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Tue.

丘の上の洋館後編 6  

「・・・・・・ん」

 エアリの体から放たれた光がまぶしすぎて、目を閉じていたはずだった。
 しかし、次にギルが目を開いた時には、そこは見慣れた宿のカウンターで・・・。

「・・・・・・あれ、夜だ・・・・・・」

20130304_19.png

 ギルの頭はひどくぼんやりしていた。
 酒をずいぶん飲んだらしい。カウンターには空瓶がいくつも乗っている。
 彼の両隣には、”金狼の牙”のメンバーがいびきをかいたり寝言を言ったりしながら眠っていた。

「うごー。ぐがー」
「・・・・・・だからあ、それは報酬が悪いっつってるの・・・むにゃ」
「・・・・・・なんだこりゃ。いつもどおりって言えばそうだけど・・・つーか、アレクとジーニうるさい・・・」

 そして顔をあげると、カウンターの中で月明かりをバックに誰かが立っていた。

「エ、エア・・・・・・」

 彼女の名前を呼ばわろうとした瞬間、スカートを翻すように彼女は扉から出て行っていた。

「あ、待って!」

 急いでギルもその後を追う。
 恐ろしいほど――漆黒の夜半であった。

「真っ暗だ・・・・・・」
「あれ、ギルバートさん!」

 そう言って彼に近づいてきたのは、教会の牧師見習いである。

「リグレット」
「こんな遅くに、どうしたんです?」

 ギルが答えるよりも早く、リグレットがぽんと手を叩いた。

「あ、わかりました!酔って気分が悪くなったから、夜風にあたりにきたんでしょ」
「リグレット。今、昼間の迷子の女の子がここを通らなかったか?」
「昼間の迷子の女の子?それって誰のことです?僕は知りませんけど・・・・・・」

 わずかな違和感を感じながら、ギルは言い募った。

「教会に行った時に俺と一緒にいた金髪の女の子だよ。忘れちゃったのか?」
「そもそも、今日は教会には来てないじゃないですか。ギルバートさん」

20130304_20.png

「・・・・・・何?」

 リグレットは何事もなかったかのような顔で笑っている。

「やだなあ、酔いすぎですよ。昼間の記憶すらあいまいになってるんじゃないんですか?」
「・・・・・・」

 牧師見習いの青年は、黙り込んだギルの顔を見て不思議そうに顔をかしげた。
 その横を、さっと少女の影が通り過ぎていく。

「あっ!」
「どうしたんですか?」

 ギルの目撃した影は、郊外への道を駆け抜けていった。
 そうと気づいたときには既に、ギルの足はその道へと動き始めていた。

「ギルバートさん?僕家に帰りますよ。聞いてますか?・・・・・・って聞いちゃいないよ」

 ギルの赤いマントに包まれた背中を、リグレットの細い声が叩いて、滑り落ちる。

「夜風には気をつけてくださいね。風邪引きますよ、酔っ払いさん」

 気遣いの声を心中でありがたく押し頂きつつ、彼はひたすら道を走っていった。

「はぁはぁ・・・・・・」

 ギルは白い洋館のあった場所まで駆け上がっていった。
 森はいやに静かで、魔物一匹の気配も感じられない。

「・・・・・・ハァ・・・・・・ハァ。このあたりのはずだ」

 必死に夜目をこらして、彼は訪れたはずの館を探した――が、夜の空に浮かび上がるはずの白い洋館が見当たらない。

「そんなばかな・・・・・・ん?」

 視界の隅に、ふっと入った『もの』。

「あれは・・・・・・」

 小道の外れにあったのは小さな石碑である。
 暗くて石碑に書かれている文字がなかなか読み取れず、ギルは位置を変えて石碑が月光を浴びるよう調整し、ようよう彫りこまれた字を読んだ。

「小さき命は永遠に語り継がれるだろう――――エアリ・L・エルディガ」

 ひゅ、っと小さく息を呑む。

「月の姫、ここに眠る・・・・・・」

 石碑の文字を、信じられないと言う顔でギルの手が撫でた。

「これって、エアリの・・・・・・墓?――ん?あれは・・・・・・」

 墓の傍に佇んでいたのは、ギルがエアリにあげた人形だった。
 相変わらず金の巻き毛と上等なベルベットの質感が、高級感を漂わせている。

(ギルバート・・・・・・)

 ギルは誰かに呼ばれた気がしてはっと顔を上げた。
 ・・・・・・空では、月が悲しそうに輝いている。その月光を浴びていた石碑の前に、徐々に光が固まりはじめ――。

「エアリ!」
(また会ったね)

