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金狼の牙の小旅行 2  

 世の中から忘れられたかのような辺境の小村に、”金狼の牙”たちは来ていた。
 『歌の一族』と別れた後、深緑都市ロスウェルに少々滞在し冒険をこなした彼らは、リューンに真っ直ぐ帰らずわき道にそれてここまでやってきたのだ。
 この集落に訪れるのは何も初めてではないのだが――どうにも、寂しすぎる印象のせいか、よそよそしさが抜けない。
 小村の中心にある質素な小屋へ彼らは向かった。
 先頭に立っているギルが、軽くノックする。
 ・・・・・・ギイイィィ・・・・・・。

20130305_04.png

「・・・お久しぶりです。ゆっくりしていってください」
「・・・・・・おねーさん、相変わらず怖いっすね・・・」

 ギルが軋むドアを細く開けた向こう側で、にたりと――いや、主観的にはにっこりのつもりかもしれない――笑っている女性は、かつて賢者の塔で魔法開発に携わっていた魔女であった。
 しかし、一般的な魔法から大きく外れた彼女のことを塔は危険視し――彼女は、それまで研究していた魔法によって逃れたのである。
 まったく、皮肉の効いた話である。
 だとすれば、亜人や何らかの理由で元々の場所から爪弾きにされた者が集うこの世捨ての集落に、彼女が終の棲家を見出したのは、運命のなせる業とでもいうべきだろうか。
 顔色のしごく悪い、二十代ぐらいに見えるこの女性を、ジーニははっきり嫌っていた。
 元々、禁呪と呼ばれるような呪文の類を人間が使おうとするのが好かないので、あの女性が開発する魔法にも難色を示していたのだ。
 今も杖の先にある髑髏でしきりに自分の肩を叩きながら、落ち着かなさげに木製の本棚や端の綻びたカーテンのかかった室内を見回している。
 にもかかわらず、今日訪れたのは・・・。

「さあ、ほら。アンタが開発した魔法出してちょうだい」
「おやおや・・・。どういう風の吹き回しで?」
「うるっさいわねー。仕方ないでしょ、新アイテム手に入れたら、また呪文書を整理する必要性が生じたのよ」
「それはご苦労様です・・・・・・。では、こちらの魔道書をどうぞ・・・」

 本棚から一冊の本を取り出した女性は、表面のざらついたテーブルの上に置いた。
 女性がまとめたらしいその魔道書は、ひどくぼろぼろなところがいくつかあった。女性が自分で使ってみた印だ。
 それに気づいてやや眉をしかめたが、ジーニは口には出さずただページを捲った。
 コーラルピンクのマニキュアを塗った爪が、あるページに綴られた呪文のところを指す。

「これこれ。威力が強くて高い技量を必要とする割に、呪文構成そのものは単純で分かりやすい」
「ああ、【神槍の一撃】ですか。なるほど・・・」

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 それは周囲の空気を歪め、振動波を発生させて対象を貫く魔法である。
 貫通力は凄まじいものがあり、通常の生命体なら一撃で仕留められるほどである。
 ただ、大胆な術者向きのこれは性質的には向かないと思うが・・・と指摘されて、ジーニはあっさり首肯した。

「そんなこともちろん分かってるわよ。でも制御自体はできるんだし、これだけ威力があるなら十分でしょ」
「そこまでご承知いただいてるなら・・・お売りいたしましょう」

 ジーニが持参した羊皮紙にその呪文構成や詠唱を書きとめ、丸めて封蝋で閉じる間、ふとアレクの目が一つの剣術書に留まった。
 それは【魔風襲来】と表紙に書かれている。
 手を伸ばしてページを開いてみたところ、どうも魔法剣のようである。
 女性がそれに気づき、声をかけた。

「気になりますか?」
「あ・・・・・・ああ・・・・・・」
「この技は、剣を嗜みとする隣人と共同で開発した魔法剣技です。凄まじい烈風を巻き起こしながら・・・」

 女性は、手でふぁさっと辺りを払うような仕草をした。

「魔力を帯びた剣で敵を縦横無尽に斬り裂きます」
「詠唱は必要になるんだな?」
「はい。その分の時間がかかるのと、防御がやや疎かになってしまうのが欠点と言えます」

 しかし、と彼女は続けた。

「安易な防御型召喚獣については、【魔風襲来】でもたらされる烈風でほとんどが削り取られるはずです」

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「シルフィードなんかの加護を削り取るってことか・・・」

 幼馴染がひょいっと顔を出して言う。

「買いたいなら買っていいんだぜ、アレク。強敵とやりあう機会も増えるだろうし、技のレパートリーが増えるのは大歓迎だからな」
「うむ・・・ギルがそう言うのなら」
 
 こうして、アレクは剣術書を手に入れた。嬉しそうに表紙を撫でている。

「この世捨ての村の技術と魔法・・・・・・。どこまで通じるか、今度また来て教えてくださいね・・・」
「はいはいはい。せいぜいモルモットのように頑張らせてもらいます」
「ジーニの憎まれ口って、どうしてこう・・・、ああもういいや、俺」

