Tue.

闇のなか、白き夢魔と 5  

(・・・。依頼人を裏切ることになっちまったな)

 それだけではない、これが盗賊ギルドにばれることになれば、エディンはただでは済まない。
 なのに、何故助けてしまったのか――。
 彼の目の前には、裏口から運び込んだ暗殺者の姿があった。白い肌に幾重にも巻かれた包帯が痛々しい。

「二、三週間ほどで日常生活には支障がなくなる。――アウロラはそう言ってた」
「・・・・・・・・・・・・」
「お前の世話については、この宿の娘さんに頼んである」

 まあ養生するこった、と言い捨てたエディンに、暗殺者は声をかけた。

「・・・待って」

 頬に、愉快げな笑みを浮かべている。

「どうして、私を助けたの?お優しい冒険者様の、憐みの心?それとも、単なるご酔狂かしら?」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうして、私が――」
「・・・よせ」
「・・・・・・・・・・・・」

 エディンは腕組みをして”白き夢魔”を見下ろした。

夢魔14

「いずれにしても、冒険者エディンは、お前なんぞに殺せはしねェ」
「・・・・・・・・・・・・」
「いつでもまた襲って来やがれ。返り討ちにしてやるよ・・・必ず、な」
「・・・ふん」

 そのまま階下へと降りていく。
 ・・・エディンには分かっていた。
 冒険者になる前の己の技量では、イーノック村でこの娘に出会った時に死んでいたのは、自分のほうであったろう事を。
 つまり――幹部から、イーノック村で”白き夢魔”のいる一族殲滅を命じられていた時点で、彼は捨て駒であったのだ。
 それが偶然により生き延びてしまった・・・・・・。
 幹部にとって今すぐ消さなければ都合が悪いわけではなかったが、予想外のことであった。そこで幹部は、例の老人夫婦に「追加依頼」を出すようにした。
 その「追加依頼」の形跡に気づけば、すぐ”白き夢魔”は彼を見つけ殺しに行くであろう・・・そう考えていた幹部にとって誤算だったのは、他の幹部からエディンが盗賊ギルドのメンバーの探索を命じられたことである。
 おかげで盗賊ギルドの”黒鼠”は姿を消し、冒険者エディンという名の男が≪狼の隠れ家≫に住み着くようになった。
 それでも、”白き夢魔”はエディンを見つけて襲い掛かってきた。

(誤算だらけだったってえわけだ、あの人は。)

 ――実は三ヶ月ほど前、エディンを捨て駒にしようと目論んでいた幹部は、ギルド内の勢力争いを上手く泳ぎきることができずに殺されている。
 つまり。
 今現在、エディンがあのイーノック村での仕事を引き受けた詳細は、もう他に知る者がいないのだ。
 ウイスキーの杯を煽りながら、エディンは一人考え続けていた。
 生かせば、娘は必ず毒刃となる。
 それは分かりきったことであった。
 ではどうして、かような非合理きわまる行動を取ったのか・・・?

「・・・・・・・・・・・・」

 ――単純に、娘に同情したのだろうか。家族をすべて失い、死に掛けて息も絶え絶えにしていたのが、惻隠の情を招いたのか?
 ――それとも、魅了されたか?娘の銀髪と、その美貌に?

夢魔15

「・・・アホらしい」

 そのどれでもなかった。
 彼は知っていた――もう道化師として踊らなくていいことを。だからこそ、もう一人の道化師――いや、この場合は夢魔か――を連れて、演技の必要がない舞台を降りたのだ。

