Sat.

爆弾仕掛けの番犬 2  

 爆弾の解除をし終わり、一緒に昼食を取りながら”金狼の牙”はルーシーに質問を飛ばした。
 キャシーというのはルーシーの家の近くにあるドーン家の一人娘で、昔から何かとルーシーに突っかかってきた相手らしい。どういうわけかルーシーの真似をしてゴーレムの研究もしていると言う。
 きっと今回も無意味に自分に対抗しようとしてこんな事件を起こしたのだ、とルーシーは主張した。

「そりゃま・・・ライバルと競い合うのはいいことだろうけどさ・・・」
「・・・・・・手段が悪すぎる。街中に爆弾を抱えたゴーレムを無分別に放つとは、治安隊に見つかれば即逮捕だぞ」

 難しい顔で話し合っている幼馴染コンビを見て、ルーシーが言う。

「なにしろ、ドーン家は資産家でリューンの行政にも口出しできるすんごい身分なのよ」
「ははーん、もみ消し前提で動いてるわけか」
「だから、一人娘で溺愛されてるキャシーはやりたい放題なわけ。そんなわけで治安局に通報しても無駄だと思う」
「父親の圧力を使うか」

 深いため息を吐いたアレクを見やって、ルーシーもつられるようにため息をつく。

「・・・全く、いい迷惑だわ」

 カウンターに広げられた地図を見て、ミナスが隣を振り仰いだ。

「ねえねえ、ルーシー。さっき言ってた東の遺跡ってどんなとこ?」
「公式の調査はもう終わってる、ただの小さな遺跡よ。お宝なんかはないと思うわ」
「えー!!ないのかあ・・・」

 ひどく落胆した様子のミナスを見て、付け加える。

「でも、キャシーがいるから罠はあるかもしれないわね」
「仕掛けてるに決まってるじゃない。ああいう性格悪い女ならね、トラップに知恵を絞ってるはずよ」
「・・・・・・同族嫌悪ですか?」
「違う!あんなのと一緒にしないでよ!」
「まあまあ、お前さんたちちょっと待ってろって。リーダー、聞くべき事は聞いたと思うがね。どうするんだい?」

 ウーノを救った報酬・銀貨300枚をルーシーから受け取りながら、エディンが訊ねた。

「受けるに決まってるだろ。俺らのパーティ名の恩人に迷惑かけられたんだぜ?」
「あぁ、もう半分は関わってるようなものだしな」

 エディンは肩をすくめた。ギルは決して情だけで動く男でもないのだが、時折妙に律儀な時もある。
 そして背中から転がり落ちてきた解除ツールを見つめて、眉根を寄せる。

「俺が持つべきなんだろうがねえ。素人の道具は変に使いづらくて困る」
「でも、エディが使わないなら誰が使うのよ?」

 もっともな意見が飛び出し、エディンが顎に手をやって考え込んでいると、ミナスが元気よく手を挙げた。

「僕!僕がやるよ」
「・・・そういやお前さん、盗賊団壊滅した時に宝箱開けたんだよな」
「うん、ちゃんとお土産持って帰ってきたでしょ?それに、僕の精霊たちは上手く攻撃を誘導できないことも多いし、解除終わるまではきっと召喚はできないと思うんだよね」
「・・・・・・確かにな。俺もすぐ解除の体勢に入れるとは限らんし。なあ、どうだいリーダー?やらせてみちゃ」
「うーん。でもミナス、これは失敗したら依頼が果たせないだけじゃない、ルーシーの心に大きな傷を作る事になる。その責任は取れるのか?」
「分かってる。大丈夫、僕だって冒険者だよ。無理はしないから」

 暫しギルはうつむいて考え込んでいたが、やがて顔を上げると解除ツールをエディンの手からミナスの小さな手へと渡してやった。
 そして皿の片付けにきていたエセルに呼びかける。

「明日の夕飯時までには帰るよ。親父さんにもよろしく伝えておいてくれ」

 親父さんは現在、冒険者の店の寄り合いに出ていた。
 娘さんが彼の代わりに厨房に入り、エセルが一人で給仕をこなしていたのである。
 そのため、≪狼の隠れ家≫の正式な依頼ではないので聞かされた親父さんはいい顔をしないだろうが、仲介料は恐らくドーン家から搾り取れるだろう・・・そういうギルの算段であった。

