Fri.

満腹食堂の大戦 4  

 その後も、出てくるモンスターを大した被害なく退けて進んでいくと・・・・・・。

「あ、あれは!?」

 叫んだモルヴァンが指す。
 倒したガーゴイルの影から、明かりが漏れているのだ。
 呆れたような顔でエディンが前髪をかきあげる。

「本当にあったのか・・・」
「スライド式の隠し扉か。見ろ!店名が彫ってある!」

ScreenShot_20130301_024153062.png

 看板と思しき真っ赤なワインのボトルと小さなグラスの絵の下に、店名がある。

「『満腹食堂』、確かに。しかし、粗末な書き方だな」

 エディンは書かれている文字を読み上げて言った。
 文字の粗末さも気になるところながら、何より看板がそう古いものではないことがエディンの気に入らない。
 盗賊ギルドの狐連中(詐欺師たちの隠語)だって、もうちょっとまともな装飾を凝らすだろうと彼は思った。
 一応、先に進み出て罠や鍵の様子を調べるも、そこに仕掛けはない様子に見える。
 勝手に感じ入って、「まさに穴場だ」と鼻を膨らませるモルヴァンを尻目に、ギルが仲間達に大した怪我のないことを確認してから口を開く。

「まあ、今更、引き返してもしかたがない。熟練の勘を信じるさ」
「アンタがそう言うんじゃ、仕方ないわね。ただ用心は忘れないでよ」
「うむ、甘美と幻惑の世界へいざゆかん!」
「・・・・・・あたしの話聞いてないでしょう、アンタ」

 ジト目になったジーニが杖の髑髏でモルヴァンの鉄のすね当てを叩いたが、彼に堪えた様子はない。
 十分に用心してスライドドアをずらすと、そこにはオークたちが食べ物を食い荒らす現場があった。
 辺りには蛇らしい肉、茸、腐りかけの牛肉の塊などがある。

「・・・ここが?」

 眉根を寄せて麗貌をしかめるアレクの後ろから覗き込んだモルヴァンが、

「・・・イメージと違うな」

と口をへの字に曲げている。
 そして、さらに呆気にとられることに、中央に座っているオークロードへとずかずか突き進んでいく。

「え、え!?ちょっとモルヴァン?」
「(むしゃむしゃ)むぅ~、ぶひひ」
「・・・食事中だな。ん?俺たちも遠慮せず食べろ?」
「・・・わかるのか?」

 まさかと思ってアレクが訊ねてみると、モルヴァンはこともなげに言った。

ScreenShot_20130301_025354703.png

「昔、ちょっと、オークの集落をだな・・・」
「・・・もういい」

 聞いた自分が馬鹿だったと、アレクはがっくり肩を落とした。
 そんなわけの分からない会話を交わしている大人たちを放置して、ミナスは奥にある扉がひたすら気になっていた。
 鍵が掛かっている様子はないものの、その向こうに誰かがいる気配がさっきからしているのである。
 しかし、その扉に視線を向けていると、モルヴァンと話しているのと別のオークたちが、ミナスの一挙手一投足を注視していることに気づいた。
 この扉に手をかければ――。

(襲ってくるってことかな。・・・でもこの向こうにいるのって、何か・・・。)

 その時、扉から、美しい女性とインプが現れた!

「む、あのインプは!」
「きひひひ、満腹食堂へようこそ!」

 モルヴァンに対していやらしげな笑みを向けたインプは、そう言い放った。
 インプを肩に乗せてる女性は、見た目20代前半といったとこだろうか――。しかし、年不相応の怜悧さと狡猾さが、その翡翠のような目に潜んでいる事に”金狼の牙”たちは気づいている。
 彼女はしみじみといった口調で、「普通、来ないよね・・・」と洩らした。
 エディンが進み出て訊ねる。

「・・・あんた、誰だい?ただもんじゃないのは、俺にもわかるがね」
「ふむ・・・じゃあ、ここで種明かしとしましょうか」

 女は真相を語り始めた。
 半月ほど前・・・。

『じゃあ、ウルシュ様、行ってまいります』
『ん。触媒買ったら、道草せずに帰ってくるように』
『はい。・・・でも、今回、魔道書などは、本当によろしいのですか?』

 心配そうなインプに、ウルシュという名の魔女は先立つものがないと残念そうに手を広げて言った。
 最近では、すでにこの洞窟に迷い込んでくる冒険者も少なくなってきている。
 魔道書を置くような店は、えして魔法による警報などで護られており、インプが黙って盗み出す、なんて真似は決して出来ない為、ウルシュといえども真っ当に代価を払って買い上げる以外に、本を手に入れる道はないのだ。
 そんな女主人に対して、インプは自分に考えがあると打ち明けたという。
 インプ仲間から聞き出した、とあるちょっと間抜けた感じの冒険者の話を・・・・・・。
 数日後、インプは戻ってきた。

『うけけけけ、上手くいきました。かくかくしかじか・・・』

「おのれ、そういうことかッ!」
「はあ、なるほど。モルヴァンの助けたインプから彼のことを聞いて、御礼と称し、人の寄り付かなくなったこの洞窟にまんまと招待したと」
「食堂は全くのデマ。ついでに、モルヴァンが連れてきた護衛や仲間でもいれば、奪う金品が多くなるってえ目論見か」

 アウロラとエディンが据わった目で解説をするのに頷きつつ、ウルシュは妙に感心した声で言った。

「・・・それでも、普通、やっぱり、来ないわよね・・・」
「確かに・・・」

 ギルが同意する。
 拍子抜けしたようなウルシュは、やりづらいわねえと零しつつも、

「・・・まあいいか。炎の玉でこんがり焼いて、オークたちのエサにしてあげる」

とのたまった。
 歓声を上げる魔物たち。

「炎の玉って・・・、ハイリスク・ローリターン・・・モルヴァンッッッ!!」

 ジーニは自分よりもはるかに強い魔力を感じて、モルヴァンの名前をやけくそ気味に叫んだ。

「・・・良かろう!報酬は二倍だッッッ!!」

 涙を流しつつモルヴァンが応じると、魔女はインプとオークを従えて襲い掛かってきた。

2013/03/01 22:02 [edit]

category: 満腹食堂の大戦

tb: --   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top