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Mon.

Perfumed Garden 1  

 ――この程、チレジアにて大規模地震が発生、一般の建築物や民衆への被害は軽微ながら、各所に点在する遺跡群に大きな被害が出ていると報告された。
 ――その被害状況を詳細に調査してくれる者を募る。

 チレジア公爵のベルハルト・フォン・アドラー氏による依頼書に記載されていたのは、そういう内容だった。
 アレクは報酬を確認する――500sp。
 はっきり言って安いと言わざるを得ないが、親父さんが苦笑いしながら言うには、他にアレクに適当と思われる依頼がないらしい。
 親父さんの顔を立てようと、彼は引き受けることにした。
 チレジア。リューンの北東、既に辺境地とも言える地方である。
 アレクはやれやれと溜息をついた。

 さて、ここでチレジア公爵やその領地について少々触れてみよう。
 チレジア公は白髪の初老の領主で、特に領土拡大に関心を示さず、しかし領地の現状、あるいは民の暮らしを守るための労は惜しまないという、民にとっては理想的な君主との評判である。
 かつて遠い昔にこの地を治め、その野心ゆえ国内を大いに混乱させたというイライアスという男がいたが、ひどく対照的だとアレクは思っていた。
 またこのチレジアは、地震の多いことでも知られる地方であり、つい先日も大きな地震が起こったばかり。
 しかし地震多き土地ゆえに人々のそれに備える意識も高かったものか、ここへ至るまで特に大きな混乱が起こっている様子は見受けられなかった。
 そしてアレクは領主から、領内の2ヶ所の遺跡について、その地震による被害状況の調査を依頼された。

ScreenShot_20130209_015024375.png

「高名なそなたが引き受けてくれるとなれば、非常に心強い。よろしくお願いする」
「まだまだ未熟者ですが、全力で当たらせていただきたいと思います」
「まあ、探索済みの遺跡ゆえ、地震による落盤やらに気をつけておれば、概ね危険はなかろうと思うのだが」
「は。かしこまりました」

 アレクは無事チレジア公爵との契約を終えて、調査を依頼された遺跡・・・その一つに移動した。

「・・・・・・・・・」

 遺跡の内部はほの明るかった。
 魔法によるものなのか、どうやら照明が働いているらしい。
 『探索済みの遺跡ゆえ危険は少ない』と、領主からそう聞いているが――なにしろ単身での探索行となる。
 それを頭から信じて気楽に向かうわけにもゆかない。
 ≪黙示録の剣(アポカリプス・ソード)≫の柄をぽんと叩いて気を引き締め直し、アレクは探索を開始した。
 まずじっくりと入口近くに留まり内部の様子を詳しく眺めてみると、意外に保存状態は良好な様子である。
 ただ、これまでに獲得してきた知識・経験と照らし合わせてみると、この遺跡の建設された年代は相当に古いであろうとも感じられた。

「・・・・・・・・・」
「なんや、意外と綺麗ですな」

 訂正する。単身での探索ではない、アレクには雪精トールが憑いてきているのである。
 身長15cmのその存在は、ヒララギ山という北方の雪山からついてきた魔力を治療につぎ込む精霊である。
 赤い鬼のような外見をしているが、心優しく臆病なので、自分で直接戦闘する能力は持たない。

「・・・結局ついて来たのか」
「そらあ、兄さんの腕前に惚れましたさかい。誰もおらん、こういう時こそわてがしっかり治させてもらわにゃ」
「好きにしてくれ」

 アレクはトールとの会話を適当に打ち切ると、ふと足を止めた。
 通路の西側の壁が崩れている。

ScreenShot_20130209_020134578.png

 先の地震によるものかもしれない。
 しかし、まず東と北の方角にあるドアから調べる方が常道だろうと思ったアレクは、エディンの見よう見まねで2枚のドアを調べてみた。
 どちらのドアも施錠されておらず、向こう側に何か生き物がいる気配もない。
 少し悩みはしたが、まずは北からとアレクはドアを開いたが、そこは何もないがらんどうの部屋だった。

「・・・はずれか」
「まあ、地下の割に、乾燥して過ごしやすぅ出来てますな。ウサギの穴によう似てますわ」
「ウサギの穴に入った事があるのか?」
「そりゃまあ、長いこと生きてますから色々とありますわな」

 アレクとトールは話をしながら東側の部屋にも入ってみたが、やはり何もない部屋である。

「こうなってくると、西側ですかいな」
「・・・・・・・・・」

 崩れた壁を潜ると、そこは意外な装飾だった。
 愛らしい内装、幾つかの玩具箱・・・・・・・・・子供部屋だったようだ。
 その中でも、特に人形と小瓶がアレクの目に付いた。
 価値があるものかどうかはわからないが、他にめぼしい物も見つからない。
 あとは古い果実酒のビン(中は既にビネガーだ)とか、調理器具(所々欠けている)とか、ガラクタばかりだ。
 アレクはじっと人形を見つめた。古びているが、白磁製でそれなりに高価そうな人形である。


ScreenShot_20130209_020922593.png

 以前に領主が子供狩りをやっていた事件で拾った、村の小さな女の子の人形とは大違いだった。

「あの子がこれを見たら、きっと喜ぶだろうな」
「せやかて、もうあの村には行かれへんのとちゃいます?」

 トールの言うとおりだった。あの村の村長は”金狼の牙”たちを忌避している。村人も同様のままだろう。
 アレクは小さく頷くと、その足を北側にある通路へと向けた。
 レンガでしっかり舗装された通路は、何か大事な場所へ続いているように思われる。