 月を背景に微笑むエアリは、霧のように体が透けていた。

「お前・・・・・・幽霊なのか?」
(そうなのかな。私もよくわからない)

 そして衝撃的な台詞を放つ。

(100年経ってもこの姿なんだから、たぶんそうなんだろうね・・・・・・)

 すっと、エアリの華奢な腕が上がり、空を指し示す。

(ねえ、ギルバート。空を見て)

20130304_21.png

 涙に潤んだギルの黒瞳に移りこんだのは、白く輝く――そして、どこか孤高の月であった。

(月って、神様って言われてるけど、みんなが届かないくらい遠くてひとりぼっちなんだよ)
「・・・・・・そうなのか」
(私も、月みたいにひとりぼっちだった)

 はっとなり、顔をエアリと合わせる。

(ギルバート・・・・・・あなたに会うまでは)
「・・・・・・エアリ」
(今日、あなたに出会えて本当に嬉しかった。『月姫の祭』とても楽しかった)

 繊細だが親密な者にのみ見せるその笑みは、すでに孤高ではなかった。

(ひとりじゃなかったんだ・・・・・・ってそう思ったら安心しちゃった)
「・・・・・・そうだ。お前はひとりじゃない」

 ギルの言葉に嬉しそうに微笑んだエアリは、すっと彼の目前へと進み出た。 

(ねえ、ギルバート・・・・・・。この世界に、まだ幸せになれない子はいるの?子どもを愛してくれない親はいる?)
「・・・・・・」

 ギルは「いない」とは、とても答えられなかった。
 彼は知っている。この豊かに栄えている交易都市にですら、歪んだ愛情や、行き過ぎた無関心から、子どもを外からも内からも傷つける親が存在している。
 口篭るその様子を察したのか、はたまた別の手段でそのことを知っていたのか・・・・・・エアリは、

(それって悲しいことね・・・・・・)

と零した。

(きっと今も部屋の隅で泣いてる子どもたちが、窓から月を眺めてるんだわ・・・・・・)
「そうだな。まるで――」
(まるで、ひとりぼっちの自分を鏡を通して見つめるように・・・・・・)

 ギルの言おうとした台詞そのままに、エアリは言った。二人は今、同じ心持だったのだろう。

(ねえ、ギルバート。約束してくれる?)
「うん?」
(子どもを愛してくれる大人になるって・・・・・・)
「約束するよ。きっと・・・・・・必ず」
(・・・・・・よかった)

 エアリの姿はつきに溶け込むようにして消えてしまった。
 そして、それ以降呼んでも現れなくなった。
 ギルは足元に生えていた野ばらを摘むと、それを人形の傍に供えた。

「・・・・・・あっちで、ちゃんと愛してくれる人を見つけるんだぞ」

 人形は月明かりを浴びて森の中。孤独に光った。

「俺は・・・・・・俺も、約束を守るよ。エアリ・・・」

 ――夜がふけたころ、宿の窓から空を見上げたら綺麗な満月が見えた。ひとりぼっちで空に浮いていた。

※収入0sp、≪ジルの書≫≪ユニコの杖≫※

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■後書きまたは言い訳
47回目のお仕事は、NINAさんのシナリオで丘の上の洋館後編です。前回のもろ続きです。
前後編に分けて正解でした。・・・じゃなかったら、この話数いくつまでいったのだろう、このシナリオ・・・。
ただプレイするだけなら、長編でもじっくり遊べるからいいのですが。
リプレイに起こすとなると、非常にプレイ時間の長短は気になるものなのですね~。
このシナリオはまだNINAさんご本人のHPからダウンロード可能ですので、エアリに会いたくなったプレイヤーさんは、どうぞ探してプレイしてみてください。

実際に≪エメラダ≫を装着して戦闘してみましたが、やはりチートアイテムでしたね。(笑)
とはいっても、私程度の戦術しか使えないなら、今回の赤い魔物退治には必要不可欠なものですから、読者様には大目に見ていただけると幸いです。
何せ、数値内容をあまり明らかにしない方がいいのでしょうが、”金狼の牙”の面子って、そんなに能力値高くないんですね。英明型のミナスが、普通の冒険者よりちょっといいくらい。他リプレイ様の、適性が白丸で出たり英雄型だったりするような、すごいPCには到底太刀打ちできないんです。基本。
あえてTRPGで言うのなら、完全版のソードワー●ドとかクトゥル●神話TRPGで、能力値のダイスが平均かそれ以下の出目しかなく、アイテムと知恵でなんとか渡り合うしかないという感じ。
ま、リプレイを始めた当初は、「弱っちいPCでもカードワースの荒波を乗り越えられる」が裏テーマだったので、これで正しいのですが。

