Sun.

廃教会の地下 2  

「はい、森の奥にある廃教会です」

 翌日に宣言どおり教会を出発した一行は、貼り紙を出した主のいる村へと辿り着いていた。
 パリス・ワイメールという名前の依頼人は、若く美しい金髪碧眼の女性である。
 何でも父親が一代で財を成した成り上がりで、元々は冒険者だったという話だ。
 彼女は席に着いた”金狼の牙”たちを労わってから、おもむろに口を開いた。

「いつの頃からか、夜毎に教会の方角から怪物の唸り声が響くようになりまして・・・」
「実際の被害の程度はどんなもんで?」
「最初は村の男達を調査に向かわせましたが、誰一人帰ってきませんでした」

 ふむ、とエディンが唸る。

「次は貴方達の宿から来たテスカという方が調査に向かいましたが、やはり音沙汰がなく・・・」
「・・・・・・こういう村の依頼なら、テスカは断ったりしないでしょうしね」

 杖の髑髏を人差し指でなで上げながら、ジーニが口を出した。
 そこでパリスは、テスカのいた≪狼の隠れ家≫で多くの活躍――特に、教会関係の依頼を何度か成功させている――”金狼の牙”へ依頼をお願いすることにしたという。
 他に質問はないかというパリスの気遣いに、一同は色々と問いかけることにした。
 情報収集を疎かにしては、仕事の成功もおぼつかない。
 問題の廃教会は2年ほど前には神父が住んでいる、真っ当な聖北教会だったらしいが、場所が場所だけにいつの間にか無人になっていたという。

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「神父様が健在の頃は孤児院も兼ねていて、多くの子供達が居ました。今はどうしているのでしょう・・・」

 澄んだ湖のような目が、つかの間、哀れな子供達を思いやって潤んだのが印象的だった・・・・・・。

「珍しく、報酬上げてって言わなかったね」

 話合いが終わり、館から外に出て弾むような足取りをしていたミナスが、振り返って仲間に問いかけた。

「・・・なんか、バカにされそうな予感しかしなかったのよ。成り上がりの割に、生粋のお嬢様って感じしてたもの」
「ジーニのプライドの問題でしたか・・・。人助けが出来るのなら、私はかまいませんけどね」

 ギルが頭の後ろで手を組みながら言った。

「まあ、引き受けた依頼だ。上手くやろうぜ」

 ――そういう訳で、彼らは例の廃教会へと取って返した。
 ゼンは相変わらずそこにいた。
 宿無しだと名乗った割にこの教会には馴染んでいるようで、慣れた様子で家事を行っていたところを呼び止めると、青年は悲しそうな、しかし覚悟を決めていた顔で一同に向き直った。
 そうして地下に続くであろう撥ね上げ扉の前に陣取り、立ち憚っている。

ScreenShot_20130215_144819546.png

「地下室の鍵は僕が持っています。後は分かりますね?」

 自分をどうにかしなければ、絶対に地下には入れない――青年の頑なな主張に、エディンはむしろ面倒そうに息を吐いた。

「ジーニ、やれ」
「言うと思ったわよ」

 ジーニは杖を振り上げ、ごく初歩の呪文を唱えた。

「万能なる魔法の力よ、眠りを齎す雲を与えよ」
「――!?」

 ゼンが崩れ落ちるのを、そっとアレクが支えて寝かせてやった。

「・・・ずいぶんと乱暴だな、今回は。何か策があるのか?」
「策というかねえ。盗賊の勘っつっちゃいけねえだろうが・・・なんか嫌な予感がするんだよ」

 器用な長い指が、アレクの横たえた人物を探り鍵を取り出す。

「後味わりぃ依頼かもしれねえ。放棄するなら今のうちだが・・・どうするんだ、リーダー?」
「行かないで後悔するより、行って後悔する方が俺にとっちゃマシだね」
「なるほど、そう言う意見もあらぁな。アウロラ、ランタンは点いたか?」
「ええ、今できましたよ。どうぞ」

 渡されたランタンを掲げ、エディンが滑り込むように地下へ潜る。続けて、後の面子も順繰りに降りていった。
 潜った先は妙に長い廊下が続いている。
 途中で何度か折れ曲がったその廊下は、侵入者を排斥するようであった。

「なんだこりゃ・・・?本当に教会なのか?」

 ギルが珍しそうに見渡して言うのに、アウロラが首をすくめて言った。

「・・・たまにこういう造りの教会もあります。懲罰房や精神鍛錬部屋と称した地下室を作り、都合の悪い者を押し込めるわけです」
「教会の負の面、ってことか」
「・・・・・・孤児院を営むような教会だと聞いてたのですが、妙にそぐいませんね・・・」

 アウロラの脳裏に、ふと違う国で出会った子供狩りの領主の館が思い浮かんだ。
 あの、絶対中を覗くなとエディンが厳命した大きな釜のある部屋――ここは少し、あの重苦しい雰囲気に似ている。

「アウロラの話の通りだとすると、ここにある扉は懲罰房ってことか。どうする、開けてみるか?」
「・・・ひとつだけ開けてみない、エディン?怪物の手がかりとかがあるかも」

 それまで雰囲気に圧されて黙り込んでいたミナスが、意を決したように言う。
 エディンはその群を抜いた美貌をしげしげと見つめた後に、「後悔すんなよ」とだけ返してドアの罠と鍵を調べて開けた。
 覗きこんで彼は鼻を鳴らした。

「あー・・・。やっぱ開けなきゃ良かったかも」
「人骨・・・か?」

 アレクの言うとおり、人骨のようなものが鎖に繋がれている。動き出す気配はない。

ScreenShot_20130215_151147046.png
 
「場所が場所でなければ囚人に見えなくもないが・・・」

 エディンは危険はなさそうだと判断し、一同を先へと促した。

2013/02/17 23:33 [edit]

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