Sat.

爆弾仕掛けの番犬 3  

「ちょいと待ちな!」
「誰ですか!?」

 部屋に入ろうとするなりかかってきた覚えのない声に、アウロラは誰何した。
 Sサイクロプスの大きな身体の背後から、ひょっこりと金髪の女性が姿を現す。
 その動きやすさと黒っぽさに重点を置かれた服装はひどく個性的で、地味な緑色のスカーフの先を、鼻の下で結んだ様はさながら・・・・・・。

「・・・泥棒?」

 アウロラが呟く。

ScreenShot_20130221_014212609.png

「ど、泥棒・・・。って、もしかして私のゴーレムを盗んだのはあなた・・・?」
「やっぱり同業者か。しかもモグリの」

 半ば以上察していたエディンは、顎に手をやりながらしきりに頷いていた。

「いいか、あたいは大泥棒ナプル!キャシーお嬢さんに雇われてお前のゴーレムを盗んだ張本人!わーははは、どうだ恐れいったか」
(なにこいつ・・・)

 ギルはジト目で大泥棒を自称した女を見つめた。

「今までお前らをつけていたが、中々やるじゃないか。犬もゴブリンも助けるとはな。ま、今までがどうあれ、お前らはこの部屋で確実に敗れることになるだろうがな!」

 勝ち誇ったようなナプルの言に冷水を浴びせるように、エディンが言う。

「そうかい。俺もモグリを見つけたからには、ルーシーお嬢さんとこが保護下じゃないとはいえ、義理があるから見逃しはできそうにねえんだわ。・・・覚悟しな」
「・・・・・・ひとつ、言わせてください」

 モグリの盗みを盗賊ギルド構成員の前で告白しあまつさえ自慢する、という愚行に気づかずにいるナプルに、アウロラはエディンを目線で制しながら申し出てみた。

「あなたに用はないんです。キャシーさんを出してください」

ScreenShot_20130221_015130187.png

「そりゃ確かにあたいは、何の脈絡もなく登場したけどな・・・それにしたって言い様があるだろ!こっちだって立場ってものが――」
『あ~あ~・・・ごほん!ナプルさん、もうその辺で・・・』
「は、キャシーお嬢様。申し訳ありません・・・」
『ルーシー、よくここまで来たわね!でも、ここがあなたの墓場よ!このナプルは凄腕の盗賊でね・・・今度ばかりはそう簡単に爆弾を解除させないわ!』

 つい、とエディンが人差し指でブロックサインを描いた。一番先に打つべきはあのナプルであると。
 キャシーの言動からすると、恐らく解除をあの大泥棒とやらが妨害する手はずになっているのであろう。
 なら”金狼の牙”たちは、まずあの女性を無力化すればいいのだ。
 『さぁ、行きなさい!』と勢いよく叫んだキャシーの台詞を遮るように、彼らは一斉に走り出していた。

「そうら!どうだい、このナプル様に敵うもんかい!」

 アレクとエディンが思ったより大振りで攻撃してくるのを余裕で回避しながら、彼女は得意げに叫んでいた。
 しかし、その二人の攻撃は囮。本命は――――。

「はい、おあいにく様。こっちよ!」
「ちっ…!」

 ジーニが二人の作ってくれた隙を捉えて、【閂の薬瓶】をナプルに投げつける。
 見事にその薬瓶の液体に込められた魔法が発動する直前、ナプルは「こんなとこで捕まってたまるか!」と怒鳴り、キャシーの手筈らしい何かの巻物を使い一瞬でそこから姿を消した。

「ちぇっ、逃がしたか・・・」
「かまわねえよ、邪魔なのはいなくなったからな。ミナス、いけ!」
「うん、エディン!」

 解除ツールを抱えたミナスが、Sサイクロプスの吐き出す蒸気にむせながらも、無事その爆弾がむき出しになった背面に辿り着いて、爆弾を解除する。

「よし!外した!」
「やった!」

 残りの稼動しているウッドゴーレムたちも、経験を積んだ冒険者たちの連携の前にあえなく砕かれていった。

『くっ・・・ここまでやるとは・・・!正直、甘く見てたのは認めるわ。中央の部屋へいらっしゃい、私が相手してあげる!』

 事の推移を見守っていたらしいキャシーが悔しげに呻く。
 その台詞が終わるや否や、ルーシーは真剣な顔をして”金狼の牙”たちを見渡した。

「どうもありがとう。正直、この子を取り戻せるとは思わなかったわ」

 プロの(自称かもしれないが)妨害をかいくぐった上で、目的のゴーレムはまったくの無傷。
 ルーシーが感嘆するはずである。

「・・・待て、あの泥棒が何か落としていったみたいだ」

 エディンは部屋を出て行こうとする仲間を呼び止めると、床から鍵を拾い上げた。

「・・・メモついてるんだが。えー、『中央扉の鍵よ。これを使って早くここまで来なさい。コテンパンに叩きのめしてあげるわ』だと」
「なんか・・・このキャシーって人、ルーシーに構って欲しいようにも見えるんだけど・・・」

 エディンが読み上げたメモの内容に、ジーニが若干引きながら指摘をすると、ルーシーも鳥肌が立ったように身を震わせて囁いた。

「・・・・・・気持ち悪いこと言わないで」

 慰めるようにアレクが言う。

「・・・ま。まあ、ゴーレムたちは無事だったし。あの回復の魔法陣の部屋まで戻るか?」
「あの、ウッドゴーレムオンリーの部屋にあったやつですね。そうしましょうか」

 傷はすぐ癒えたのだが、”金狼の牙”たちはそれまで休まずに来たこともあり、部屋の中で交替で仮眠をとってゆっくり体力を回復した。

「外、もう夜が明けちゃってるよね。お夕飯までに≪狼の隠れ家≫へ着くかな?」
「運が悪いと過ぎちゃってるかもなあ。でもキャシーってヤツにそう時間はかからないと思うぜ」
「なんで?」

 きょとんとした表情でミナスはギルを見つめた。

「今までの言動見てりゃ分かる。あの女、今すごい焦らされてるだろうから、ルーシーが会いに来れば一も二もなく自己主張して構ってもらおうと頑張るさ」

 この仮眠タイムで散々に焦らされているから、登場にもったいぶったりはしないだろうし、あれこれ手筈を整えている理性もそろそろ擦り切れてきてるだろうからそう手こずることはない――というリーダーの予測を、ミナスは感心して聞き入った。

「それが心理的かけひきってやつ?」
「多分そう。でも、あんまり真似はすんなよ?」

 まるで、弟に自分の仕掛けた至高の悪戯を種明かしするような、ひどく子供めいた表情でギルが笑った。

2013/02/23 10:12 [edit]

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