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Thu.

スティープルチェイサー 4  

 この時、微かにソウの眉がぴくりと動いたのをジーニは見逃さなかったのだが、ちょうどそこに仲間たちが帰ってきてしまった。

「ただいまー」
「おかえり」

 元気よく宿に飛び込んできたミナスに、ジーニは頬杖をついたまま返事をした。
 ソウも何事も無かったかのように挨拶する。

「あ、おかえりなさい」
「ふう、つかれた!親父ー!冷たいのくれー」

 ギルの大声をちゃんと聞き取った親父さんは、片手に赤い野菜が入った籠を、もう片方の手に緑色の縁取りがついた水差しを持って現れた。

「おお、お疲れ。ほら、井戸で冷やしたトマト食え」
「食べる食べる」

 遠慮なく両手に一つずつギルが掴んだのを見て、ジーニが声を上げた。

「え、そんなのあるの。こっちにもちょうだい」
「どうせみんな食うんだろ。ソウも食べて行くか?」

20130306_109.png

 親父さんは木製のジョッキに冷水を注ぎながら彼女を誘った。

「ううん。店があるから、もう帰るわ。ありがとね」

 そして塩をかけてトマトにかぶりついているエディンに、ちょうどいいから自分がハセオを連れて帰ると告げる。

「わかった」
「えーとその、皆さん」

 その台詞に、”金狼の牙”たちは顔を上げてソウを見やった。

「私はあなた達に頼んで、良かったと思っています。こんなに頑張って貰って」

 そしてぺこりと頭を下げた。

「応援くらいしか出来ないけど、どうか明日のレース、よろしくお願いします」
「レースはこれからですからね。任せといて下さい」

 にっこりと微笑んだアウロラの横で、どこか不満そうな雰囲気を漂わせながらジーニも口を開く。

「・・・そうね。わかった。力を尽くすと、改めて約束する」
「ありがとう!私ゴールで、みんなを待ってるから。それじゃあ、また明日ね!」

 ソウを見送った後。
 ふーむと唸りつつ顎に手をやって黙りこくっているジーニに気づき、親父さんが声をかけた。

「どうしたんだ?」
「・・・いえ、なに。大したことは。・・・ただ、あの人・・・」

 そこで小さく首をかしげる。

「例えば、ハセオにかかるかもしれない危険性の事なんかをね。最後までこっちに確認してこなかったな、って・・・」

 こちらが心配するのもおかしな話ではあるが、色々言われるであろう事を予想して、ジーニは説明を一応考えていたのだ。

20130306_110.png

「だってそうでしょう。ハセオはマートウさんにとって、家族同然の存在なんだから」
「うーん。そう言われればそうですが」
「それにまあ、見方を変えてみたら、あたしたちがやろうとしている事っていうのは」

 ジーニはひょい、と鞘に包まれ卓上におかれたエディンの≪スワローナイフ≫を手に取った。

「イチかバチか、ほんの少しひびのある壁に、わざわざナイフを刺し込もうとしているようなものな訳で・・・」

 蒼い装飾をした魔法の短剣が空想上の壁を突き刺す様子を見つつ、ギルが口を挟む。

「でも別にそれは、ルール違反ではないんだろ」

20130306_112.png

「確かにその通り。ルール違反ではないわよ。・・・でも、どうも想像がつきにくくてね」
「・・・・・・ジーニ。何が言いたいの?」

 ミナスが不思議そうに目を瞬かせた。

「いいのかしら。ご主人が好きだったレースなのに」
「ああ・・・そうか、そういえばそうだよね」
「どちらかと言えば彼女にとっては、わざわざ崩そうとしなくてもいい壁のはずでは、と思うんだけど」
「いいから、そろそろ武器返せ」

 エディンが人差し指と中指で鞘に包まれた刀身を挟み込み、ジーニの手から≪スワローナイフ≫を取り上げた。
 それには抗議せず、また頬杖をついて唸り始める。

「あえてリスクの高い選択をする、依頼人の意図まで詮索するつもりは無いけど・・・」
「うーん。考えすぎじゃないか?」

 リーダーの立場にいる若者は、そう言ってちょっと笑った。

「今回一番やる気のくせにいまさら何言ってるんだか」
「・・・そうね、悪かったわね。本人が了解している以上、こちらが首を突っ込む部分ではないわよね」

 ジョッキを空にしたジーニに、水差しの残りの水を注いでやりながら親父さんが呆れたように言った。

「あのなあ。そこまで考えてるなら、本人に言ってやれよ」
「ちゃーんと聞いたわよ。はい、この話は終わり終わり。・・・あーおいしい。冷えたトマトはおいしいなあ」
「やれやれ」

 親父さんは肩をすくめると、トマトによく合うフレッシュチーズや、小エビと玉ねぎを大量に挟んだサンドイッチを取りに、厨房の奥へと消えた。

2013/03/07 18:03 [edit]

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