「分かりました、気をつけてくださいね」
「シエテ!今日やった朗読、あたしが帰ってくるまでに復習しておくのよ。ご飯はちゃんと食べる事、いいわね!」
「行ってくるね、帰って来たら僕と一緒に遊ぼう!」
「うん、分かった・・・。みんないってらっしゃい」

 エセルがお盆を胸に抱きしめながらにこやかに見送ってくれ、シエテもパンを片手に彼らに手を振る。”金狼の牙”たちは挨拶をしながら店を出て行った。
 そして、半日と少し。
 旅慣れていないルーシーを気遣っていたために少々遅くなりはしたが、”金狼の牙”たちは無事遺跡に到着した。
 ウーノの面倒を見ながら息を切らせていたルーシーは、とある洞窟のような入口の手前を指差す。

「ここが地図に書かれた場所よ。あそこが入口ね」

 見張りなどはいないようだったので、中に入ろうと足を進めると。
 入口の奥から、何を嗅ぎつけてきたのかスチームドッグと全く未知のゴーレムが駆けつけてきた。

「・・・!ルーシー、こいつらは?」
「後ろの犬型のは、私が改良したSドッグ改だけど・・・手前の三体は分からないわ。キャシーのゴーレムかもしれない」

 エディンごめんね、と言ってルーシーは後退した。

『そのとおり!これが私の傑作・・・ウッドゴーレム01型、通称ウッディちゃんよ!』

 声高に宣言したキャシーの音声伝達魔法に、ルーシーは呆れた声で返した。

「ウッドゴーレムって・・・木じゃない。そんな弱そうなゴーレムで勝ち誇るなんて・・・頭ダイジョブ?」

ScreenShot_20130221_005600812.png

『くっ・・・このゴーレムの素晴らしさがあなたには分からないの?この木目、芳しい香り・・・そして何より重要なのは・・・!』

 キャシーはことさら声を潜め、それが素晴らしい新発見であるかのように言い放った。

『あなたのスチームゴーレムみたく、暑苦しい蒸気を噴出しないのよ!』
「はいはい・・・じゃあ、サクッっと倒しちゃって」
「・・・あ、あぁうん」

 依頼主の常にない冷厳な声に呑まれていたジーニが、慌てて頭を縦に振った。
 しかし、ミナスは油断なくSドッグ改を見つめていた。その蒸気を吹き上げる身体には、キャシーが言った爆弾がついているに違いないのだ。

「ミナス、頼むわ。俺はウッドゴーレムがお前さんに行かないよう、動きを止めておく」
「うん、僕頑張るね!」

 エディンは中央のゴーレムを、アレクとアウロラが左翼のゴーレムを、ギルとジーニが右翼のゴーレムを狙ってフォーメーションを変えた。

「爆弾が解除されたら、私がすぐにあの子を止めるから!」
「分かった!」

 ミナスは小さい体の敏捷性を生かして、ウッドゴーレムがもたもたと腕を振り上げる中を潜り抜け、見事にSドッグ改の前に躍り出る。
 実際に対してみると、アレクが一度躓き、ゴーレムに軽く殴られたのだけがこちら側の被害で、後は無事に終わった。ウッドゴーレムを仲間たちが2ラウンドほどで屠ると、ミナスは解除に集中する事ができてあっという間に爆弾を外す。

ScreenShot_20130221_010317390.png

 安全と見たルーシーが、Sドッグ改に走り寄った。

「やった!今のうちにここをこうして・・・」

 ルーシーの器用な手先が回路の一部を弄っている。

「うん・・・これでよし、と!」
『ふ、ふん!そのくらいはできて当然よね!じゃあ遺跡の奥で待ってるわよ!』
「・・・ツンデレ?」

 ギルは首を傾げた。
 動力を外されたゴーレムは、ルーシーの手でそっと入口近くの茂みに隠される。

「キャシーが変な小細工をしてないとも限らないからね。あとでちゃんと調べるまでは安心できないでしょ」
「なるほど・・・」
「リーダー、調査は終わったぜ。入口に仕掛けはないと思う」
「うっし、じゃあ先へ進むか!」

