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Mon.

廃教会の地下 5  

 ジーニは荷物袋からヒヨス草とは違う薬草を取り出した。
 魔獣の角を取りに行った時、森で採取したものである。
 木苺にも似た外見のそれをよくすり潰し、アウロラとアレクの口に無理やり含ませて嚥下させた。

「まっず!うげえ・・・」
「・・・・・・すごく青臭いし、苦いですね」
「文句言わないでよ。死ぬよりましでしょ」

 それよりも早く二人の癒しを使ってくれと促されて、二人は慌てて周りに伏したままの面子を見渡した。
 アレクが懐から飛び出していた雪精トールを呼ぶ。

「トール、おい、トール!大丈夫か?」
「アレクはん、大丈夫でっせ。どうにか最後の光線は避けましたさかい」
「悪いが、アウロラと一緒にみんなの傷を癒してくれ。俺は最後でいいから」
「ではトール、私が癒し切れなかった方をお願いしますね」

 そう言うと、アウロラは【癒身の結界】を唱えた。
 彼女の体から微かに金色がかった法力が発せられ、円陣となって仲間や自分を覆う。
 たまに失敗する事もあるこの法術は、ほぼ大方の傷を癒し終わっていたが、ミナスだけがその円陣から漏れていたらしく、目ざとく見つけたトールが魔力で治した。

「ん・・・・・・。ありがとう、トール・・・あとは自分で出来るよ・・・」

 気絶から立ち直ったミナスが、水の精霊の霊験で残りの傷を塞いだ。
 その様子をじっと見守っていたギルが、終わった頃を見計らって声を出す。

「・・・上に戻ろう。報告する奴がいるだろ」

 一同は重い足取りでゼンを横たえておいた教会のスペースへと戻っていった・・・。

「良かった。無事だったんですね」

ScreenShot_20130215_164725953.png

「ゼン・・・」

 エディンが続ける。

「あの怪物について何か知っているんだろ。教えてくれ・・・」
「バウルに会ったんですか」

 冒険者は首を縦に振った。

「僕やバウルは戦争で帰る場所を失くした孤児です」

 リューンは戦争をしているわけではないが、その周辺諸国では珍しくもない話だった。
 そうした孤児たちを、聖北教会の関係者が集めて面倒を見ることも。
 しかし・・・神父が孤児を養っていた本当の目的、それは人体実験の贄にするためであった。
 異教徒の勢力は未だ衰えず、ここ数十年に強い聖者と呼べる者は一人も出てきていない。
 神父はこれを聖北の危機と考えた。

『聖者が居ないのなら作り出せば良い』

 後は・・・、語るまでもない。

「バウルは神父様を殺して僕を救ってくれました。でも、彼の体はもう手遅れで、心は今も蝕まれている。そして、バウルは死ぬ事さえ許されなかった」

 ゼンの目は、乾いていた。
 ただ、僅かに震える唇の動きが、その激情を物語っている。

「何度刺しても、何処を切っても死なないんだ!」
「・・・・・・弱点は?」

 我ながら非情な声だな、とジーニは思った。ゼンの嘆きももっともかもしれないが、彼女はそれにかまってはいない。

「それが分かっていれば、テスカさんも死なずに済んだかもしれない・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

 目を閉じたアウロラは、十字を切ってテスカや最初に調査に訪れた者たちと――バウルの冥福を祈った。
 バウルは恐らく喜ばないだろう。それでも、彼女には他にバウルのためにしてやれることはない。

(まだ諦めるには早いな)
(もう一度、地下を調べてみよう。見落としがあるかも知れない)

 そう考えたギルは、ゼンに「そこにいろ」とだけ言い捨てて、他の仲間を再び地下へと促した。

「何をするつもりだ?依頼は完遂したんだぜ、リーダー?」
「依頼はな。・・・でも、そこで終わりにするのはちょっと、納得いかないのさ」
「・・・ギルの言うとおりかも。あたしたち、地下で他の部屋調べてないわ」
「うん?」

 エディンはジーニを見つめた。

「真相をはっきりさせられる証拠。それがあれば、教会に責任を追及するくらいはできるんじゃない?」
「・・・なるほど。聖北教会を絞るつもりか」

 眠たげな瞳が気遣わしげに聖職者を見やったが、彼女は我が意を得たとばかりに頷いていた。

「ご存分にお願いします。私に気兼ねなさる必要はありませんよ」
「ってことで。頼んだわよ、エディ」
「ヘイヘイ」

 こうして彼らは、まだ開けていなかった部屋たちを細かく調べ始めた。
 神父が使っていたらしい部屋の本棚には、「不死の怪物」や「再生機能をもつ怪物」についての記述がある本が並んでいる。

「こっちは吸血鬼・・・これはオーガ。こっちの緑の背表紙はドラゴンか」
「・・・・・・なんですか、このゴキブリーチェって」
「徹底的に調べました、ってとこね。・・・人が人道から外れる力を人為的に身につけた結果が、ここよ」

 気に食わないわ、とジーニは言った。
 こっちの部屋はなんだろう、とアレクの手を引いて向かい側のスペースに向かったミナスは目を瞠った。
 壁一面を埋め尽くす巨大な薬品棚と、大きな寝台が目に映る。
 ここは他の部屋とは違うようだ。
 ふと、アレクが床に目をやると・・・寝台の横に神父らしきものの死体があった。

