Sat.

雷雲と神風 4  

 グラム司教はたいそう喜び、早速、村長の家に使者を送ると意気込んでいる。
 さっそく宴会を開こうとまで言い出し始めた。
 その気持ちは有り難いのだが、何と言うか釈然としないことばかりで、今回の依頼に深く関わるのは止めた方がいい気がしてきた”金狼の牙”たちが望んでいるのは、速やかな帰還であった。
 そのためギルが報酬を催促し、受け取ろうとしたその時。
 森で起きた轟音の倍はあろうかという轟きが、彼らのいる聖風教会の建物を揺らした。
 ごとり、と梁の一つが落ちてくる。

雷と風10

「な・・・!何だ!?」

 その声に、必死に腰を下ろしている椅子にしがみつきながら、辺りを支配する音に負けぬように司教が怒鳴った。

「せ、聖雷教会の奴らです!」
「どういう事だ?」

 ギルはついに椅子と共にひっくり返った司教を助け起こしながら訊いた。
 村長の・・・ひいてはシリス村の決め事については、すでに決着がついている。これが覆ることはない。
 たとえ聖北教会の神そのものではなくとも、各々の面子をかけて行われた魔王討伐なのである。
 襲撃を仕掛ければ、そのこと自体が聖雷教会による不正があったことを周知する結果になるはずだ。
 逞しい腕に支えられつつ、グラム司教は必死に言い募る。

「とりあえず、ここは危険です!外に逃げましょう!」

 すでに天井からぱらぱらと木材と石が落ちてきている。
 迷ってる場合ではないと判断し、アレクを先頭に、司教をかばい守りつつ冒険者たちは外に出た。
 すると、確かにそこには森で出会った司祭や信徒たちの法衣などが立ち並んでいて――その奥に、眼鏡をかけた偉そうな老人の姿がある。
 老人は喉の奥を上機嫌の猫が鳴らすようにして笑った。

雷と風11

「ククク・・・。久しぶりだなグラム」
「お前は・・・、エリック!聖雷司教が今更何の用事じゃ!」
「・・・あれが聖雷教会の司教か」

 アレクはそっと剣を引き抜いた。
 彼らの殺気を感じ取り、口だけでこの場が収まらない事をいち早く察したのである。
 エリック司教とやらは、聖職者にあるまじき卑屈な笑いを顔に浮かべて言った。

「ヒヒヒ・・・、今日は君にお礼が言いたくてね。君達が森の瘴気を元に戻してくれたお陰で、完成したんだよ」
「・・・・・・確かに、魔王倒したら瘴気が吹き出たっぽい印象はあったけどね」
「・・・っていうか、聖職者が瘴気利用していいのか?」

 大人組みがこっそり話し合っているのを気にもせず、グラム司教とエリック司教の話し合いは続いていた。
 なんでも依代が完成したとか・・・・・・何の事かと首を傾げるアウロラの前に立つグラム司教が、

「ハッタリに決まっておる!」

と声を張り上げている。

「ホラ、御覧・・・。これが雷神様だよ」

 エリック司教の合図と共に、天空から舞い降りてきたのは・・・・・・ドラゴンもかくやという常識外れの大きさをした、人形であった。
 敬虔さも、威厳も、神々しさも、とかく「神」という存在にあると思われる要素は何処にも見られない。
 それでも気にすることなく得意満面となっている司教にいらっとしたアウロラが、つい冷たい声で言った。

「あれが雷神?脳みそが不自由なんでしょうか」
「・・・・・アンタ、結構言うわね・・・」

 ジーニが引きつった笑いを発した。

「今この時、雷神様は我らが依代へと憑依なさった!これで世界征服も思うがままああああ!」

 エリック司教の野望宣言に腹を立てたらしいグラム司教から、こちらも依り代を・・・とかいう不吉な単語も漏れ聞こえた気がしたが、やはり突っ込んでは負けであろうと思い、”金狼の牙”たちは戦闘態勢をとった。

「ちょっとちょっと、契約外よ!」

と主張するジーニを残して・・・。

「だって戦わないとこっちがやられちゃうよ!・・・って、あれ?風が・・・」

 ミナスが精霊とは違う風の動きに首を傾げている。

雷と風12

「な・・・!まさか・・・!」

 エリック司教が愕然とした表情に変わったと同時に、人を吹き飛ばすような強烈な突風がその場に吹き荒れた。
 敵教徒の一人が、その風によってどこかへさらわれていく。

「しめた!風神様が来たぞ!」
「・・・・・・今日の戦闘はシュールだなあ」

 もはや何かを悟った表情になったギルであった。

2013/03/23 01:34 [edit]

category: 雷雲と神風

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