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Mon.

Perfumed Garden 4  

「ここは・・・」

 アレクはゆっくり首をめぐらせる。
 転移してきた先は、魔法陣の複数描かれている陰鬱な部屋だった。
 自分が使用したものの他に、もうひとつ違うルーン文字が書かれたものと、血で描いたのかと思うほど禍々しい赤によって作られた魔法陣がある。
 しかし、その赤い方の魔法陣はところどころ意匠が途切れていて、既に機能していない事が分かる。

「・・・・・・昔使っていたんだろうな。何かの儀式に」
「なんや、けったいなとこですな、ここ。わてはあまり好きになれまへん」
「俺もだよ」

 アレクはもうひとつの魔法陣を使う事にした。
 また転移の魔力が走り、二人を別の部屋へと送る。
 着いた先は、数々の書籍類と研究器具・・・ここは研究室だったようだ。

ScreenShot_20130211_184443781.png

 扉の脇にはレバーが、部屋の隅には書棚が見える。
 部屋の中に仕掛けが無いことをとりあえず素人目で調べて確かめると、アレクは書棚へと近づいた。
 棚に並べられた本の背表紙の名前は、比較的よく発掘されるものばかりで、価値の高いものは見当たらない。
 そんな中、ふとアレクはひとつの背表紙の前で指を止めた。

「これは・・・遺跡の主の手記か」

 赤い革表紙に走る魔法陣のような紋章は、恐らく手記を書いた当人を表すものだろう。
 十分に用心して開く。遺跡の主は魔女だったらしい。
 まめに日記する習慣はなかったようだが、ここにはある時期の彼女の日々が綴られていた。
 長い年月による浸食を受け、読める箇所は限られるが、それなりにこの遺跡の主の日々を窺い知ることのできるものになっている。

「名前は・・・・・・ウルスラ?」
「アレクはん、読めるんですか?」
「一応な」

 塔の魔術師であった母親から受けた教育には、古代文明期に使われた文字の習得もあった。
 全てを読めるわけではないが、この手記に使われた程度のことなら造作もない。
 アレクはゆっくりと眼を手記に走らせ、コマンドワードとなりそうなものが無いかを確認すると、トールのために口に出して朗読した。

「『私は荒野の隠者”千の手を持つグスタヴス”の娘ウルスラ。ごく若いうちから魔術師の塔での研究に見切りをつけ、野に下り隠遁生活を続ける魔術師だった・・・。』」

 荒野で一人魔術研究に明け暮れる彼女の元を、ある日一組の冒険者パーティが訪れた。
 彼らはウルスラをパーティに誘い、彼女はそれを断り続けたが、再三の説得に折れてついに応じることになった。
 ドミニクス。パーティの戦士であるその若者とウルスラは、冒険者稼業を続けるうちに恋に落ち、やがてウルスラは子を成す。
 しかし、ウルスラにとって計算外だったのは、そのドミニクスがとある王国の第二王子であったことだった・・・・・・。

「・・・・・・なんや、聞いた事ある話でんな?」
「・・・うーむ。ウルスラはそれを聞いて、大分悩んだのだな。あの伝承のように、国王の死去から王国は不安定になったようだ。『そんな難しい時期に産まれてしまったのだ、我が子フィニイは。王国にとっての運命の子ともなりかねない立場だ。ましてや血族の少ない王家のことである・・・。』」

 しかし、ウルスラの王子擁立派の重臣たちに見つかりませんように、という願いもむなしく、遂に彼ら一家の所在が擁立派の知るところとなったらしい。
 大人数を相手にウルスラとドミニクス2人で戦うのは無謀に過ぎた。息子を守るため、二人は王子擁立派に投降する。
 ウルスラたちを追ってきたのはイライアス伯、極めて野心的な男――。

「最悪ですな。あの吟遊詩人の歌のとおりなら・・・・・・」
「うむ。結局、ウルスラとフィニイは地下室に閉じ込められたとある。伯は、妻子をたてにドミニクスを脅したのだろうな・・・」

