Tue.

最後の最後に笑う者 4  

 悪魔の目は漆黒。見たもの全てを虜にする魔眼。
 悪魔の牙は白。何物も・・・それこそ魔力をも断つ事の出来る牙。
 悪魔の翼は手の進化した物。一振りで木っ端な存在を消し飛ばす威力。 
 それらは使うごとに魔力を消耗するため、人間のように魔力が弱いものなら体力を代わりに吸い取るだろう・・・とヴィンディバックスは説明した。

「まず悪魔の目玉は見つけたからいいものの・・・・・・。猿が持ってるってどうだよ、オイ」
「けだもののくせに人様に逆らおうと言うの?追うわよ、エディ!」

 悪魔の漆黒の目を首からペンダントのようにかけている猿の身ごなしは、驚くほど早い。
 ”金狼の牙”で一番素早いはずのミナスが本気で走っても、到底追いつけないのだ。
 鎧の重さに振り回されているギルが叫ぶ。

「待てコラ猿もどき!止まらないと鍋の具にすんぞ!!」
「・・・ねえ。落ち着いて考えてみるとさあ。逃げ場の多いこの洞窟ですばしこい猿を捕まえるのは難しいんじゃないの?」
「だけど、捕まえなくては話にならないよ」

 ミナスのもっともな意見に、ジーニは楕円を描くように杖を振り回しながら言った。

「やみくもに追うのではなく通路に誰かが待ち伏せして追い詰めるようにするのよ」
「なるほど・・・・・・」

 感心したようにエディンが頷く。

「さっきも言ったでしょ?この洞窟はちょうど碁盤の目のようになってるの。それを踏まえて要所にあたしたちの誰かが待ち伏せすればいいのよ」
「いい案だな。ただ、最後に猿を追い詰める奴には、接近戦のできる奴じゃないと取り押さえられそうにない」
「そこはほら。前衛に任せるって事で」
「だと思ったよ。ヘイヘイ、やりますよ」

 ”金狼の牙”たちは途中でアイトリー一行とも合流し、彼らに手伝ってもらって無事に猿を追い詰めた。
 そして、この間の依頼で依頼主から貰ったスチームドッグ≪スチーノ≫の呪縛によって体の動きを奪われた猿はバランスを崩し、地面に倒れこんだのであった。

ScreenShot_20130224_000001390.png

 その拍子に猿の胸元で鈍く光っていた悪魔の目玉が足元に転がり込んできたのを、近くで見張っていたジーニがそっと拾い上げる。

「ま、あたしにかかればこんな仕事は赤子の手をひねるようなものね」
「お前さん、いい性格してるよマジで」
「これであと二つだね!」

 アイトリーたちが複雑そうな表情でこちらを眺めるのに、シュタッとジーニが手を挙げた。

「一応お礼は言っておくわ。ありがとう」
「それほど大した事もしていませんよ。それに皆さんに協力すれば、より早く祖父の宝も手に入るわけですから」

 アイトリーはそこで話を切り、いったん洞窟の出口の方面を向いた後、再び話しかけた。

「それでは僕たちはこれで別行動に移ります。お互い頑張りましょう」
「・・・・・・本当に、いい子ですよねえ」
「ああ、俺たちの以下略」

 アウロラとアレクがしみじみといった調子で言うのに、ギルは苦笑いした。

「おいおい。まだまだ先は長いんだから頼むぜ」

 ――途中、またもや古代語の書かれた塔を見つけた一行は、少々腰を据えて考え始めた。

「なあ。あの悪魔が言ってたろ、海賊王が自分を封印したって」
「ああ、自縛の結界を張ったとか・・・言ってたな。それがどうしたんだ、ギル?」
「それってこれじゃねえの?」

 他の仲間たちはリーダーの言い出したことを脳内で咀嚼し、ばっと同時に塔を見やった。そこには、『今こそ風の海原、凪ぎ静まれ』と書いてある事を解読済みである。

「・・・そうだとすると、これと同じものがあと2つはあると見ていいわね。多くて4つかな?」
「どうして、ジーニ?」
「ええとね。こういう封印に関わる物体ってのは、大抵法則性を決めて設置してあるわけ。ある時は地鎮によく使われる東西南北、ある時は”安定”を示す六芒星だったりね」

 そういった魔道でよく扱われる象徴を結界に組み込むことにより、自分よりも大きい存在を封じることが出来ることがあるらしい。

「後は触媒が必要だったり、土地の持つ神聖性が必要だったりするけどね。ま、そんなとこよ」
「この狭くて歪な形の島に、六芒星を描くほどのスペースがあるとは思えんな」
「そうねー。東西南北であたりをつけても良いんじゃない?」
「じゃあ、塔を見つけつつ、悪魔のパーツも探すってことでいいよな、みんな?」

 ギルの決定に全員が頷いた。あの恐ろしい魔力を持った悪魔相手に、素のまま戦いを挑むのは分が悪すぎる。ならば、策を練るのは当然の事であった。
 そして崖を渡り、東の塔を見つけた一行は森に入った。北にあるはずの塔に向かうには、どうしてもここを通らねばならぬ。
 夜が明けて空が白んでいく中、森の中である地点を通りかかった時、妙に空気が重苦しく感じられ、肌に小さな針を刺すようなピリピリとした気を感じた。

