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Wed.

金狼の牙の小旅行 1  

 小鳥はさえずり、木々の合間から差し込む日の光が、心地よい暖かさを作ってくれている。

「ふむ・・・流石”深緑都市”と呼ばれるだけあるな・・・」

20130305_01.png

 エディンはのんびりと辺りを見回した。
 ”金狼の牙”一行は、『深緑都市』ロスウェル近郊のキルヴィの森に来ていた。
 森の奥深く、憩いの滝という場所に『歌の一族』と呼ばれたエルフの一族が住んでいたという噂を、リューンにある吟遊詩人の寄合所で聞いている。
 今はそこで呪歌を教えているエルフがいるそうで、隠れ里を失ったミナスの母の手がかりを知らないか、一行は確かめに向かっていた。
 ぴたり、とギルのブーツが止まる。
 不審そうに幼馴染がギルに問いかけた。

「どうした?」

20130305_02.png

「今、あっちの方向で水の音がしたぞ。行ってみよう・・・」

 ギルの指し示す方向へ進む事、10分足らず。
 勢いよく流れ落ちる滝の前に彼らは出ていた。
 物珍しそうにジーニが清水を覗き込むのを見ながら、ミナスはリーダーを振り仰いだ。

「滝だ・・・ここが『憩いの滝』かな?」
「違うよ、ここの向こう側がそうだよ」

 突然、背後から声をかけられた。
 驚いてぴょん!と飛び上がったミナスは、着地前に体を180度回転させて声の主を確かめる。
 そこに立っていたのは、黒い髪と瞳を持つミナスよりも幼いエルフだった。

「あなたたち、お客さん?『歌の一族』にご用なの?」

20130305_03.png

 エルフの少年は、岩壁に開いた裂け目から出てきて質問する。
 彼は『歌の一族』の者らしい。
 自分の知るエルフではなかったことに内心落胆しながらも、同族はやはり珍しいので、ミナスは上ずる声を押さえつつ彼に話しかけた。

「うん、そうだよ。君が案内してくれるの?」
「うん、いいよ。さ、こちらへどうぞ~」

 エルフの少年は岩の裂け目にするりと消えてしまった。
 どうやら中は空洞になっているらしい。
 ”金狼の牙”たちは見失わないように急いで後を追った。
 先程の滝よりも、よほど大きな轟音が響き渡っている。思わずジーニが杖を握っていない方の手だけ耳に当てて、ふーむと気の抜けるような声を出した。

「すごい音ね・・・」

 水分を含んで滑りやすくなっている苔に気をつけながら、エディンはミナスに問うた。

「エルフの隠れ里ってなあ、みんなこんな感じなのか?」
「うちは違ってたよ。やっぱり、それぞれ特性があるんじゃ・・・」

 途中で言葉が途切れたのは、滝の更に裏側にあったその風景が非常に美しく、また見事であったからだ。 
 アウロラが呆気に取られたように言う。

「ここが・・・『憩いの滝』ですか・・・」
「お~い、サラー!お客さんだよ~!」

 黒い髪を持つエルフの少年は、滝の側の岩に腰掛けているローブの女性に呼びかけた。
 女性は”金狼の牙”たちをちらりと見やると、微笑んで会釈をした。
 そのまま、背の低い少年と目線を合わせるようにして言う。

「ご苦労様、ショコラ」

 驚くほど澄んだ――まるで水晶でできたカナリアのような美声である。
 にっこりと笑い返した少年の頭を撫でて、女性は立ち上がった。

「あなたたちがお客様ですね。初めまして、サラーと申します。この子はショコラ。ほら、挨拶なさい」
「そういえば名前も言ってなかったね。ゴメンね。ボクはショコラだよ」
「僕はミナス。僕らの中で歌を歌うのは、アウロラだけなんだけど・・・」

 一所懸命にこちらを見やるミナスに一つ頷くと、サラーはすんなりと指の長い手で竪琴を持ち直し、口を開く。

「歌がご入用でしたよね。・・・では、こちらへどうぞ」

 一際大きく、平らな岩に近づくと、彼女は懐から羊皮紙の束を取り出して広げて見せてくれた。
 そこに書き綴られているのは、間違いなくエルフの呪歌であった。
 たちまち、アウロラは今まで呆気に取られていた様子を取っ払い、真剣な顔で束を丁寧に捲り上げている。

「学びたい歌はありますか?気になる事がございましたら遠慮なくご質問くださいね」
「詳細については・・・?」
「裏側に書いてあります。もちろん、選んでいただければ私が説明いたしますが・・・」
「わかりました。皆さん、申し訳ないですが少々お時間をくださいね。全部眼を通してみたいので」

 いつになく貪欲な知識欲が刺激されたのか、アウロラはそう言って一枚一枚の楽譜を熱心に検討し始めた。
 その様子に軽くため息をつくと、エディンはサラーに向き直り質問した。