 ルーシーと”金狼の牙”は隊列を組んで遺跡へと入っていった。
 途中で先程入口にいたウッドゴーレムに出会ったり、仕掛けられたトラップを解除したりしながら、彼らはゆっくりと進んでいった。

「・・・ん、床にスイッチがある。ここをこうして・・・よし、解除できた」
「さすがは本職。やっぱ違うわね」
「いや、これ仕掛けてるのも本職だぜ?」
「え?」
「どうも気になるな。盗難の件といい・・・盗賊が、少なくともそれと同等の腕前のヤツが加担してる気がする」

 西北の部屋の扉の前で、取っ手に塗られた毒をふき取りつつ、エディンが首を傾げた。
 資産家の魔術を使う令嬢が考えるにしては、妙に即効性のある効果的な罠が多い。
 つまりそれは、盗賊としての視点を持つ者が手を貸しているということである。
 ドアを開けると、そこにはやはり以前に”金狼の牙”が見た覚えのあるゴーレムが、ウッドゴーレム五匹に取り囲まれて立っていた。

ScreenShot_20130221_011540859.png

「あ、私のスチームゴブリン改!・・・どうせ見てるんでしょ?キャシー、答えなさい!」
『あぁら、バレてた?で、何かご用かしら?』
「何か、じゃないわよ!何でこんなことしたの!?私に恨みでもあるわけ?」
『別にぃ・・・あなたの困った顔が見たいだけよ』
「ちょ・・・なにそれキモイ・・・」

 まさかの返答に、ルーシーはちょっと顔を青くしながらドン引いた。

『コホン・・・さぁ、次はゴブリンちゃんの爆弾を解除してね。はい、戦闘開始!』

 しかし、これもさほど時間がかからない(3ラウンド)うちに、エディンの手によって解除をされてしまう。

「うん・・・これでよし、と!これでこの子は取り戻せたわ!」

 ルーシーの報告ににやりと笑った戦士二人は、それぞれ自重していた技を思い切り放つことにした。

「【風切り】!」
「【薙ぎ払い】だぜ、おりゃああああ!」

 対多数相手の技が、それぞれ魔法陣の描かれた部屋の中を吹き荒れる。
 それらが過ぎ去った後でボロボロになった最後の一体を破壊したのは、解除をし終わって死角にいたエディンの【暗殺の一撃】だった。

「やー、終わった終わった。ルーシー、怪我ないか?」
「ええ、ギル。みんなにはお礼を言わないとね。どうもありがとう」
「どういたしまして。まだサイクロプスがいるけどな」
「・・・ん?何かのスイッチがある」

 壁の一部が気になって調べていたエディンが、罠じゃなさそうだと言ってそのスイッチを押してみる・・・・・・が、何も起こらない。
 ルーシーが小首を傾げて言った。

「こういうのって、大体の場合どこかの扉の鍵が開いたとか、そういうパターンよね・・・」
「ああ。ボス部屋に連動してるってこたぁねえと思うがな」

 そしてまた遺跡の通路を移動する。
 底意地の悪いことに、ウッドゴーレムだけしかいない無意味な部屋などもあったが、そういう時は遠慮なく広範囲に渡る攻撃を行い、”金狼の牙”はフラストレーションを解消していった。

「思い切りナパイアスに暴れてもらえてすっきりしたー!」
「良かったな」
「アレクもかっこよかったよ、【召雷弾】!あれ、バチバチーってするのすごいねえ」
「詠唱が比較的短い呪文だからな、遠距離攻撃ができるし使いやすい」

 ミナスとアレクが和やかに話しながら通路を行く様子を、キャシーは臍を噛みながら閉じこもった部屋で見つめていた。

「なんなの、あいつら・・・!でも次はそう簡単にいかないわよ。そこにいるのはあの子の最高傑作、Sサイクロプス改なんだから!それにあいつも・・・」

2013/02/23 10:08 [edit]

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