「・・・あら、エディンさん。こんなところにいたの」

 宿の娘さんが声をかけてくる。

「悪ぃな、娘さん。厄介ごとを押しつけちまって」
「ううん、構わないわ。・・・それにしても、随分と綺麗な娘ね」
「・・・・・・そうかい?」

 エディンはすっとぼけて耳の穴をかっぽじった。

「・・・ねえ。あの娘っていったいなんなの?」

 娘さんは楽しそうな声音で追及してきた。

「単なる行きずり?エディンさんの新しい冒険者仲間?」
「・・・ただの行きずりだよ」
「道端で倒れてたのを、助けてあげたってことかしら?いい人ね、エディンさん」
「ヘイヘイ。最近の夜道は物騒だ。娘さんも気をつけてくれよ」
「はーい」

 さる出来事で、軽戦士(フェンサー)と名乗れるほどの技を取得した娘さんが、親父さんに隠れてリューンの暴漢たちを夜中懲らしめていることを、エディンは感づいていた。

夢魔16

「・・・さて、仕事しなきゃ仕事」

 彼女が明るく言って走り去るのを、エディンは止めずにただ杯を空けた。もうそろそろ、街に東雲が訪れる。

※収入2000sp※
--------------------------------------------------------

■後書きまたは言い訳

53回目のお仕事は、テンさんのシナリオで闇のなか、白き夢魔とです。読み物系CWシナリオと謳っていらっしゃいますが、「隠者の庵」(Fuckin'S2002さん作)対応のキーコード反応が色々ついていて、ちょっとしたゲーム性も持ち合わせてらっしゃると思います。また、本編上の古風な描写表現は、すべてこのシナリオ作者様がお書きになった文章で・・・久々に見た形容詞などが面白かったです。漢字変換が大変でしたが。
善人とも悪人とも言い切れない、淡白な熟練冒険者対応シナリオとありまして・・・これはエディンじゃないかと。
ただ、本シナリオでは、キャラクターがイーノック村を壊滅させたのは、3ヶ月前の出来事だったりします。
冒険者になってからだと、かえってエディンはこういった依頼を受けなさそうで、盗賊ギルド時代の話に変更。ついでにあっちこっち改変したら、エディンが幹部に疎まれていた設定になってました・・・おやあ?(笑)
最後にエディンが”白き夢魔”を助けたのは、本人が口に出したように死体をうっかり作ると後始末が面倒なのと、自分のやらかした事ながら盗賊と暗殺者のいざこざが冒険者となった今では馬鹿らしい、という理由から来るものです。勝手なオトナですね。
そうそう。スティープルチェイスに出場したのは、もしかしたら”白き夢魔”を誘き出せるかも・・・という思惑が無意識に絡んでいたのかもしれません。ハセオに悪いので、エディンはあえて気づかないようにしてますが。

最初のところで仲間をお見舞いするのも、当然ながら本編にはございません。本編のハードボイルド成分を知っていて、どうしてもここで「いつものお父さんエディン」らしさを書きたくなり付け加えました。ギル、どこまで脱がされちゃったんでしょうね?
ミナスがアッシュやシエテと共に向かったのは、手前味噌ですが私のシナリオの「防具『静屋』」です。・・・本当は、「きつねのパン屋さん」(星色さん作)やメレンダ街(作者さん色々)に向かいたかったんですが、あれってリューン市内ではないんですよね・・・。ミナスが案内する以上、リューンから出て云々ってことはなさそうなので、やむを得ず使ってみました。でもダウンロードしてくれるととても嬉しいです。(何)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/03/19 08:24 [edit]

category: 闇のなか、白き夢魔と

tb: --   cm: 2

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 |  # | 2013/03/22 01:55 | edit

コメントありがとうございます

>>テン様
(( ;゚△゚)))))))ガクガクブルブル
どなたですか、テンさんにここばらしたの!?
ダメですよ、こんないい加減極まりないリプレイサイトばらしたら!(笑)
せっかくお作りになられたシンプルなストーリーを、キャラに合わせて変にいじくってしまいましてすいませんでした。冥利に尽きると仰っていただけで、こちらこそ光栄でございます。もう一つのアレは、ちょっと文章に起こす自身が私になくてですね・・・すいません。(笑)

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/03/22 02:20 | edit

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top