「その・・・見て分かるとおり、俺らもエルフの子を連れているんだがね。この子、ダークエルフとのいさかいで母親や一族からはぐれちまってるんだ」
「まあ。お気の毒に・・・・・・」
「そんなわけで、同じ里のエルフを探してる。あんたヘルブラウランツェ・・・って氏族のこと知らないかい?」

 サラーは残念そうに首を横に振る。

「そうか、仕方ねえな・・・。じゃあ、『歌の一族』のことを詳しく教えてくれねえか?話せる範囲でかまわない。ミナスの親たちの手がかりになるかもしれねえ」
「お役に立てますかどうか・・・とりあえず分かりました。『歌の一族』というのは、秘伝ともいえる呪歌を代々受け継いできたエルフの一族の事を指します」
「どうしてここで教えることにしたんだ?他のエルフは?」
「・・・・・・5年前の内乱によって、継承者が死んでしまったからなのです・・・」

 たちまち、サラーの美しい面が微かに悲哀と――それ以上の悔悟の感情で歪んだ。

「原因は黒エルフにそそのかされた継承者の弟でした。彼は私とショコラを除く、一族の大変の仲間を殺しました」
「・・・ふーむ。やっぱり不倶戴天の敵か、黒エルフは」
「私とショコラは偶然街に出ていたため助かりましたが・・・両親や兄弟は・・・」

 サラーはそのままうつむいた。
 エディンはきまずい雰囲気を感じると、それ以上の質問はやめた。
 肝心の一人であるミナスはといえば――子どもはやはり子ども同士がいいのか、ショコラがミナスを相手に呪歌のルーツになった童話を教えている。
 その近くにギルがいるのは、同レベルだと判断されているからなのか否か。

「むかしむかし、街はずれの森に、一人の魔法使いが住んでいました。その魔法使いは一匹の子インプを従えていました・・・」
「インプ知ってる!こないだ、依頼人がインプに騙されてた!」
「満腹食堂の事件な・・・」
「そんなことあったの?」
「あ、ごめん。話の腰折っちゃった。続き続き!」
「あ、ええと、それで子インプはある日、魔法使いが大切にしていた魔法の瓶を・・・・・・」

 その様子を、アレクとジーニが頬杖をつきながら眺めている。

「やれやれ。この分じゃしばらくはここから動けないだろうな」
「アウロラがあれで、ミナスにお友達ができちゃったんじゃ仕方ないわね。・・・とりあえず、終わったら起こしてね」
「・・・・・・何?」

 いい具合に陽光で暖められた岩の上に、ごろりとジーニは寝転がった。岩の上を寝るためのベストポジションにする者は少ないだろうが、野営になれた冒険者の基準からすると、ジーニの今いる岩は寝転がるのに最適な形と温度であった。

「おやすみなさーい」
「・・・・・・えーと」
「アレクはん。諦めなはれ、黙って耐えるトコですわこれ」

 悟ったかのような雪精トールの言に、アレクはもうそれ以上何も言う事がなくなった。
 ――かれこれ2時間後。
 吟味を終えたアウロラが、【氷姫の歌】という精神的ダメージを多数に与える呪歌を選び、それを聞いたミナスが後日、とんでもない精霊と契約を結ぶこととなったのだが・・・・・・。
 この時は誰も予想していなかったに違いない。

2013/03/06 06:27 [edit]

category: 小話

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コメント

感激ィ!

今か今かと期待していた『歌の一族』のリプレイっ!
感激です!
子供エルフ同士+ギルバート氏がわいわいやってる様子を想像すると和みますな……

しかし【氷姫の歌】とはナイスなチョイスですね。
見た目からして『冷気による攻撃』のキーコードついてそうなのに、普通についてないっていう微妙に残念な歌っ!
実は作者自身がテストプレイ以外で使用した事がないスキルなので、これからの活躍に期待が高まります!

URL | 周摩 #xomJgpUE | 2013/03/06 22:39 | edit

ナイスチョイスありがとうございます!

ショコラとミナスがきゃっきゃうふふしてるのに、普通に混じっているギル・・・なんて侮れない子。お待たせしててすいません、こんな感じで邂逅しました!
裏でサラーさんに超緊張してるエディンとか考えたんですが、表現し切れなくて到達できませんでした。(笑)

【氷姫の歌】、精神的攻撃なんですよね。何か、アウロラだったらそういうの得意そうとか思って・・・僧侶なのに・・・。(笑)
こちらのお歌で活躍できるシナリオ探したいですねー。

追記:そういえば、吸血鬼関連のシナリオで思い出しましたが、5-6くらいにヒポポタマスさんの「再封印の儀式」がありましたね。

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/03/06 23:22 | edit

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