 イライアス伯がいた時代のこの地方は魔法使いに対する偏見が強かった、とある。
 『果たしてその魔法使いから生まれた王子を王家に留め置くということがあるだろうか?』・・・・・・ウルスラの懸念も当然だった。
 ウルスラが加入した後の冒険者パーティは、西方諸国でそれなりの名声を上げたとあるから、フィニイの出自を隠すことは伯爵にも困難であったろう。
 やがてイライアス伯がウルスラとフィニイの抹殺を決定するも、聡明なウルスラは懸念に従い、予め準備しておいた魔法で城外に脱出を果たした。
 偏見がある分、魔法について正確な知識を持たず、準備がしやすかったためである。
 魔法でドミニクスにしるしを残し、一安心したウルスラだったが・・・・・・。

「『館を脱出してもう一週間。未だドミニクスが脱出してくる様子はない。』とある」
「・・・男の心変わりは悲恋につきもんですが、こうした手記があると気の毒ですわな~・・・」

 ウルスラは長い逃亡生活を続ける。イライアス伯に見つからないため・・・・・・その絶望的な日々の中でも、息子の成長を喜ぶ親心が切々と書かれている。
 だが、途中でその喜びもまた闇に塗りつぶされていく。

「『息子の体がおかしい。医療も魔法による治療も受け付けない。未知の悪い病なのだろうか・・・・・・?あるいはこれは呪い・・・・・・?』」
「そんな!! 不幸すぎますがな!」
「しっ。『フィニイには身代わり人形を持たせてあるが、それもこの病には効力を発揮しそうにない・・・・・・』か。これは、あの陶器製の人形のことかもしれないな」

 地下に隠れ家を築き結界を張って、当面息子の治療に専念したが、結果は芳しくなかった。
 息子の時間を止め、奥の室に隔離し。
 ネクロマンシーの研究に手を出し、異界より召喚した魔神からも様々な知識を得て、病の研究に勤しむための時間を作り・・・・・・。
 そう、手記の主であるウルスラは、アレクの仲間であるジーニが嫌う禁呪の研究に手を出したのだ。
 なのに、なのに・・・・・・・・・!

「フィニイは助からなかったんだな・・・。最後に、『せめてフィニイの魂と繋がることのできる場所に私の魂と精神を封じよう・・・・・・』とあるが、日記はここで終了している」
「2人はかわいそう過ぎますがな・・・・・・。ウルスラも、フィニイも・・・・・・」

 トールはすっかり手記の主とその不憫な息子に同情したらしく、滝のような涙を流してオンオン泣いている。
 重い溜息をアレクが吐いた。フィニイの境遇が、さっぱり他人事のようには思えなかったのである。

 なぜなら、アレク――アレクシスの父はフルネームはオルフレッド・ランダースといい・・・・・・ランダース男爵家の三男だったからである。
 継ぐべき所領も無く、妙な縁談話を持ちかけられるよりは、と冒険者に転身した父は、同じ冒険者パーティに所属していた魔女を己の妻に選んだ。
 男爵家が小さく、相続に問題がなかったとは聞いているものの、結婚当時は色々あったと笑っていた両親にアレクは思いを馳せた。

(・・・・・・俺がフィニイみたいにならなかったのは、幸運だったんだな・・・。それなのに、俺はくだらないコンプレックスを父さんに抱いていた・・・。俺は俺でしかないのに。)

 そう考えながら、ポケットに入っていたハンカチをトールにばさっと被せると、アレクはレバーに近づいておもむろにそれを下げた。
 アレクの考えでは、このレバーがどうやっても開かないこの扉の開閉装置な筈である。
 今まで読み上げた記述からすれば、ウルスラが万が一の脱出手段に用意したのが、この部屋と魔法陣だと類推する事は易しかった。

「よっと・・・・・・。ここは・・・やはりか!」

 半ば以上予測していたことではあるが、ドアの向こうはアレクが1回目に探索した遺跡だった。
 人形や小瓶を回収した子供部屋に繋がっていた、ということはフィニイの部屋なのだろう。

