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Perfumed Garden 3  

 魔神はつまらなそうに、倒れた男に縋りつく精霊を見やった。
 これも始末するとしよう――しかし、人間の方は容姿といい魔力といい、なかなかのご馳走に値するものだが、精霊は大した力も持たずあまり食欲をそそらない。
 まあ、前菜にでもするか、と爪を振り上げた。
 その刹那、血の海に横たわっていた男の身体が白く輝いた。

「!?」
「・・・・・・なぜ?」
「無事だったんですか、アレクはん!?」
「・・・なぜ俺は生きている・・・?」

 黙示録の名を冠する魔剣を杖に、半神半人のような面差しをした美青年が立ち上がる。
 確かに致命傷だった。それは受けたアレクが一番よく分かっている。

「・・・・・・」

 その致命傷を放った本人(?)も、しばし唖然とした様子でアレクを見やっていたのだが、何かに思い至ったのか体勢を整えつつ歯軋りした。

ScreenShot_20130211_180741859.png

「こやつ・・・スケープドールでも持っておったのだな」
「・・・・・・」

 アレクの脳裏に、微かに何かが閃いた。
 セピア色に彩られた、判然としないどこかの室内――。
 自分ではない『何か』から零れだす感情、そして――。
 しかし、それを突き詰めて考えるには場所と・・・場合が悪すぎる。アレクはすらりと剣を引き抜いて構えた。

「ま、助かったのはよかったが・・・やれやれ。これでまたお前とやらないといけなくなったようだなあ」
「お前からは忌まわしき臭いがしてならぬ。我を千年にわたりこの地に縛り付けた者に似た臭いだ」
「臭い・・・・・・?」

 トールは首を捻る。彼が宿主と決めた人間からは、そんな臭いを感じない。
 恐らく魔力の残り香みたいなものだろうな、とアレクは思った。前の遺跡に何か関係があるのかもしれない。
 魔神が妙な形に手を構えた。

「覚悟するがよい。我はお前を倒し、真の自由を取り戻すのだ」
(さて。上級魔神じゃないとは思うが・・・俺とトールでやれるか?)

 懐に戻ったトールを見やれば、すっかり逃げる気は失せたようである。

(うーむ・・・・・・ま、元より選択肢などないか。向こうさんはやる気満々みたいだしなあ・・・・・・)

 戦いが始まった。
 アレクはまず、剣先を床に思い切り叩きつけて砕き、その瓦礫を魔神へと放つ。【飛礫の斧】の技である。
 魔神はまさしく人間離れした膂力を持っており、さらに魔法も使いこなすようだが、長らく封じられていた影響か本調子ではないらしい。
 よし、とアレクは魔神の右腕を逆袈裟に切った。
 以前に戦った冥王カナンの時もそうだったが、強い魔力を使いこなす存在というのは、その腕が揃っていて初めて本領を発揮する事が多いのである。

ScreenShot_20130211_181824046.png

「ぐうううぅう!」
「反対側の腕も貰うぞ」

 片腕を落とされてなお軽快に後退する魔神を追って、滑るように距離を詰めたアレクが思い切り剣を振り下ろす。
 ビュッ・・・・・・という音とともに、黒い腕が床に跳ねて飛んだ。
 簡易詠唱による炎を刀身に宿し、燃えるような双眸をひたと敵に向ける。

「言い残す事はあるか?」
「こんな・・・こんなはずは・・・・・・。たかが人間如きに・・・!」
「ないか。そうか」

 燃え上がった刀身は、大きな魔神の身体を焼き焦がして断ち切る。
 邪なる異界の魔神は倒れた。
 すると魔神の体から――鮮血のように禍々しい紅の一片の水晶が飛び出した。
 それは床に落ち、繊細な硝子細工のごとく脆く砕け散った――。

「!?」

 砕けた紅晶片から、半透明の靄がかった発光体が音も無く浮かび上がる。

「敵ですか!?」
「・・・霊体・・・・・・敵か・・・?それとも・・・・・・」

 しかし、それらからは個々の意思というものがあまり感じられない。既に半ば自我を失いつつあるようだ。
 その時、アレクの心中に、それらの霊体から、喜びと感謝の意思が流れ込んで来たように感じられた――。

「・・・・・・」
「・・・消えよった・・・」

 二人は霧散してゆく彼らをその場に立ち尽くして見送った。
 恐らくは契約等により魔神に囚われ、その糧となっていたであろう彼らが、果たして神の御許に召されることが叶うものかはわからないが――アレクは彼らのために祈りを捧げることにした――。

ScreenShot_20130211_182836343.png

「まったく・・・・・・話が違いましたな。なーにが、『概ね危険はない』だか」
「何かしら不測の事態が起こるとは思っていたさ。ただ・・・」

 ふらり、とアレクは腰をおろした。何しろ、短時間の間にとんでもない量の血を流した感触が、まだ忘れられないのだ。

「こんなタフな依頼になるとは思ってなかったぜ・・・」
「お疲れさんですわ、ホンマ」
「・・・・・・そういえば、お前逃げろと言ったのに言う事をきかなかったな・・・・・・?」
「そないなこと言うたかて、あないな状況で見捨てられますかいな!」

 トールは宿主への抗議を込めてそこらを跳ね回っていたが、部屋の隅に転がった死体に気づき、「ヒッ!?」とアレクへ転がり寄ってきた。

ScreenShot_20130211_183122984.png

「ああ、廊下にいたコボルトか・・・。魔神にやられたんだな」

 しばらく気息を整えると、アレクは立ち上がって部屋の調査を始めた。魔神が転移してきたらしき魔法陣以外には、特に気になるものは見当たらない。

「アレクはん。コレ、どこに繋がってるもんですやろ?」
「さあて、魔界直行便という奴ではないだろうが・・・」

 魔神本人が、「この地に縛り付けた」と言っていた。ということは、少なくとも魔神は誰かによって召喚され、現世にとどめられていたはずである。
 魔法陣に魔力が残っているだろうことを確認すると、アレクはトールを肩に乗せてひょいと飛び乗った。
 転移の魔力が複雑な文様を白く輝かせ、周りの景色が水面のように揺らめいたかと思うと、既に二人の姿は別の空間へと転移されていた。

2013/02/11 20:36 [edit]

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