今回はギルにとても悲しい目にあわせてしまいましたので、次回は爽やかな楽しいシナリオをプレイしたいと思います。くもつさんとの約束もあるしね・・・。(ぼそり)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/03/05 01:23 [edit]

category: 丘の上の洋館後編

tb: --   cm: 6

コメント

かなり長いシナリオだったようで、お疲れ様です。前半がほのぼのしているだけに、後半の展開が引き立ちますね。エアリが可愛らしいだけになおさら・・・。
そして長いと日記にすると大変ですよね(笑)僕も大分先の話になると思いますが、竜殺しの墓とかどうしようと思ってます(苦笑)

キャラの能力なんですが、適正白丸とかって普通に作ってできるものなんでしょうか。せいぜい適正90%くらいが関の山な気がするんですが。
やり方がわかってる方はあらかじめそういう風に作るんですかねえ。
実際こちらではエレインよりフィオラの方が回復スキルの適正が高いものがあったりして苦笑いする事があります(笑)

まあ強さがどうこうなゲームでもないので、好きなキャラに好きなスキルを持たせるのが一番ですよね。

URL | 天河 #- | 2013/03/05 02:06 | edit

コメントありがとうございます!

お疲れ様ありがとうございます。
そう、エアリが可愛いと思えば思うほど、後編の重さがのしかかってくる感じです。
竜殺しの墓、名作ですよね!賢者の選択もそうでしたが、シビアな傑作ほど長い・・・。途中経過をどっか省いて、PCに説明させて終わりとかダメですかね(笑)

適性白丸は、やろうと思えばできるはずです。私も昔、作った事あるので・・・どこぞのサイトさんなんかで、能力値のどこを伸ばしたければ特性はこれを取れってあるんですけど、天河さんの仰るとおり、好きなキャラに好きなスキル持たせるのがプレイヤーも楽しめると思います(笑)

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/03/05 06:42 | edit

おわー、次はあれがくるのかなー、わくわく!

またまた長編お疲れさまです。プレイ済でしたが、だいぶ前のプレイだったもので本筋忘れてて、うるっときてしまいました。

悲しい目に遭ったギルには揚げじゃがを奢ってあげよう。エディンさんにツケておいてください。(書き置き)

URL | くもつ #tnWn14Gw | 2013/03/05 19:44 | edit

コメントありがとうございます♪

親父「おい。くもつ亭さんから領収書きてたから、ツケに足しておいたぞ」
エディン「はあぁあ!?」
ギル「揚げじゃがうまーい」
エセル「ほら、やっぱりジャガイモ最高」

アレをやる前に一度小話を挟みますが、それが済んだらいよいよ、くもつさんのお好きな爽やかで素敵なアイツのご登場ですよ・・・!

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/03/05 21:35 | edit

前編の流れがあるからこそ後半の展開が際立ちますね。
以前の「命を無くした話」の一人旅でギルが結構クールな対応だったので、
今回の取り乱しぶりが新鮮に感じました。

人によってはPC用として能力調整したNPCを連れ込むシナリオを自作する、というケースもあるみたいです。
望みの能力値、性格にできるというメリットはありますが、とにかく時間がかかるのが難点だったりします。
以前の本体のverだとそこまでしなくても白丸結構出たんですけどね…。

URL | 堀内 #wKzDXcEY | 2013/03/06 12:39 | edit

コメントありがとうございます

堀内さん、いつもコメントありがとうございます。
そうなんです、前編がふわっと楽しいからこその・・・この落差がなんとも言えません。
「命を失くした話」の時は、予め依頼されていた麻薬事件だったのでクールでしたが、今回は、仕事とは何の関係もないところで出会った子どもの命が散ってしまったので・・・。
アレクで前編プレイするか悩みましたが、アレクの場合はトールが茶々入れするし、子どもの扱いにギルほど慣れている様子が無いので諦めました。

自作シナリオで連れ込みは、確か「マンボウは孤独の異邦人」さんで説明をなさってましたね。キャストのみならず、スキルの作り方まで丁寧にお書きになってたので、あれを見ながらならどうにか作れるかもですが・・・。
正直、リプレイをここまで重ねると、ギルたちはこれでいいかな~という気もします。特殊型が一人出ただけでもありがたいので・・・。(笑)

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/03/06 17:26 | edit

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