「エディン。来てくれないか」
「うん?・・・・・・おやおや、問題の神父様かい」

ScreenShot_20130215_171036156.png

 右手にナイフを握り締めたまま、胸元には大きな穴が空いている。
 お人よしそうな、むしろ間の抜けた感じの髭を見て、エディンはケッとだけ言って手を動かした。
 その途中で、神父の左手に目が留まる。
 手には黒い輝きを発する不気味な十字架が握られていた。

「これは・・・・・・」
「・・・この形自体はよくある聖印と一緒です。ですが、何らかの魔力が込められているようですね」
「不吉の徴、ってやつか?まあ、こいつがあれば告発くらいは出来るかな」
「はい。前にご依頼をいただいた司祭様を通じて、ちょっとお話させてもらいましょう」

 ごく穏やかな普段どおりのアウロラの声だったが、内側に何か燃えるものがあるのは明白だった。
 ゼンにはそれ以上声をかけることもなく、ただテスカが残した遺品を引き取って、”金狼の牙”たちは依頼人への報告にいった。

「ありがとうございます。これで死んだ村人たちも報われる事でしょう」

 素直なパリスの礼は、あの陰鬱な地下から抜け出てきた冒険者たちには甘く響いた。
 やっと、「人間」のいるところに帰ってこれた気がする。
 彼女の手から報酬を得た後、”金狼の牙”は今回の件をネタに聖北教会を――有体に言って脅しつけ、幾ばくかの口止め料を受け取った。

「銀貨1500枚か・・・もうちょっと吹っかけてやれば良かったかねぇ」
「いえいえ、見事な交渉でしたよ。さすがエディンです」
「でもあれ、ちょっとテスカのまねしてたでしょ。僕分かったよ」
「よく見抜いたなあ。ま、こいつで一杯やって、テスカに献杯するつもりさ。付き合えよ、お前ら」
「それにしても、今回ちょっと危なかったなあ。リーダーとして反省してるよ。ジーニだけでよく勝ってくれた」
「そうでしょ?大変だったんだからね、もっと褒めなさい」
「・・・ジーニは、それが無ければいい奴なんだがな・・・」

 苦笑するアレクの懐で、トールが同感というように頷いた。

※収入2500sp※

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■後書きまたは言い訳
41回目のお仕事は、SARUOさんのシナリオで廃教会の地下です。マットさんの密売組織シリーズや平江さんの氷室の囚人、そして前回の不思議な博物店と、ふと振り返るとけっこう聖北教会関係のお仕事も片付けているようなので、その噂を聞いた人に依頼されそうな事件を探して、今回のシナリオとなりました。

SARUOさんのお作りになるダンジョンは、独特の休憩ポイントやトラップ、敵の弱点などがあって非常におもしろい、ある意味TRPGにちょっと近い感じかと。・・・そう思ってるの私だけか。
その中でも、この廃教会の地下は10分と想定プレイ時間は短いのですが、後味の悪さにかけては群を抜いており、エンディング前のやるせなさ、ベストのないベターの解決が後を引きます。(褒めてます)
・・・そういうシリアス作品なのに、がっちり笑える要素も実は本棚に詰まってたり。なんですか本当に駆動少女フェラールって。(笑)
戦闘では画像の通り、新品の盾と風で防護してたジーニ以外が斃れるという全滅寸前まで追い込まれました。
いやあ、危なかった。死んでもやり直ししようとは思っていましたが、ここで勝ったからこそジーニとも言えそうで、正直私は頭が痛いです。きっとこの人、ずーっとこれいい続けそう・・・。(笑)

あ、追記。冒頭の会話はシナリオにはありません。
順に、
要港都市ベルサレッジ(あんもないとさん作)
希望の都フォーチュン=ベル(Djinnさん作)
カナンの鎧(Askさん作)
となっております。トールについて知りたい方は、このリプレイの中の雪山の巨人を読んで下さい。

次回は打って変わって野外に出ようと思います。熱いスカっとするシナリオにするぜ!

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/02/18 00:00 [edit]

category: 廃教会の地下

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コメント

今回のボスは、随分強敵のようでしたね。お疲れ様です。
やっぱり推奨レベルが高いシナリオだと、こういうボスも増えてくるんでしょうね。
それにしても、聖北教会は結構ブラックな描写のシナリオが多いですね。現実でも中世あたりの教会は割とモニョモニョ・・・なところがありますし、そういうイメージなんでしょうね。

余談ですが教会地下とかは、僕もCWとは別の方の冒険者たちが首撥ねられたりブレス吐かれまくったりであまりいい思い出がないです(苦笑)

URL | 天河 #- | 2013/02/19 08:48 | edit

コメントありがとうございます。

お疲れ様ありがとうございます、天河さん!はい、カードの引きの悪さもあるかと思いますが、けっこう苦しかったです。(笑)
聖北教会はPC事情的にお世話になってるはずなんですが、案外とブラックですね・・・教会が敵対する立場にある等とか、退廃的で心に残りやすいからでしょうか。

CW離れても、やっぱり教会地下は鬼門のようですね。(笑)
今の現実世界でも鬼門だったりして・・・。(ぼそっと)

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2013/02/19 13:30 | edit

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