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Mon.

Perfumed Garden 2  

 アレクは、一旦領主に途中経過を報告して、逗留している宿に戻っていた。
 上等な部屋ではないが、それなりに居心地よく、落ち着いて休息できる空間である。

ScreenShot_20130211_170615312.png

 もう少し上等な宿を用意するとの申し出も、領主からあったのだが――領主が何らかの思惑をもってアレクを監視していた場合に面倒なことになる、ということと、柄でもなく落ち着かないので、丁重にお断りして自分で探すことにしたのである。

「・・・・・・・・・」

 アレクの赤褐色――光が当たるとほぼ血色になる――瞳が、人形を射抜いている。
 依頼の過程で見つかった物の中で、領主が不要とした品を報酬の足しにもらったのである。

「・・・う~む・・・」
「何を唸ってはるんです?」
「いや、どう眺めてもこの部屋にはそぐわないと思って」
「はあ、着てるモンも上等なように見えますしな~。でも、それよりもっと・・・」
「ん?」

 ベッドの木製フレームにちんまりと腰掛けているトールが、首を傾げて人形を見つめている。
 あまりに真剣なその目つきに、アレクは「どうした?」と小さく問いかけた。

「なんですか、アレクはんはこれを魔法の品やと言わはりましたが・・・。わてには、わてらの仲間のようにも見えますんや」
「・・・・・・? 精霊的な存在、ということか?」
「いやあ、精霊とはちゃいます。それでしたら、わてにもはっきり分かりますやろ」
「・・・・・・すまん。何を言わんとしてるかが分からん」
「妙な事言うてすいません。ですが、これがただの品物と思わん方がええです」

 アレクはしみじみと相棒を眺め、そして視線を人形に戻してから頷いた。

「ああ・・・。なんと言うか、こいつを持った瞬間、妙な感覚がしたんだ。なんていうか・・・何かに繋がった、みたいな」
「今は異変があらへんですが、ちょっと用心した方がええですな」

 ふう、と溜息をひとつつくと、アレクはトールと人形を同じ卓の上に並べて、さらに今日マッピングした地図に細々と調べた結果を書き込む作業に戻った。
 なんとなく、トールだけではなく人形からも視線を受けている気になるが、あえてそれを無視して作業を続ける。

「とりあえず、次の遺跡も気をつけていこう。またあのリッチみたいなのには会いたくないからな」
「へい」

 アレクが窓の外を覗くと、もう薄闇の降りる時刻になっていたようで、辺りは紫色の薄暮になじみ始めていた。

「もうこないな時間でっか。探索の再開は明日ですな」
「ああ。・・・・・・でも、せっかくチレジアまでやって来たことでもあるし、少しオーデルの街に出てみるのもいいかもしれない」
「さいでっか? ほな、お供します~」

 こうして二人は、オーデルの街へ出かけてみることにした。
 立ち並ぶ店は物資も豊富で、立ち寄る人々で大いに賑わいを見せている。
 さすがにチレジアの中心地、活気のある街だ。
 雑貨を眺め、人々を眺め、トールの分まで茶を買ってすすり――。
 先程まで遺跡探索していたのがウソであるかのような穏やかさだ。
 こうして二人はオーデルを堪能し、最後に一軒の酒場に立ち寄った。
 アレクはそこで地域の特産に舌鼓を打ち(トールにもこっそり渡したが)、地酒を堪能し、吟遊詩人の歌に耳を傾けた。

「どこの街でも、詩人の歌は興をそそるものだな」
「さいですな。ほれ、向こうのお姉さんが歌ってはるのは、地元の伝承みたいですな」
「ああ、野心家で有名なイライアス伯の時代の話か・・・・・・。悲恋、みたいだな」

 詩人はリュートをかき鳴らし、朗々と歌い上げる。

ScreenShot_20130211_172948937.png

『かつてこの地に王国あり。富み栄え民安楽なる楽土なり――』

 かつてこの地に栄えた古代王国。
 その国に魔女と恋に落ち駆け落ちした王子がいたのだという。
 王子はすべてを捨て、魔女に永遠の愛を誓い、彼女との間に子を成し、幸福な家庭を築いたという。
 しかし王の急死に際し、その火の粉は彼らにも降りかかってくることになる。
 宮廷の勢力争いに巻き込まれたのだ。
 出奔王子を擁立せんと、彼らに手を伸ばしてきたのがイライアス伯である。
 彼には王国を私せんという野心があった。そして更なる王国の拡張をも唱えていた。
 彼は王子の一家を捕らえると、妻子を人質に王子を脅し、国王候補として擁立し、その忌まわしき魔女の妻子を人知れず抹殺したと伝わる。
 王子がそれを知ったのはずっと後になってのことだった。
 そして彼は、その時既に王位にあった彼は半ば自死のごとく戦場に斃れたという――。