「・・・ん?」

 ジーニは先程回収した悪魔の目を使い、周囲を【魔力感知】した。
 すると、所狭しと茂っている木々の間から溢れかえる魔力の光がジーニの目を焼く。

「この部分の木々は幻術よ!」
「なるほど、幻で悪魔のパーツを隠したのか・・・!」

 アレクがはっと気づいたのにジーニが同意する。

「この術さえ解ければ・・・」
「ん?あんた達。どうしたね?こんな所で立ち止まって」

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 右目は恐らく刃物で傷つけられたのであろう、残った左目をやぶ睨みにした男が、幻術の木々の向こうから細い体を現して言った。
 じろりとそっちを黙って見やったエディンだったが、その背中には冷や汗が流れていた。

(畜生、俺としたことが気配を感じなかっただと・・・・・・?)

「うさんくさい奴ね。そっちこそ何してるのよ。こんな島で」

 エディンの横に立ったジーニが問いかけるのに、男がふっと笑った。

「俺の名はジョーンズてんだ。ここには隠し財宝があるってんで探してるのさ。ところであんたら。見たところ何かが足りなくて困ってるようだが」

 男は自分が持ってるものなら割安でゆずってやろうか、と取り引きを持ちかけてきた。
 すっと懐から出したのはよくある呪文書(スクロール)であった。

「破魔の巻物さ。通常価格なら500spだが、無人島特別価格で1000spだ」
「足元見られてるわ・・・それならいらないわ。アンタなんかには頼まないわよ!」
「まあ、それもアリだな。探し当てるのにいつまでかかるか分からんが」
「いーえ、アンタとの会話がヒントになったからね。必要ないって分かったの」

 ジーニはそう言うとベルトポーチから薬瓶を取り出し、先程幻だと見破った木々たちの方角へ投げつけた。破魔の力を込めた薬瓶である。
 ぶわっと幻術が破られるとき特有の光が放出される。

「うわっ・・・!」

 たまらずジョーンズという男までもが目を瞑り、再び開いた前には――一振りの剣があるじを待つかのごとく、木々に囲まれ、静かにたたずんでいた。
 震えるほどの魔力の放出。
 禍々しい異形の刀身。
 間違いなく、あの悪魔の持ち物だろう。
 冒険者達がその剣を手に入れようとしたその時、急に脱力感が襲ってきた。
 先ほど感じた空気の臭いが今では冒険者の体を支配し、ぴくりとでも動かす事すら困難になっている。

「ありがとう。礼を言うぞ。好敵手よ」
「ドワーフ・・・!?」

 奥の草むらから姿を現した背の低いごつい戦士を見て、ミナスが驚きの声を出す。
 土の妖精族とも言われるドワーフ、そしてその後ろに見知らぬ女が涙を流しながらよろりと立ち上がっている。

「相変わらずお主の毒はよく効くの。アンサティ」

 背中に異形の斧を担いだドワーフは冒険者達の状態を目で確認した後、かたわらの女性に賞賛の言葉を発した。

「・・・・・・。まずはジョーンズに解毒を施さないと」

 泣き顔を崩さない女性は、冒険者たちと同じように毒で倒れているジョーンズの傍らに座り、口移しに何かを飲ませた。
 ぐぎぎぎ、と音を立てるようにして顔を上げたジーニが唸る。

「ふ・・・、ふざけるんじゃないわよ。あんたら、なんなのよ・・・」
「そういえば、自己紹介がまだじゃったかの。わしの名はオリストデル。滅鉞の戦士じゃ。横の女は毒師アンサティ。そしてこのちんぴらジョーンズ・・・・・・は、知っておるかの」

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 ドワーフはにたりと笑った。

「主らにはアロヴァ側の冒険者達と言った方が分かりやすいかの」

 豊かに蓄えたひげの奥でクククと低く笑う。
 後をつけて封印を解かせ、その成果を奪う。力も削げて一石二鳥だと説明するドワーフに、ギリギリとジーニは歯軋りした。
 卑怯者と罵ると、心外だというようにドワーフが言った。

「ならばおぬしらに機会を与えよう。わしらと闘い、勝って見せよ。わしらに勝てればおとなしく引こうではないか」
「ハッ!相手を毒で罠に嵌めて勝って見せろ?ずいぶん勝手な言い草ね!」
「わしらとしてはこのまま剣を取って去っても良いのだがの」
「・・・・・・・・・言ったな、クソジジイ。その言葉、後悔するんじゃねえぞ」

 ごり、と金に輝く斧を杖にしてギルが立ち上がる。

「あんまり、俺の仲間たちを舐めるんじゃねえ・・・・・・!」
「まったくよ」

 ジーニも無理やり≪死霊術士の杖≫を支えに立つ。

「あたしをここまでこけにしてくれてただで済むと思ってるの?思い知らせてやるわ!」

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「それでいい。行くぞ、”金狼の牙”!」

2013/02/26 20:39 [edit]

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