Thu.

傍迷惑な盗賊団 2  

「――んだ」
「――ま――――で――」
(・・・・・・・・・う・・・・・・・・・?)

 知らない耳障りな声が、何かを話している・・・・・・。
 重い頭を無理やり持ち上げて、ミナスは周りを見渡した。

「ここ・・・・・・は・・・・・・?」
(確か眠りの雲で眠らされて・・・)

 その時、隣にいるらしい男の怒鳴り声を聞いて、ミナスはびくりと体を震わせた。

「だから言っただろ!!命令をしっかりと聞けってよ!!」
「すいませんでした副長!!てっきり・・・」
「言い訳はいらねぇ!!頭も俺も耳にタコが出来るほど話したはずだ!!例の貴族の子供を連れてくるはずのを、何処の馬の骨かわからねぇ奴を連れてくるとはどういう了見だ!?」

ScreenShot_20130211_232735274.png

 おまけにありゃエルフじゃねぇか!!という声まで聞こえる。

(盗賊団・・・?・・・・・・なるほど、人間違いでさらわれたのか・・・・・・)

 はて、とミナスは思った。

(例の貴族の子供・・・もしかして、親父さんの言ってた、噂の盗賊団?)

 その間も怒鳴り声は続いており、下っ端らしい男が必死に謝っている様子がここまで伝わってくる。

「・・・・・・まぁいい、ここで説教したって始まらねえしな。・・・で、そいつは今どうしてる?」
「へい、軟禁用の場所に置いておきました」
「そうか。・・・武器は奪ったんだろうな?」

 ミナスは今、武器らしい武器というものは使っていない。
 駆け出しのときであれば、アウロラから借りていた護身用ナイフを使っていたのだが、今は≪森羅の杖≫という詠唱を助けるアイテムしかない。
 慌てて自分の手元を確認すると、≪森羅の杖≫も、そして防具である≪エア・ウォーカー≫も取られていなかった。
 下っ端らしい男が口篭ったのに、すかさず最初の声が早く奪いに行けと怒鳴りつける。

(!!まずい、こっちに来る!!)
『恐れるんじゃないよ、ミナス。いいからやっちまいな。悪者なんだろう?』

 ナパイアスはすっかり戦闘するつもりでいるらしい。

「それはまあ・・・そうなんだけども・・・」

 隠れるところもないし仕方ない、とミナスはナパイアスとスネグーロチカを召喚した。
 雪の娘の出現でふわりと雪の結晶が飛び散ったと同時に、無粋な足音がなだれ込んでくる。

「・・・・・・チッ・・・・・・もう起きていやがったか・・・」

 一番後ろにいる男は他の奴らと違い、何か威厳を感じる。
 恐らく、彼が先程副長と呼ばれた男だろう。

「・・・君たちが、僕を貴族の子供と間違えてこんなとんでもない場所につれてきてくれた人たちだね?」
「ハン、話が聞こえてたなら話は早えな。俺らは盗賊団でな、このアジトの場所を知られるわけにはいかねぇ。・・・死んでもらうぜ?」
「どうぞ?やれるもんならね」
「ふん、口が減らねぇな。・・・おい、お前ら。この失態を挽回するチャンスだぜ?」

 副長とやらは、どうやら戦闘に参加するつもりはないらしい。
 下っ端が息巻いて失態を取り戻すと宣言するのを鼻で笑い、3人ほど置いて奥へと下がっていく。

「へへ、悪く思うなよ。恨むなら、人違いでさらわれた自分の運のなさを恨むんだな」
「人違いどころか、エルフを人と間違えてさらってるんだから無能すぎるよ。おじさんたち、悪いけどさっさと終わらせるからね」
「あ?なめるなよ、こいつ!!」

 チンピラたちは、木の葉のような両刃のナイフを取り出して襲い掛かってきた。
 しかし――。

『ほうら、激流にぶつかる気分はどうだい?』
『ちょっと、ミナスにそんな汚いモン近づけないでよ!!』

 渓流のじゃじゃ馬と冷気の乙女が、縦横無尽に駆け巡る。

「げ!!なんだこのガキ!」
「魔法だ!こいつ、魔法使ってやがる・・・うわああ!」

 結局、かすり傷ひとつ負う事もなくミナスは戦闘を終わらせた。
 チンピラたちの服を漁ると、鍵はなかったが傷薬が3つ手に入った。
 ウンディーネの力の一端を使う事は出来るが、消耗し切った時には便利だろう。しばらく悩んだ末、ミナスはそれを持っていく事にした。

『さっさとこんな辛気臭い洞窟、抜け出そうよ~』
「うん、そうだね」

 スネグーロチカの主張に頷くと、ミナスはてこてこと自分の入れられていた部屋から抜け出した。
 
「うーん・・・・・・広いなあ」

 道は3つに分かれている。とりあえず迷子にならないようにと、ミナスは真っ直ぐ突き進んだ。

(・・・ここは・・・宝物庫、か・・・)

 木製や鉄製の宝箱が並んでいる空間である。
 ミナスは冒険者をやるくらいだから、宝物と聞くとわくわくしてしまう。
 スネグーロチカが行こうと急き立ててるのも聞かず、ついつい鉄製の箱のひとつに近づいてしまった。

「えーと、確かエディンはこうやってたっけ・・・・・・」

 鍵が掛かっているそれには、ミナスが分かる範囲では罠はない。
 たまたま持っていた針金の一つを鍵穴に差し込んで、エディンがダンジョンでよくやるように動かしていると、かちりと外れた音がした。

「わあ、鎧だ。ギルとかアレクなら着れるかな?」

ScreenShot_20130211_235512441.png

 ・・・・・・ミナスは気づいていないのだが、彼が取り出したのは龍の鱗を使用した鎧である。
 龍の鱗は軽量でありながら魔法に対する抵抗力や防御力が高いことで有名である。
 この鎧も、古いとはいえ例にもれずそこそこの防御を誇っているのだ。まったく、鍵もかけようものである。

「こっちのも気になるな~」

 鍵の掛かっていない箱を開けると、そちらには琥珀の塊が入っていた。
 綺麗なそれをアウロラへの土産にしようと箱から取り出した瞬間、不吉な音がミナスのいる部屋に響く。

(・・・!?・・・地鳴り・・・?)
『ミナス、危ないわ!早く逃げましょ!』

 スネグーロチカの警告に従い急いで宝物庫から去ると、ぐしゃりと鈍い音を立てて入口が崩落してしまった。

(・・・!!危なかった・・・)

 冷や汗を拭い、ミナスはしばらくきょろきょろと誰か来るか警戒していたが、駆けつける様子はなかった。

「なーんだ。ちぇ」
『相手がバカで助かったわね~』

 のんびりした雪娘の台詞にくすりと笑うと、ミナスはまた歩き出した。

2013/02/14 00:02 [edit]

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