「・・・・・・分からない。こんな話の一体どこに惹かれるのか」
「アレクはん、浪漫とときめきの伝わらんお人ですな・・・」

 それでも二人は暫し宵のひと時を楽しみ、オーデルの市街地を後にした。

 翌日――。
 領主から調査を依頼された、2つ目の遺跡にやってきた。
 先の遺跡とは少し離れた位置にあるのだが、魔法による薄い照明をはじめ、内部の印象が似通っていると感じた。
 少し壁や床の様子を調べるのにしゃがんでいたアレクが、ゆっくりと立ち上がる。

「・・・前の遺跡とほぼ同年代、同じ様式の建築物か」
「ひょっとして、当時はそういうのがポピュラーだったのかもしれまへんな」

 暗赤色の外套の肩部分でぴょんぴょん跳ねていたトールが、天井のある部分を指す。

「ほれ、あの照明も同じでっしゃろ」
「・・・確かにな」

 ゆっくりと伸びた通路を突き進むと、曲がり角をコボルトの一団が奥へ向かって進んでいる現場を見つけた。

ScreenShot_20130211_174223000.png

 現状では気づいているのはこちらだけで、向こうには気づかれていないようだ・・・・・・。

「・・・・・・どないしますん?」

 さすがにこの状況で大声はまずかろうと、こっそりトールが囁く。

「やり過ごそう。・・・今ぶつかる必要はないだろう」

 遺跡の奥で会うことになるかもしれないが、アレクはとりあえず、今はコボルトの集団をやり過ごすことにした。
 さらに進むと、通路の西側奥、本来突き当たりになっていたであろう箇所の壁が崩れている。
 これも地震によるものなのだろう。
 先の遺跡でのこともある・・・警戒して臨まなければならないと、アレクは剣が極力音を立てないよう気をつけつつ、二つのドアを調べた。
 どちらのドアも施錠はされていないし、何者かが潜む気配も見当たらない。アレクはトールを懐にしまうと、まず北側のドアを開いた。

「倉庫でっか?」
「多分な」

 部屋には棚が立ち並ぶ。
 今も幾らかの薬品類が残るが、ジーニが管理している軟膏等を見慣れているアレクの鑑定によると、品質を保っているものはほとんど見当たらない。

「もうひとつの方を覗いてみるか」

 崩れた壁の向こう側にいるであろう妖魔たちを警戒しつつ、南へ移動する。
 すると、今度の部屋は各所に生活の痕跡が見受けられた。
 ただし文明的な生活用具はあまり見当たらず、乱雑な様子で、悪臭が立ち込めている・・・・・・。

「ぐ・・・・・・っ」

 アレクは咄嗟に左手で鼻と口を覆った。トールも、懐でじたばたしている。
 コボルトたちの生活の場所になっていたのだろう、その匂いに辟易してそっと抜け出した。

「さて・・・後は、この先だな」
「あの妖魔ども、おるんやないですか?」
「やり合うしかないな」

 覚悟を決めて、そっとアレクが次の空間へと足を踏み出したその時・・・・・・。

「っ!?」

ScreenShot_20130211_175502078.png

 強力な魔力で肉体を呪縛された!
 それでも必死に赤褐色の双眸を部屋の奥へとめぐらすと・・・・・・なんということだろう。

(こんなところで異界の魔神にでくわすとはな・・・・・・!)

 強力な不死者といい、今度の魔神といい、本当についてないとアレクは心中で舌打ちする。
 恐らく、呪縛のタイミングから推察するに、こいつは先にこちらの存在を察知していたのだろう。
 キラリと魔神の手元が光った、と認識した途端、アレクの腹部から勢いよく熱いものが噴き出す感触があった。

「っ!?」

 その感触をアレクははっきりと理解した。
 致命傷だ。

「アレクはん!?」
「反応する暇も与えられないとは・・・あっけないもんだ。俺もここまでか」

 お前は逃げろ、と瀕死の重傷人は小さくトールに囁いた。

2013/02/11 20:27 [edit]

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