Tue.

最後の最後に笑う者 2  

 リテルナたちを退けた後、”金狼の牙”たちは小島へと≪エア・ウォーカー≫の助けを借りて渡っていた。
 小島の東側には塔が立っており、雨風にさらされて非常に読みづらくなっているが、壁面に何らかの文字が書かれているようだ。

「なんだこれ?」
「ふふん・・・・・・。これ、古代語ね」

ScreenShot_20130223_211913796.png

 ジーニがそう言うと、本格的に解読に入った。

「空を駆る乙女、天を斬る魔人。・・・・・・と書かれているけど、それが何を指すのかはさすがのあたしも分からないわ」
「とりあえず覚えておきましょう」

 そして一行は島の方に戻り、特有の魔獣をたまに退治しながら休憩地を探した。

「ここなら視界もいい。怪物に襲われずに休憩できるだろう」

 エディンがそう太鼓判を押した時には、すでに周りは陽が暮れ始めていた。
 島の雰囲気が急に変わり妙な気配が辺りを漂ってくる。
 ”金狼の牙”たちは道すがら集めてきた枯れ枝で火を熾し、少し張り出している枝をロープで引っ張り屋根にする。
 川でアレクとミナスが釣った魚の鱗をはがし終えたアウロラが、ふと視線を上げて一方向を眺めやった。
 それに気づいたギルが、焚き火を突付いていた手を止め呼びかける。

「どうした?」
「あの山・・・・・・妙に邪悪な気が流れているような気がするんです」
「山?」

 ギルも黒瞳を同じ方へと向ける。
 とは言っても、ギルには魔法の素養というものがない。彼女の言うところの「邪悪な気」を感じ取る事は出来なかった。
 聞きつけたジーニが、ふむと頬に手を当てて考え込んだ。

「・・・アウロラがそう言うってことは、本当に『あそこ』に何かがあるんじゃない?この島の雰囲気が急に変わったことといい、何かあるわよ、ここ」
「俺には分かんないんだけど・・・・・・。ミナスは?」
「んー。精霊が脅えてる気配はするかなあ」

 でも遠い場所の事だから、とミナスは付け加え、アウロラに魚に詰めるための香草を渡した。
 それを塩と一緒に裂いた魚の腹にすり込み、大きな葉に幾重にも包んで、熾き火に埋める。 

「無人島だけあって自然は豊かだよな、ここ」
「エディン。そっちの手に持ってるのは何ですか?」
「芋。リューンに出回ってるのより小ぶりだが、味は濃いと思う」

 何かに使ってくれと渡され、アウロラは眉根に皺を乗せてどう料理しようと悩んだ。
 ・・・・・・二時間後、香草焼きにした魚と、卵なしのニョッキを炙ったチーズに絡めたものが出来上がる。
 はふはふと熱がりつつ食べていると、ふとミナスが言い出した。

「何だか進んでいるという気がしないんだよね。目は覚めてるのに、夢の中歩いてるみたいで」
「お前ら、迷わないように気を引き締めていけよ」

 エディンが膝からずり落ちそうな皿を受け止めながら、他の面子に言った。彼もまた、そういう現実味のない感覚をこの島から感じ取っていた。
 その夜。
 独特の匂いが立ち込める中、焚き火の火を見つめながらアレクは見張り番を続けていた。
 ザッ・・・・・・という音と、生き物特有の息遣いが耳に届く。

「獣!?」

ScreenShot_20130223_215214656.png

 アレクが身構えつつ仲間を起こそうとした時、闇の中から人の声が聞こえてきた。

「すみません!怪我人がいるんです!誰か石化を治せる人はいませんか?」
「子供の声・・・?」

 石化であれば、僧侶であるアウロラはもちろん、ビボルダーによって石化された仲間を救ったミナスにも対処は出来るだろう。
 警戒は解かなかったものの、アレクはその声の主を招き入れた。

「分かった。こっちへ来い」
「あ、ありがとうございます!」

 草むらから出てきたのは、冒険者と思しき5人組だった。
 無頼風の男に背負われた人間の皮膚はすっかり石と化し、近くで彼を助ける女性が泣きそうな声を出している。

「しっかり!カディリン!あともう少しの辛抱よ!」
「降ろすぞ。そこ、どいてくれ」

 無頼風の男は、カディリンと呼ばれていた男を地面の空いているところにゆっくりと降ろした。
 僧侶らしい女がすぐに彼の側に走る。

「お願いです!彼の石化を治して下さい!あたし、【血清の法】を使い切らしちゃって・・・」

 アレクに起こされるまでもなく目を覚ましていた仲間の中から、アウロラが進み出てくる。

「【血清の法】はございませんが・・・大丈夫、安心なさい」

 そうして、つい先ごろ魔光都市という所で買い求めた≪水銀華茶≫というお茶の瓶を取り出す。
 コルクの栓を外した瞬間、ふわりと辺りに優しげな茶の香りが立ち込めた。

「飲んだものの束縛を解除しますが、確かこれには石化を治す力もあったはず・・・」

 中の緑色のお茶を振りかけると、まるで薄皮がはがれるように石の部分が零れ落ちていった。

「よし、これで大丈夫です」

ScreenShot_20130223_223308000.png

 石像から元に戻ったカディリンはこわばりはまだあるようだが、体が動く程度には回復したようだ。
 彼を気遣っていた女性がアウロラの手を取り、何度も何度もお礼の言葉を述べる。
 目には嬉し涙を浮かべている。

「あ、ありがとう!ありがとう!」
「いいえ、困った時はお互い様ですから。同じ神の子として当然のことをしたまでです」

 そうアウロラが首を横に振った時、後ろにいた品の良さそうな少年が進み出てきて、丁寧にお辞儀をした。

「ありがとうございます。僕の仲間を代表してお礼を申し上げます」
「もしや、あなたはエムルリス氏の・・・」
「はい、孫のアイトリーといいます。こっちは僕についてきてくれた仲間で・・・本当に何と言ったら良いか。ぜひともお礼をさせて下さい」

 その言葉を聞いて目を輝かせたのは、杖の髑髏の部分で自分の頭を掻いていたジーニである。 
 舌なめずりしそうな声で「さて・・・?」と言ったが、さすがにお互いの立場を分かっていたのであろう、常識的に情報提供を頼んだ。

「あんた達が知っているこの島についての事を教えてくれない?」
「分かりました。僕達が知っている事をお話しましょう」

 彼らによると、問題の冠の隠し場所について一番有望なのが、島の中央にある山――アウロラが懸念していた――辺りなのだという。
 しかし、登れそうなところを見つけることが出来ず、後回しにしてあちこちを放浪していた。
 その結果、毒の沼や夜行性の怪物との戦いに苦労し、うち一匹によってカディリンが石化させられた・・・ということらしい。

「色んな生き物がいますが、好戦的な生き物は限られているようです」
「・・・ということは夜歩き回るのは剣呑ねえ」
「はい、好戦的なのはほとんどが夜行性ですので、夜中に歩き回らない限り無闇に戦う事はないでしょう」

 聞くだけの情報を聞き出し、アイトリー一行は最後に一つ頭を下げるといずこかへと去っていった。

「・・・いい子ですねえ」
「だな」
「あの子が俺たちの雇い主じゃないのが残念だな」

 そして一行は3時間ほど休息を取り、山へと向かった。

2013/02/26 20:30 [edit]

category: 最後の最後に笑う者

tb: --   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

プロフィール

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

辺境に足を運んだ方の人数

▲Page top