Fri.

不思議な博物店 1  

「オイオイ。俺は新しい魔法を覚えるって話は聞いてるが、そっちのド派手な盾やら、ギルやアレクが習ってきた新しい技のことなんざ聞いてねえぞ」
「やあねー、エディ。細かいこと気にしたら禿げるわよ?誰かみたいに」
「・・・ま、ジーニが買い物したおかげで、商品券もらえたもんね。おかげで僕もこの指輪買ってもらえたし」
「ミナスだと、重い防具をつけるのはまだ無理でしょう?れかん魔法品物店で物色しておいた甲斐がありましたね」
「ミナスが壊滅させた盗賊団の持ってた鎧、いいなこれ。下手な鉄鎧より動きやすいし硬い」
「ドラゴン・スケイルメイルだもんなあ。アレクかっこいーぜ・・・・・・っと、この依頼書は・・・?」

 ≪狼の隠れ家≫の親父さんは、久々に勢ぞろいした”金狼の牙”一行をちらりと見やって言った。

「・・・お前ら、その依頼が気になるのかい?」
「そりゃさ、親父さん。ここまでしかないとなれば、詳細が知りたいから」

 カナン王の持っていた鎧をサイズ直ししたギルが元気に答えるのに、親父さんは太い眉を八の字に下げて応えた。

「気になるだろうが、わしもその張り紙に書いてあるとおりしか教えてもらってないのだよ」
「えー。なんだそりゃ」

 張り紙にはこう書いてあった。

『聖北教会より依頼を頼ませていただきます。依頼内容は掃除です。報酬は1000sp程用意しております。詳しい事情は依頼をしていただく方にのみ・・・』

 ジーニが親父さんの方にふらりと近寄り、カウンターに肘をついて訊ねる。

「書いてあるとおりって・・・掃除ってことだけ?」
「あぁ。聖北教会の使いからのってのもな」

 ”金狼の牙”たちは、いやーな表情をして顔を見合わせた。リューンの下水道に潜ってビボルダーと一戦交えた時の記憶は、まだ割と新しい。
 今度はそんな事はないと思うが、と苦笑して親父さんは付け足した。

「・・・で、どうするんだ?聖北教会だから、報酬は間違いなく値切られる事はないと思うぞ」
「・・・・・・・・・行く」

 技能の講習代金やら、装備を整えた代金やら、清算すると今まで結構貯めこんだはずの懐が寂しい。
 人間、経済状況には勝てないのだ。

ScreenShot_20130212_015908785.png

「・・・・・・たかが掃除で1000sp・・・ねえ・・・」
「どう考えても怪しいなぁ・・・」

 剃り残した顎の髭を摘んだエディンと、杖の髑髏で肩を軽く叩いていたジーニが、呟いてそれぞれ目を合わせる。同意見らしい。
 暫し口をもごもごさせていたエディンが、

「まぁ、お役所だから報酬はちゃんと払ってくれるとは・・・思うがねぇ・・・」

と苦笑する。
 依頼人は司祭の一人で、アウロラと面識はなかった。
 非常に面長な印象が強い司祭は、最初新しい信者の申し込みと勘違いしていたが、エディンから事情を聞くとぱっと喜色を露にした。

「あぁ、『掃除の依頼』の件できたのですね?」
「はい、ところで、『掃除』って・・・何をどう掃除するんですか?」
「きたるべき12月25日・・・その日は一体何の日です?」
「12月・・・25日?」

 ぽつりと後ろで思い当たったアレクが呟く。

「クリスマス・・・か・・・」
「そうです。クリスマスと言うのは、聖なる夜。悪しき者どもに邪魔されてはいけないので、その前日には、教会牧師総勢で、町中の悪しき者どもを退治しています」
「そんなことやってるの!?」

 びっくりしたミナスは、慌ててアウロラを振り返る。果たして、僧侶である彼女はにっこり笑って肯定していた。
 司祭は動揺もせず話を続ける。

「ここ、聖北教会リューン支部はリューンを元に、洞窟などの山までの悪霊を毎年見つけて退治しています。・・・聖なる夜の邪魔をさせないための、念のための行動、ってこところです」
「へええ・・・」

 ところが、今年に限ってそうそうない異常地帯を発見したのだと言う。
 リューンの裏通り・・・こないだ、ミナスが人違いで誘拐された辺りに『リッシェンベルグの屋敷』という館がある。そこは元貴族の屋敷で、なにやら事業の失敗だとか、幽霊が出たからだとかで空き家となっていたはずだ。
 そこで多量の悪霊を発見したと報告が来ているらしい。

「ちょくちょく行っておけばよかったのですが、そのような情報を聞かなかったので、教会も放って置いたのですよ。・・・迂闊でした」

 司祭の言う『掃除』とは、その悪霊たちを追い払うことであった。
 ジーニが、やっと合点がいったとこっくり頷いている。
 冒険者たちの合意を得られた司祭は、さくさくと支度を済ませて屋敷へ行こうと彼らを誘った。

「え!?今すぐ!?」
「はい。・・・来た以上、途中放棄は許しません」

 有無を言わさぬ司祭の態度にややたじろぎながらも、”金狼の牙”たちは彼をつれて問題の屋敷へと向かった。


2013/02/15 19:33 [edit]

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