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満腹食堂の大戦 1  

 いつものように壁に貼られた依頼書を眺めていて、ふとアレクは視線を止めた。
 仲間達はといえば、娘さんやエセルに、この間希望の都で引き受けたフォレスト・ジャイアントという巨人退治について話している。
 あの巨人退治の時は、一時、薙ぎ倒しでほとんどが気絶してやばかった・・・と回想しながらも、アレクの目はきちんと依頼書の文字を追っていた。

「・・・満腹食堂?」

 そこには、『我、危険と甘美の香り漂う”満腹食堂”からの招待状を入手。モンスターの出没地なれば、護衛として十分な活躍を期待する。』とある。
 下のほうにこじんまりと書かれた追記には、遠方の森へ全工程五日ともあった。
 依頼人の書名の欄には、”モルヴァン”とある。
 何回熟読してみても意味が分からず、結局アレクは親父さんを呼んだ。

「親父さん、この貼り紙は一体なんだ?」

 宿の親父さんはアレクのほうを見やり、軽く肩をすくめる。

「モルヴァンか。引退してからも、ちょくちょく出かけて行くな。落ち着かん男だ」

 それを聞いたウェイトレスのエセルが、宿の娘さんに「どんな人?」と聞いている。

ScreenShot_20130225_000156046.png

「あの人、面白い人です」
「ああ、モルヴァンね・・・」

 エディンが疲れたように、片肘をカウンターについて説明を始めた。この盗賊は冒険者を始める前に、盗賊ギルドと冒険者の店の連絡役もこなしていたので、モルヴァンとは比較的旧知の仲といえる。
 古株の多い≪狼の隠れ家≫の面子の中でも、運が悪いというかタイミングが良くないというか、とにかくちょっとした失敗に見舞われることの多い元冒険者である。
 モルヴァン本人はそう悪いヤツじゃないのだが・・・と、エディンがため息をつくのとほとんど同時、すぐに≪狼の隠れ家≫の入り口からドアの軋む音と、重々しい甲冑の音が鳴った。
 入ってきたのは壮年をそろそろ通り越したくらいの男性である。口ひげを蓄えた逞しい体躯の戦士だった。
 親父さんは親しげに彼に口を開いた。彼が問題の人物らしい。

「ちょうどいい、今、おまえさんの依頼をこいつらが話していたところだ」
「ああ、そいつなら、報酬は銀貨200枚出そう」
「うーん」

 ギルは困ったように頭を掻いた。ギル自身はさほど報酬が安かろうが高かろうが気にはしないのだが、若干名契約にうるさい人間がいる。
 その最筆頭であるジーニが、「やすっ」と言って依頼書を新たに覗き込んだ。

「はー?食堂への護衛?」
「受けてくれるか!いや、じつは・・・夜道で見知らぬインプが、ダンジョンの中にある食堂への招待状をくれたんだ」

 エディンは遠い目をして思った。事情を聞いてから断ると、違約金はいくらが相場だろうと・・・。
 そんな知り合いの反応に気づいたか、モルヴァンは「まあまあ」と宥めるように両手を挙げた。

「俺は昔、インプの依頼を受けて、奴らの集落をひとつ救った事があるんだ。そいつらの知り合いか、と聞いたら、『そうだ』と言うんだ」

ScreenShot_20130225_001701765.png

「・・・にやにや笑いながら?」

 ミナスは眉間に皺を寄せて訊いた。
 小悪魔であるインプは彼らも出会ったことはあるのだが、どうにも小細工の好きなにやついたチビ、という印象が拭えないし、またそれが一般的な意見であった。

「やつらの地顔だからなぁ」

 モルヴァンの台詞に、娘さんがくすくすと笑い始めている。
 いきさつを一緒に聞いていた親父さんが、そこで茶々を入れた。

「お前さん、その時はしらふだったんだろうな」
「いや、少々入っていたが・・・幻覚を見るほどじゃない」
「・・・。罠の可能性が残るのは確かだな」

 リーダーらしくギルが言う。
 すると怒る素振りもなくモルヴァンが応えた。

「疑ってないわけじゃない。好奇心も理由の一つだ。だが、罠にしては見え見えすぎる事と、それに」
「それに?」
「グルメは嫌いか?」

 最初に依頼書を見つけていたアレクが、顎に手を当てて言った。

「・・・それはあるか。だが、単なる護衛で終わらない時は追加の報酬をいただきたい」
「うむ。罠だったら、報酬は倍だそう」
「・・・・・・まあ、熟練冒険者の勘を信じてみようかしらね。美味しいご飯が食べれるってのは興味あるし」

 ジーニがつぶやくと、他に反対する者も――エディンは本当に後悔しないんだな?とだけギルに繰り返し聞いているが、それは黙殺された――いなかった。

「ありがたい!明朝出発でいいか?」
「了解」

 こくりとミナスが頷く。”金狼の牙”のメンバーはつい先ごろまでフォーチュン=ベルにいたので、1日置いてくれるのは嬉しい。
 その日は、必要な道具や保存食を買い足し――使い魔研究家の所からサイズ直しを頼んでいたギルの≪鉄の鎧≫を引き取ったり、ジーニの伝手から≪カナンの鎧≫と交換で古代の賢者のローブを貰ったり――して過ごす。
 翌日に”金狼の牙”たちは、モルヴァンとともにインプに教えられた場所へと向かった。


2013/03/01 21:55 [edit]

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