Thu.

傍迷惑な盗賊団 1  

「・・・・・・・・・オハヨ・・・・・・・・・」
「・・・おぅ。珍しいな、ミナスがこんな時間に起きてるとは」

 月下美人を見終わったギルとアレクが部屋へ戻ったその日。
 ミナスが目を覚ましたのは、聖職者であるアウロラですらまだ寝床の中にいる、暗い早朝のことだった。
 ≪狼の隠れ家≫の親父さんは、既にパンの仕込みに入っている。
 粘つくパン種との格闘を終え、親父さんはまだ目をこするミナスのために手早く紅茶の準備をした。

「何故か目が覚めちゃってね。なにか飲むものない?」
「そうか。まぁ、早起きはいいことだがな・・・ほらよ、紅茶だ」

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「え~、紅茶~?エール酒ないの、エール酒~」
「子供に酒なんか飲ませるわけにはいかん」
「別にいいじゃん、どうせいつかは飲むものだよ?」
「まったく、口が減らないな、お前は・・・・・・」

 ため息をついた親父さんは、ふと思いついたように言った。

「ソレを飲んだらお使いに行ってくれねぇか?」
「お使い?なんで?何処に?」
「昨日に来た酔っ払いが皿とコップを割りやがってな。その補充をしなきゃいかん」

 親父さんの口調からすると、その酔っ払いとは――ギルとアレクのことに違いなかった。
 がっくりとミナスが首を折る。

「・・・・・・ゴメンナサイ」
「うむ。リューンの雑貨屋に行ってきてくれ。代わりに紅茶は奢ってやるよ」

 親父さんはズボンのポケットから皿とコップの引換券を取り出し、ミナスへ渡した。

「ほら、コレが引換券だ。それじゃ、気をつけて来い。今話題の盗賊団が出没しているらしいからな」
「盗賊団?」
「あぁ。ものすごい若い者が頭になった盗賊団らしい。・・・まぁ、お前なら大丈夫だとは思うがな」

 並みの子供など及びもつかない度胸と魔力、そして今までの冒険による機転を持ったミナスである。親父さんも、念の為に言ったに過ぎなかった。

「そんなに凄い盗賊団なの?」
「ふむ・・・どうだろうなぁ・・・お前なら無事に帰ってこれるとは思うが・・・結構実力派な盗賊団らしいぞ」

 出来たばかりだから心配ないと思うが、気をつけるに越したことはない――親父さんらしい慎重な意見に、ミナスはこっくりと首を縦に振った。
 なんでも、街の噂によると、その盗賊団にはリューンのある貴族の子を誘拐する計画があるらしい。
 まだ朝が早すぎて寒いだろうから、と親父さんはミナスの細い首に娘さんが編んでくれたマフラーを巻いてくれた。

「それじゃ、交換しに行ってくるね!」

 ミナスは元気よく、朝靄漂うリューン市街へと飛び出した。

「・・・・・・・・・ん?」

 時間がはやいため、基本的には業者の者や、騎士団の人たちしか通る事はない。
 ・・・・・・・・・・・・はずだが・・・・・・・・・・・・。

ScreenShot_20130211_230931015.png

「う~ん、随分と人が多いなぁ。何かの店のセールか・・・重大事件が起こったのか・・・」

 そう、人が多いのである。・・・特に・・・雑貨屋周辺へ向かって。
 ミナスは首を傾げながら雑貨屋へ向かった。

「・・・・・・・・・!なるほどね、そういうことか・・・」

 ミナスの見ている先には雑貨屋の周りの商店街の看板があった。看板にはとても大きな文字でこう書いてある。

『在庫処分セール』

(こりゃ、雑貨屋まで歩いていくのは大変だなぁ。馬車で行くか・・・それとも、あまり行きたくないが路地裏のほうを歩いていくか・・・。)

 そこまで考えて、ミナスは早々に馬車のルートを破棄した。・・・引換券は持っているが、金がない。

「あまり気乗りしないが・・・路地裏を通って行くか」

 靄の中を泳ぐように、日の当たらない細い路地へ小さな人影が飛び込む。

「やっぱここは暗いなぁ・・・まぁ、下手なチンピラどもは敵じゃないけど」

 あまり人通りのない裏通りを手早く通り抜けて、雑貨屋へ向かった・・・・・・・・・・・・が。

「・・・・・・・・・?」

 がくり、と膝をつく。

「な、なんか・・・急に・・・眠く・・・」
『起きろ、起きるんだよ、ミナス!』

 影に潜んでついて来ている渓流の魔精・ナパイアスが、必死にミナスを叱咤している。

「ま、まだ起きて少ししか過ぎてないのに・・・」
『ここで寝るんじゃない!誰か悪意をもった奴が近くにいるよ!』

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「・・・!!こ、これは・・・もしかして・・・眠りの雲!?」

 ナパイアスの言葉と、冒険者としてのいくつかの経験でミナスは気づいた。
 この眠気は【眠りの雲】の呪文を浴びた状態である、と。

「ま・・・まず、い・・・」
(というか、またこのパターンかよ!)

 心中で自分に突っ込みを入れつつ、ミナスは意識を眠りの国へと引きずり込まれた。

2013/02/14 00:00 [edit]

category: 傍迷惑な盗賊団

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