言え、さすがに対雷神戦闘は長引きました。神風の援護がなかったらちょっと辛かったですね。
魔王を倒したら瘴気が出てきてしまう、という設定は中々見られないものですから面白かったです。どうしてそういうことになるのか、そういった伝承が後から分かりやすくPC側に出てきたらもっと楽しいのかな・・・と思いましたが、そうするとプレイ時間が長くなっちゃうのですね。一長一短です。
途中途中でプレイヤーが思わずツッコミ(花の魔王って何!?雷神と風神はこの扱いでいいのか!?)を入れたくなりました、ありがとうございました。(笑)

最初の方に出てきている他の魔王の噂ですが、一つ目は寝る前サクッとカードワースに収録の「勇者と魔王と聖剣と(ほしみさん作)」です。中堅クラスへの貼り紙と書きましたが、1~5レベル対象のシナリオですので、低レベルの冒険者の方にもぜひ挑戦して貰いたいシナリオ。
二つ目は「聖剣強奪(てつしさん作)」です。とある傭兵兄妹たちと同行するシリーズの一つなのですが、”金狼の牙”たちでこのシリーズをやると、あっという間にキャラが食われてしまうので断念しました。すごい魅力的なNPCなんですけどねー。(笑)
もしも、高レベル向け戦闘がばっちり入っていて軽いタッチのシナリオを、濃いNPCと一緒にやりたい・・・という方がいらっしゃいましたら、ぜひオススメさせていただきます。「傭兵の兄妹(同氏作)」から始まりますので、そこだけご注意を。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/03/23 01:42 [edit]

category: 雷雲と神風

tb: --   cm: 4

コメント

アウロラさんの動じなさぶりが眩しい
抵抗ボーナス+7くらいはありそう

>>やっぱり、こういうシチュエーションは女性の方がありがたい。
待ちたまえそこの「名誉こそ命」

うわーしゅーるだなー
と思わず棒読みになってしまいそうな展開なんですが、同時に懐かしさも感じられるシナリオですね。
硬派なものも良いんですが、不条理に巻き込まれて始まるドタバタ劇もいいものです。

「聖剣強奪」に限らず、てつし氏の発想は斬新と言うか、型に囚われないと言うか…
同氏の店シナリオで売ってた聖水の瓶で相手を殴りつける神聖技能とか今でも重宝してたりします。

URL | 堀内 #wKzDXcEY | 2013/03/23 10:55 | edit

コメントありがとうございます

アウロラ「ベルサレッジの≪薔薇の指輪≫で抵抗力が上がったせいでしょうか・・・」
ジーニ「いや、アンタはその前から結構動じない人間だったわよ。魔術師より冷静な僧侶って何」
アレク「・・・しかし。一人旅で、他の仲間は女性と接点があったのに、俺だけ出会いは悪魔と中年の男性だったんだが・・・」
ギル「そりゃ、そろそろ遠い目になっても仕方ないか(笑)」
エディン「とは言っても、俺は相手暗殺者だったんだがなァ」
ミナス「ファレンの皆、元気にしてるかな・・・」

以上、キャラに返事を喋らせてみました。(笑)
硬派なシナリオももちろん楽しいのですが、こういうドタバタは気分を変えるのにとてもいいですね。神聖技能なのに・・・聖水殴打・・・(笑)

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/03/23 15:10 | edit

アレク。・゚・(ノ∀`)・゚・。秀麗なのに

理不尽コメディ楽しいですね。リハビリに魔王ちょうどいいんじゃねというエディンさんのセリフに地味に吹きました。父ちゃん無責任!

勇者と魔王と聖剣と、面白かったなあ。大好きです。
傭兵の兄妹シリーズは最近手に入れてまだプレイしていなかったので、やってみようかなと思います。

URL | くもつ #tnWn14Gw | 2013/03/24 14:24 | edit

コメントありがとうございます

この不憫さこそアレクです!
どれだけ綺麗な顔をしていても、地味という楔から自由になれない、それがアレクです!

エディンはいい加減なとこありますからね。(笑)
普通、魔王がリハビリとか言わないと思います。

ほしみさんのシナリオ、中々”金狼の牙”ではやれていませんが、作りこみが凄いとよく思います。criss×crossとか、誰かやってくれればいいのに・・・。
傭兵の兄妹シリーズ、面白いのは太鼓判押せますのでぜひ!(笑)

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/03/24 15:53 | edit

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