Sun.

廃教会の地下 3  

 廊下はさらに地下へ続いていた。
 そうして調べるうち、奥のほうから――なにやら、今まで聞いた事もない咆哮が轟く。

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「夜毎に響く怪物の唸り声、か・・・」
「ただ事じゃないのは確かですね。ここは・・・、異常です」

 手の中の書物を、ぎゅっと彼女は握り締めた。
 古くてかび臭いそれは、所有者の未来の物語が記されているという。
 決して開く事の出来ない本をアウロラは開けたくて仕方なかった。この先に何があるのだろう?

「さらに下の階がある・・・。ずいぶんと手の込んだ造りしてるな」

 ランタンを掲げて先を示したエディンに、ミナスはぎゅっと眉根を寄せる。
 杖に宿ってついてきているファハンやナパイアスが、彼に警告を発していた。

「・・・気をつけてって言ってるよ」
「こっちもだ」

 短く返したアレクの懐で暴れている気配がある。
 足音をいっそう殺した彼らは、数ある扉を無視して一気に最下層へと降りていった。 

「ゼン・・・?」

 最下層の奥にある扉、その向こうから声が聞こえてくる。
 こちらの気配を察しているらしい。敏い奴だ、とエディンは舌打ちしたくなった。

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「もう、オレには関わるな。お前は自由だ、ゼン・・・」
「!?」

 声もない大人たちに代わって、ミナスは真っ直ぐに扉の向こうの存在へ問いかけた。

「君は誰?」
「・・・ぁぁ・・・、そうか・・・、また・・・、来たのか・・・」
「また、だよ」
「オレはバウル・・・、お前達の言うところの、教会の・・・、怪物・・・」

 怪物に知性があり、名前があり、こちらと意志を通じることが出来るというのは意外だった。
 階上で聞いた方向からすると、とてもそんな風には思えなかったからだ。
 一同はじっと扉を見つめる。

「だが・・・、倒そうなどと・・・、思わないことだ・・・。それで、既に、何人もの、・・・が、死んでいる・・・」
「どうして話が出来るのに、他の人を殺しちゃったの?」
「まだ・・・、月は出ていない・・・。まだ・・・、理性を保てる・・・」

 声は苦しげに喉を鳴らしながら、呟いた。

「今のうちに・・・、消えろ」

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「・・・・・・・・・・・・」

 ミナスはその台詞に対して悲しげに顔を歪めて、近くのギルを振り仰いだ。

「ねえ。どうしたらいい?」
「何が正解って奴でもないさ。だけどここで戦うのが俺らの仕事だ」
(そしてこれ以上、バウルって奴に罪を重ねさせないようにするのも)

 ギルが口にしなかった事を、心中でアレクは続けた。
 しばし口を閉じて推移を見守っていた女性陣は、ギルやアレクの顔を眺めてため息をついてから、魔法を唱え始める。

「本気なの、皆・・・?名前があるんだよ?逃がしてくれるって言ったんだよ?」
「ミナス。月が出てやっこさんの理性が保てなくなれば、ゼンが殺される可能性もあるんだぞ」
「あっ・・・・・・」

 エディンが囁いた言葉に、ミナスは愕然となった。

「・・・相手を思いやる気持ちは大事だ。だがリーダーも言ったろう。仕事にベターはあっても、ベストなんてもんは滅多に起こるもんじゃねえんだ」
「他の誰かのために背負うって時も、あるのよ。度し難いものね」

 あまり彼の世話をし慣れていない繊手が、波打つ亜麻色の髪を撫でる。

「それともアンタ、ここで冒険者辞める?」
「・・・・・・そんなの、絶対嫌だ。僕は僕の出来る事をするよ」

2013/02/17 23:38 [edit]

category: 廃教会の地下

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