Tue.

最後の最後に笑う者 5  

 闘いは鮮烈を極めたが、ジョーンズの放ってきた火晶石の爆発をどうにかこらえると、ギルとアレクはそれぞれ対多数用の技を放ちつつ、合間を見て一番動きの鈍いオリストデルに攻撃を繰り返した。

「スネグーロチカ、ナパイアス!あの片目の男にぶつかって!」
『任せて!』
『お返ししてやるよ!!』

 雪と水の吹きすさぶ中を、エディンがジーニの援護を受けながら毒師の女へレイピアを突き立てる。
 毒師も抵抗するものの、持っていた短剣を≪スワローナイフ≫の護拳の部分で叩き落されてしまった。

「ジョーンズ、オリストデルが・・・・・・!あう!」
「何ィ!?」
「グ・・・・・・ぬかった、わ・・・」

 オリストデルの鎧に包まれた体が地に落ち、その向こうに斧を構えたギルが立っていた。

「【暴風の轟刃】の味はどうだ、クソジジイ。あの世で後悔しやがれってんだ!」
「皆さん、一気に癒しますよ・・・・・・!」

 アウロラによる【癒身の結界】が”金狼の牙”たちを包み込み、圧倒的不利だったはずのギルたちがたちまち優勢を取り戻す。
 最後に、スネグーロチカによって吹き飛ばされる前にジョーンズが放った傷薬で、再びオリストデルが目を覚ましたものの、彼が体勢を整えないうちに、躍り込んだアレクの≪黙示録の剣≫がその体を横薙ぎにして吹き飛ばした。

ScreenShot_20130224_010456609.png

「へ、へへ・・・、強い、ねぇ・・・」
「あの世に行く覚悟は出来たか」

 一歩、ギルが足を踏み出そうとするのをエディンが止めるのと、ジョーンズが「奥の手だ」と言って何かを取り出したのは同時であった。
 その手にあるのが何かの呪文書(スクロール)と見るや、彼は既に合言葉を唱えている。

「帰還の法!!!」

 煙がごとく消えうせた3人のいたあとを見つめながら、ミナスがつぶやいた。

「まさかあいつも帰還の法を使えるとはね・・・・・・」
「まあ、逃げられはしたが、勝者は魔器を手に入れた俺達で間違いねぇよ」
「うん・・・。これで後一つだね」

 一行は森を抜け、もう一つの目的である北へと向かった。
 しかし、どうしても塔らしきものが見つからない。

「しまったわね・・・あんまり時間をかけるとボーナスに差し障りも出てくるわよ」
「うーん・・・先に飛行樹を退治するか」

 島の西南には、悪魔の翼をつけて飛び回っている樹のモンスターがいる。一度遠くから発見した時は、見つからないようそっと離れて事なきを得たが、いつかは戦わなくてはならない相手である。
 幸い、途中でアイトリー一行から飛行樹と戦う時のヒントを得ている。
 アレクが遠距離攻撃である【飛礫の斧】を、ジーニが指摘した翼のある背中の辺りを狙って放った。

「上手いこといってる・・・!」
「本当にあれがエントとか、信じられないなあ・・・」

 スネグーロチカをぶつけながらミナスがぼやく。彼の知る森の樹は、もっと優しい存在であった。
 空飛ぶ樹は、エディンのとどめの一撃を受け、大地へまっさかさまに落ちた。

「ようやく全部揃えたな。後はあの悪魔に渡すだけだ」
「アロヴァさんの冒険者達の動向は気になる所だけどね」

 ギルが息をついたのに、ミナスが被せるように言った。
 小さくギルが頷く。

「奴らの事だ。どこかで必ず魔器を狙ってくるに違いない。そこが好機だ。返り討ちにしてとどめを刺す!」

ScreenShot_20130224_013101968.png

 ギルは右手の握りこぶしを左の手の平に勢いよく叩きつけた。

「塔の呪文が未完成かもしれない可能性が高いのは気になりますが・・・」
「そうだな。しかし、あまりもたもたしてるとミナスの言うアロヴァの冒険者達も、何かを仕掛ける時間が増えるということだ」

 アレクがそう言うと、渋々アウロラは頷いた。

「行こうか。悪魔が俺達を待っている」

 冒険者たちは半日の休憩を取って体と心を癒した。そして自らの心を奮い立たせ、悪魔の棲む摩天楼へと向かう事にした。

「・・・・・・しっ」

 急に前を歩いていたエディンがしゃがみこみ、自分たちも踏み荒らした記憶の新しい、碁盤の目の洞窟の床を調べ始める。
 訝しげにジーニが彼の名を呼ぶと、エディンはいつになく厳しい目で前方を睨み付けた。

「・・・誰かがあの騒ぎの後にここに来た。ジョーンズの奴らかもしれねえ。まったく見慣れない足跡だ」
「ってことは、悪魔の洞窟の前に陣取ってるってこかしら?」
「その可能性はある。リーダー、ここから先はちゃんと準備してからの方が良さそうだぜ」
「ありがとうエディン。ミナス、アウロラ、魔法頼む」
「うん」
「分かりました」

 アウロラの【祝福】による光のベールが冒険者達の士気を上げ、更に放たれた【信守の障壁】が不可視のシールドを形成する。
 すっかりお馴染みになったミナスの【蛙の迷彩】が一行の姿を周囲の風景と同化させた。

「ギルバート、こっちも風の召喚魔法は唱え終わったわ」
「よし、みんな。気合入れてくぞ!」
「おう!!」

 冒険者たちは歯を噛み締め、下腹に力を入れつつ洞窟の出口をくぐり、山に向かっていった。

2013/02/26 20:46 [edit]

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