 頭を抱え込んだギルの横で、アウロラが首をかしげている。
 それに気づいたエディンがどうした?と聞いた。

「いえ、その・・・前の『月姫』関係の依頼は現金で儲かっていないはずなのに、差額が計算と合わなくて・・・」
「あー・・・うん、そんなに合わないのか?」
「ええ。2500spほど、どこかで収入があったようなんですけど」

 エディンは他の仲間には内緒にしているが、前の事件で実は召喚魔法の本を一冊盗んでいる。
 アウロラの言う2500spとは、その本自体が売れた金額そのままだったのである。

(こいつぁやばい。アウロラが本格的に調査しないうちに、手早くどっかで計算をごまかさねえと)

 ちなみに、『月姫』関係の依頼では≪ユニコの杖≫という、魔法生物や不浄な敵に素晴らしく効果の高い武器も、貰っていたのだが――。
 それを寄越したロワード氏が気に食わないと、杖はギルが真っ二つに叩き折った。
 珍しい魔法の品(何せ100年前の品だ)には違いないので、折った当初はジーニが狼狽して思い切り自分の杖でギルを叩いていたが、アウロラが取り成してどうにか落ち着き、そのことを口にすることはもうない。

(ま、使うとすりゃ、あの杖のサイズは俺向けだったんだが・・・細剣と杖を使うなんざぁ、曲芸モドキになっちまうからな)

 自分が計算をし直してやろうとアウロラに申し出ながら、エディンはやれやれとため息をついた。

※収入1600sp、【氷姫の歌】【神槍の一撃】【魔風襲来】※

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■後書きまたは言い訳
今回は店シナリオ2点です。私がとってもお世話になっている周摩さん作の歌の一族と、以前にもちらりとリプレイの中に出てきた、カムイさん作の世捨ての集落。
アイテムによるスキルの見直しが必要だったため、深緑都市ロスウェルに寄って地図作製組合の探索ポイントを増やす一方、ここで新スキルを購入する事にしました。

まず、歌の一族ですが・・・彼らの噂を、鳥間鈴女さん作の吟遊詩人寄合所で聞いたことにしていますが、これはシナリオの本筋にはありませんのでご注意を。目的としては、「同族(エルフ)をミナスに会わせる」「アウロラの対多数用呪歌を買う→そこからミナスの新スキルにも繋げる」あたりです。
後者については9レベルに上がった時のお楽しみということで・・・分かる人にはばれている気がしますが。
それにしてもショコラが可愛い。ほややん。
サラーさんのお声は、きっとまろやかで瑕の無い声なんだろうなあ・・・と漠然としか想像できず、あんな形容になっています。うちのアウロラの場合は・・・設定参照で。

世捨ての集落。いきなりジーニが喧嘩売ってすいませんでした。
いや、その・・・・・・ジーニは禁呪が嫌い(行過ぎた技術や魔法は必ず滅びをもたらすから)という設定があるので、これを守るとどうしてもああいう反応になってしまうのです。あのおねーさん、好きなのにー。(笑)
一応、説明を読む限り【神槍の一撃】は禁呪ではなさげなので、大ダメージ魔法を確保のために購入。
それから、【飛礫の斧】ととっかえっこする形で【魔風襲来】も購入しました。このスキルの召喚獣出てる間、全体的に能力下がるんでちょっと辛いんですが、それを補って余りある技能だと思っているので我慢。
こちらのお店のスキル絵は本当に素敵なので、レベルが上がれば後もう一つくらい買うかもしれません。

あ、そうそう。本文にも書いてますが、前回のシナリオで手に入る≪ユニコの杖≫は、取っておいた方がいいアイテムです。売却値は0spですが、神聖属性・魔力属性でそれぞれレベル3比ダメージ、全属性ダメージもレベル2比あります。物理ですが、器用/好戦適性キャラがいるのなら持たせて損はしないはず。
・・・うちはなんと言うか、ギルが「絶対こんなの使うもんか!」と主張した為に、やむを得ず破棄したんですけどね。

次回はいよいよ、爽やかなシナリオを。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/03/06 06:49 [edit]

category: 小話

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