「・・・・・・トール、泣き終わったか?」
「へ、へい・・・。なんとか・・・」
「花園に行こう。ウルスラとフィニイが待っている」

 静かに歩んでいく足音が、通路に響く。
 無骨なブーツに包まれた足が、庭園に一歩踏み込んだ瞬間。

「!?」

 中央の白い柱が一部崩れていることに、アレクは気がついた。
 崩れた部分を覗いてみると、柱の中には小さな骸が収まっていた。

ScreenShot_20130211_193313171.png

「・・・・・・・・・」
「アレクはん。この子・・・」
「フィニイだな」

 ぽつりと呟き、硬質の美貌の下で感情をこらえながら、部屋の隅へと視線を移す。
 朽ち果てたもう一つの骸が見える。柱を守るように佇んでいた亡者のものだ。

「魂よ安かれ――」

 アレクは眼を閉じて彼らの冥福を祈った。
 そして踵を返す。

「あの2人の魂、ちゃんと還れますかいな」
「分からん。しかし、祈るぐらいは許されるだろう?」

 調査完遂の報告を領主に行い、依頼人から様々な追加報酬を受け取ったアレクだったが、遺跡に残された母子の骸を共に弔って貰いたいと願い出るのは忘れなかった。

ScreenShot_20130211_193735140.png

 疲れ果て宿に戻った人と精霊の視線の先に、左胸を中心に大きなひびが走った、すっかり壊れてしまった人形の姿がある。

「これ、どないしますのん?」
「”捨ててください”ってのが、こいつの願いなんだ。その通りにしてやるさ」
「へ?」

 アレクは最後にこの人形の言葉を聞いた――そんな気がした。
 ”わたしを捨ててください”と。
 美貌の青年が街角のごみ捨て場に人形をそっと置く様子を、外套の懐から雪の精霊が不思議そうに眺めていた。
 そして、彼らは馬車の停留所へと向かった。

※収入1100sp※

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■後書きまたは言い訳
37回目のお仕事は、寝る前サクッとカードワースフォルダより、MNSさんのシナリオでPerfumed Gardenです。シナリオ選ぶのも時間掛かったし、文章量的にも中々難産でございました・・・。良すぎる文章はどこまでリプレイにしたものか本当、削り辛いわあ・・・。

今回のシナリオの選び方ですが。まず、「他に相棒がいないこと」でした。
魅力的なヒロインや頼れる相棒がNPCで出てきてしまうと、雪精トールとの丁々発止(になってるか自信がないけれど)のやり取りができなくなってしまいます。
せっかく素敵な精霊がいるのだから、ぜひともトールとの会話は生かしたいところでした。

そして残ったシナリオから特にPerfumed Gardenを選んだのは、ウルスラやフィニイ、父親であるドミニクスの境遇がアレクの設定に非常に似通っていたためです。
本文中にも出していますが、アレクの父・オルフは有力でない男爵家の三男です。婿入りさせられる危険性を回避する為に、とっとと出奔して冒険者となり、精霊ジルフェ(Y2つさんの風鎧う刃金の技より)をお供にあっちゃこっちゃで事件を解決します。その中で、仲間である魔法使いのラフィ=アン(商家のお嬢様)と情を通じて恋仲となり、アレトゥーザで結婚式を挙げました。
ウルスラさんのようにならなかったのは、ひとえに男爵家が落ちぶれていたのと、ラフィ=アンの実家が裕福で男爵家にお金を融通しているからです。離婚したらその手助けもなくなりますからね。

それにしても意図していなかったんですが、ますますアレクの信仰心を厚くさせるようなイベントまで起きて、大変ラッキーでした。ただ手助けがない分だけ戦闘に余裕はなく、非常に怖かったです。楽しいけども。(何)

さて、一通り6レベル面子のソロシナリオは終わりましたが、実はまだ7レベルには達していません。
合流させて5-7のシナリオを遊ぶか、2人シナリオ&1人シナリオやってレベルを上げさせてから合流させるか・・・どうしようかな~。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/02/11 21:00 [edit]

category: Perfumed Garden

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