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最後の最後に笑う者 1  

 海原を漂う事10日余り――――。ようやく冒険者は目的の島にたどり着いた。
 潮流などの原因で、大きな船が直接接岸するのは難しいので、近辺まで大きな船で運んでもらいそこから冒険者自身が小船で島へ上がる手はずだ。
 島を出る時には合図ののろしをあげて舟を呼ぶ手はずになっている。
 一月の間、のろしが上がらない場合――その時は一行が全滅したと見なし、船を引き上げ、そのまま帰還となる。

「ま、俺らが引き受けたんだから、そんなことは起きないわけだが」

 ギルは小船から島に足を下ろすと、背筋を伸ばして悠々と両腕を天に突き上げた。

「あー、やっと陸だ。肩凝った!」
「ちょっとー、ギルバート!こっち手伝って!」

 黒ローブの裾をどうにかさばきつつ、ジーニが杖を片手に小船から降りようとしている。
 ギルは「いけねっ」と小さく舌を出すと、ジーニの補助に回った。

「やれやれ・・・今回の仕事の目的まで忘れていないでしょうね、ギル?」
「遺産相続争いだろー。何とかって海賊に奪われた冠を取り戻すんだよな?」

 経済に明るいものなら一度は耳にしたであろう資産家、エムルリス。
 彼は現在、死の床に瀕している。
 そのエムルリス氏の心残りを解消した子か孫に対して、財産を譲るという宣言があったそうだ。

ScreenShot_20130223_185800093.png

 心残りとは――今は亡き妻のために取り寄せようとした冠を、海賊によって奪われた事である。

「それだけではありません。1ヶ月以内にその形見を、依頼人であるケノダインさんへお渡ししないと・・・」
「ジーニの交渉のお陰で特別ボーナス出るんだから、早めに見つけてえもんだぜ」
「海賊シェクザだっけ?有名な海賊なんだよね、どんな財宝あるのかな~。わくわくする!」

 エムルリスの三男にあたる依頼人から聞かされたのは、外海を中心に暴れまわった海賊の名前だった。
 主に商船を相手に略奪を繰り返し、その財宝は数百万spは下らないものという。
 一昔前の海賊狩りによる絞首刑でシェクザは既に故人となっているが、その隠し財宝があるのでは・・・とは、彼の伝説を知る者がよく口にする噂であった。
 ジーニに続いてアウロラ、エディンが降り立ち、二人でミナスが陸地に上がるのを手伝う。
 最後にトールを頭に乗せたアレクが小船から降りて、小船が流れて行かないようにロープを太い幹を持つ木にくくり付ける。

「ずっと船だったからな・・・。何か足がフラフラする」
「大丈夫でっせ、アレクはん。すぐ慣れますさかい」
「さーてと・・・みんな、ちょっと聞いて」

 ようやっと落ち着いたらしいジーニが、手を叩いてみんなの注意を引いた。

「安全に行くなら昼間だけ。時間を節約するなら夜も調査。ともかく無理は禁物よ」
「とは言っても、俺たち以外に雇われた冒険者や、相続人自身もこの島にいるんだろ?」
「はい。えーと、まず長女のリテルナさん。この方はご主人と水夫を連れて来ているそうです。それから長男のアロヴァさん、こちらは冒険者を雇っただけ」

 メモを取らずに丸ごと覚えたらしいアウロラが、アレクの疑問にすらすらと答える。

「最後に、次男の息子で唯一の孫であるアイトリーさん。この人は、次男の知り合いである冒険者と一緒にこちらに向かったそうです」
「ライバルが3グループか・・・ちょっとばかり厄介だな」
「闇雲に探すのはオススメできんよ、リーダー。シェクザほどの海賊なら、多分、おいそれと手を出せないようなところにヒントを準備しているはずだ」
「この島、とにかく広いもんね・・・。精霊はいっぱいいるみたいだけど」

 島の地図を覗き込み始めたギルの両隣を、エディンとミナスが挟んでいる。

「こっちが森、こっちが山で・・・こっちに小島があるのか。谷もあるんだな・・・。どこから行く、ギル?」
「んー。この小島気になるんだよなあ」
「なら行ってみるか」

 アレクとエディンが先頭に立ち、ミナス、ジーニと続いてアウロラとギルが最後尾を守って歩く。
 するとその途中。

「・・・・・・あれは?」

 アレクが不思議そうに見やった一団に、女性らしき人影が見える。
 それも、冒険者の身なりとは違い、いっそ場違いなほど豪奢な服に日傘姿であった。

「こんな島であんな格好する女、一人くらいっきゃいねえだろうよ」

 エディンがぼそりとつぶやくと、その女性は、

「何なの?汚らわしいわね。近づかないで頂戴」

と言った。

ScreenShot_20130223_210008984.png

 ”金狼の牙”たちを汚いものを見るかのように嫌悪感を示し――同時に、脇にいた水夫と思しき屈強の男達が、壁のように女性と冒険者との間に割って入ってきた。

「・・・パーティの女性率からすると、よっぽどあっちのがむさいわよね」
「しっ、ジーニ。何か言ってるみたいだよ、あの人たち」

 ミナスが示すとおり、ターバンを被った一人がそれは失礼だと女性を窘めているが、黙っていろと怒鳴り返されてしまっていた。
 彼女は胸を張り、腰に手を当て冒険者たちを見下すような目で名乗りを上げた。

「わたくしこそが真の遺産相続者、リテルナ=ワーフリクよ!」
「その台詞は宣戦布告と受け取っていいんだな?」

 にやりと笑ったギルがさりげなく立ち位置を変えるのも気づかず、リテルナはふぅとため息をつき目を細め、薄笑いを浮かべた。

「争い事は嫌いなのよね。大人しくあなた方が身を引いてくれれば痛い目には合わさないわよ」
「ふーん、へーえ。それはこっちの台詞よ。素人が粋がってると、生兵法じゃ済まないわよ。粋がれる内に島から出て行けば?」

 やはりというか、ジーニがやり返す。
 二人の女の間に、目には見えないはずのド派手な火花が散り・・・・・・・・・。

「服従か、死か。下賎の民はどちらを選ぶの?」
「墓石と遺書にはちゃんと署名してきたんでしょうね、高慢女?」
「・・・・・・やっておしまい!」
「・・・・・・叩き潰してやれ!」

 戦いのゴングが上がった。

「女ってこえー・・・・・・」
「まだまだ、本当の怖さはこんなもんじゃねーけどな」

 エディンがタハハ・・・と笑いながらギルに返した。
 ――――戦闘は、ギルとアレクが殴られただけで終わった。ちなみに、10分と掛かっていない。

ScreenShot_20130223_211316000.png

「逃げ足だけは速いな」
「まあ、あれだけお仕置きしましたし。もう私達の前には現れないでしょう」
「なら、いいが・・・」

 正直、もうあんな怖い女同士の戦いは見たくねえなというのが、ギルの正直な気持ちであった。

2013/02/26 20:26 [edit]

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