Fri.

満腹食堂の大戦 2  

 ――さて2日の旅が終わり、準備を整えた冒険者たちは、指定の場所にある洞窟へと入った。
 周りの壁こそ自然洞窟剥き出しのままであったが、床は古い石材が整然と並んでいる。
 ただ気になるのは、食堂があると銘打っている割に、全くそれらしい料理の芳香はおろか、客のいる気配そのものがないことだった。

「・・・あんまり、食堂があるって雰囲気じゃないようなんだが・・・」
「だよなあ」

 アレクのつぶやきにギルも頷く。
 首をめぐらすと、一応は明かりを確保してくれているらしく、燭台がぽつりぽつりと設置されて頼りない灯火を揺らしている。
 ミナスが不安げにモルヴァンを見上げた。

「ねえ、モルヴァンさん。本当に大丈夫なの?」

 モルヴァンが「まあまあ、こういうのは奥のほうにあるものだ」と笑って、二手に分かれた道のうち、無作為に東の通路を選ぶ。

「・・・・・・!避けろ!」

 エディンの叫びに全員が飛びのく。
 そのまま進んでいれば、間違いなく頭に覆いかぶさっていたであろう位置に落ちてきたのは、なんとも不快な臭いを放つ腐肉の塊だった。

「げー。なんじゃこら!」

ScreenShot_20130301_014420750.png

「こいつは魔術師の召喚実験の失敗から生まれる化け物だ!」

 ≪護光の戦斧≫で払いながらグロテスクな外見に慄くギルの疑問に、間髪いれずモルヴァンが答えた。
 アウロラが【信守の障壁】を張りながら眉をひそめる。

「近くに魔術師がいる?」

 多分な、と首肯したモルヴァンが更に声を張り上げた。

「強力な回復能力のある奴だ。動きが止まっても油断するな!」
「了解っ!」

 速攻でしとめるが吉と考えたジーニが、そのアドバイスを受けて、よく手入れされたベルトポーチから【災いの薬瓶】をつかみ出す。
 滑るように進み出て斬撃を浴びせたモルヴァンが、酸を含んだ触手の攻撃を避けながら己の経験談を続けた。

「俺は、こいつらを切りつづけて、筋肉痛で3日間起きられなくなったことがある!」
「・・・おいおい」

 冗談じゃない、とジーニは背中に冷や汗を掻いた。
 そんなに戦い続けるスタミナは、あいにくと彼女自身にはない。ぜひとも勘弁していただきたい。
 しかしその心配は杞憂だったらしい。
 ナパイアスの激流で壁に押し付けられた敵を、他の仲間たちが渾身の力を込めて斬りつけ、あるいは魔法を浴びせる。
 最後に、ミスリルレイピアによって床に縫いとめられた敵をジーニの【魔法の矢】が貫いて、化け物たちが駆逐された。
 絡まっている腐肉を、ぶん!!と刀身を振り下ろして取り除いたアレクが、

「ぜったい、魔術師の罠・・・」

とぼそりとつぶやいた。
 横に立ったモルヴァンが唸りながら口ひげを捻る。

「妙な事になりそうだな」
(というか、この依頼自体がもうすでに妙だったんですが・・・。)

 アウロラは口に出すことはしなかったものの、小さくため息をつかずにはいられなかった。
 その後、バンシーとグールがうろつく通路を突破しつつ進むと、彼らは黒檀の古い扉の前に出た。
 敵のバックアタックをアレクとミナスに警戒させ、扉の前の床や壁、扉自体の様子を念入りにエディンが調べ上げる。

「罠はねえな。開けるからちょっとどいてろよ・・・」

 軋みを上げた扉を開くと、そこは驚くほど広い部屋であった。
 部屋の一番隅には、金の十字架を掲げた祭壇が設けられている。

ScreenShot_20130301_015737875.png

 祭壇は部屋に比べて古くないな、とジーニは推察した。
 魔法のような気配は感じられるがごく僅かなものであり、脅威となり得るもののようには思えない。
 その結果を伝えられてから、部屋そのものにも罠がないことを確認し、彼らはぞろぞろと祭壇へ近づいていった。
 アウロラがじっと祭壇を観察する。

「思ったより痛んでいませんね」
「ああ。しかし、これは一体なんだ・・・?」

 龍鱗鎧に包まれたアレクの腕が、そっと祭壇のシンボルに触れる。

 ――ドクン。
 ―――ドクン。
 ――――ドクン!!

「え・・・・・・?」
「どうした、アレク?」

 脈打つ気配に小さく声をあげた幼馴染に、ギルが心配して声をかけたその時。
 金の十字架は何の前触れもなく砕け散った。

2013/03/01 21:57 [edit]

category: 満腹食堂の大戦

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