「これは・・・・・・」

 通路を抜けた瞬間、目の前の不思議な光景に目を奪われた。 
 なんということだろう・・・この地上の光も届かぬ地下の一室に、緑豊かな花園が広がっているのである。
 花と緑とそれらの芳香に満たされた園――地下の一室ながら、草花が驚くべき生命力で床のレンガを押し上げ、その隙間から生い茂っている。
 この室の草花は、人の手で丁寧に手入れされているように見えて、それでいて力強く奔放に咲き誇っているようにも見える。

「なんでっしゃろ、手入れするモンもおらへんでしょうに・・・」
「ああ・・・。・・・・・・・・・!?」

 花園に見入っている二人の前に、一つの人型の影が現れた。
 現れたものが視界に入った瞬間、アレクは一瞬動きを止めてしまった。
 それがあまりにも、この室の雰囲気の遠くにあるものに思えて――。

(アンデッド・・・だが、どこか様子がおかしい・・・?)

 アレクはそのアンデッドの様子に少し違和感を覚えた。
 だがその違和感の元を確かめる暇もなく、目の前のそれと対することになった・・・アンデッドがアレクたちに対し行動を起こしたのである。
 亡者がそのしわがれ青ざめた両腕を振り上げる!

「く・・・!」
「アレクはん、あきまへん!こいつはやばいでぇ!」

 滑るような動きで一気に距離を詰めてきた亡者に、アレクは一撃を辛うじてかわしつつ、応戦の体勢を整えた。
 しかし、亡者の強さは異常なレベルだった。【召雷弾】をぶち込まれた腕は躊躇う様子もなく【死の接触】をしようとし、ならばと放った【風切り】も亡者本体にダメージを与える事が出来ない。
 雪精トールが懐から飛び出し、亡者の眼前で飛び上がって驚かせた隙をつき、アレクは花園から離脱した。

ScreenShot_20130209_022123500.png

 亡者は通路を通ってくる事はしないらしい――あの花園に縛り付けられているのだろうか?

「――っく、はー、はー、はー・・・」
「アレクはん!大丈夫でっせ、今傷を治すさかい!」
「あ、ああ・・・すまない・・・・・・」

 トールが時間をかけて傷を癒し、どうにかふらつかない程度まで体力を回復したアレクは、その場(子供部屋)の床に座り込み考え込んでしまった。

「・・・あの亡者、リッチか何か・・・だと思うんだが」
「わては北の生き物以外のことは、よう知りませんがな。でも危ないちゅーのは、よう分かりましたやん」
「・・・また、行けばいるだろうか」
「多分おるんやないですか?」

 アレクはトールの答えを聞くと、ふむと小さく唸ってから、片隅に転がっている人形や小瓶を睨みつけた。

「さっきは気づかなかったが、これ――」
「これがどないしました?」

 アレクはジーニから預かっていた≪蒼石の指輪≫を取り出し、【魔力感知】のコマンドワードを唱えた。
 紫色の視界の中で、人形と小瓶が光っているのが分かる。

「これはマジックアイテムか」

 罠はないだろうと踏んだアレクは、無造作に手を伸ばして人形と小瓶を掴む。

「!?」

 その時、何かと”繋がった”ような不可解な感覚がアレクに訪れた。
 考え付くところ全て確認してみたが、その感覚の元を探り当てることはできず――当面、この件は保留にする事にする。
 それより、アレクには試してみたいことがあった。

「もう一度戻るぞ。怖いならここに残れ」
「戻る!?アレクはん、何言うてますのん!!」
「いいから。・・・・・・俺は、この人形や小瓶が鍵なんじゃないかと思うんだ」
「鍵・・・でっか?」

 亡者がこの遺跡の重要部分・・・花園の番人だとすれば、この花園に続く部屋にあった人形や小瓶は、亡者の主人格や、親しい人物などの持ち物だったのではと思ったのだ。
 もし亡者がそれに気づいたら、少なくとも問答無用で襲われる事は避けられるのでは・・・とアレクは考えたのである。
 そしてその予測は当たった。
 通路を抜けてきたアレクに再び死の両腕を振りかざした亡者は、そのまま手を止め、振り上げていたものを元に戻したのである。
 その後、亡者は静かに滑るように室の隅へと下がっていった。そこから動く様子はない。
 どうやら大丈夫そうだ、と安堵したアレクの視線は、その開けた視界の先にある白い柱へと吸い込まれていった。

「・・・・・・・・・」

 アレクは初めてそれに気づいたような気分で、部屋の中央に立つ白い柱を眺めた。
 柱の周囲には白い花――この柱を中心にして花々が乱れ咲いている。
 なお去り難く心惹かれるものを感じ、アレクは柱の前まで進んでみた。
 その時、一人の少年の姿がその柱の前に朧に浮かび上がった・・・・・・。

「君は・・・・・・」

 しかし少年は悲しげな瞳をアレクに向け、ただそこに佇むだけである。
 そして――。

「消えた・・・・・・」

2013/02/11 19:58 [edit]

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