Fri.

金狼の牙のそれぞれ~アウロラ  

 アウロラは困惑していた。
 ≪狼の隠れ家≫の近所にある吟遊詩人の寄合所は、チラシにあった宣伝どおり詩人たちの有用な交歓の場になっているようで、酒場の喧騒とはまた違った賑やかさに包まれている。

(・・・・・・それは良いのですけども)

 今彼女を困惑させているのは、

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「≪狼の隠れ家≫の”金狼の牙”・・・・・・。中々の熟練冒険者なんですね。良かったら、今度少しばかりお話を伺いたいのですけど・・・」
「は、はあ・・・。ではまた次の機会の時に・・・」
「よろしいんですね!?じゃあよろしくお願いします!」

 これである。

(どうして、私達のことがこんなに知られているんでしょう・・・)

 発声法の基本、楽器の取り扱い、技術的なことの基本などを店主であるトミテに習う合間に、若い吟遊詩人たちが噂を聞きつけてしきりに彼女と傍らに座るミナスへ挨拶に来るのである。

ScreenShot_20130201_183054312.png

 もうそれだけでぐったり疲れてしまって、トミテは苦笑している。

「う、すいません。教えていただいてるというのに・・・」
「いえいえ。いいんですよ。どうも、詩人というのは詩の題材になりそうな人たちには敏感なようだ」
「私達のようなものを題材にしては、後々の世に冒険者に対して誤解を招きかねませんが」

 練習用にと取り出していた小さなハープをケースに戻し、こてりとトミテが小首を傾げた。

「そうですか?固有の詩を作るまでに至ってはいませんが、あなた方は結構噂になっているのですよ」
「え?」
「確かアケビ村ですか、古い海精を祀った神殿で大海蛇を倒したとか伝わっています。それから退廃都市バーベルにおいては、謎の冒険者グループ失踪事件を解決した上、トロールまで退治なさったとか」
「・・・ええ、確かにそんな事件もありましたけど・・・」
「聖北教会からは、巡察官に手を貸した事件で評価がされているそうですね」
「・・・え。そうなんですか?」
「エンヅーさんの依頼かな?そんな風に言われてたんだねえ」

 眼を白黒させているアウロラの横で、ミナスが感心しながら聞いている。
 ・・・・・・もっとも、聖北教会のほうで評価がなされているのは、カルバチアの魔道学院に対して、人死にが出る前にその原因を片付けたことから恩を売ったという、教会上層部の思惑が絡んでいたりするのだが、それは言わぬが花というものだろう。
 トミテはクッキーを食む小さなエルフに淡く微笑んで付け加えた。

「そうそう、花の街ファレンに新しく教会が出来たとか。あなたがきっかけ、という話も聞いておりますよ」
「あれ、そんなことまで?」
「言ったでしょう、ここは吟遊詩人の寄合所・・・。楽譜のみならず、色んな情報を交換する場でもあるのです」

 繊細な手つきで楽器を扱う時のように、店主は二人に紅茶を淹れて勧める。

「お疲れになったでしょう。どうぞ召し上がれ」
「ありがとうございます」
「ありがとう!」

 礼を言う二人の姿に頷いてから、トミテは「そういえば・・・」と口を開いた。

「噂になっている、といえば。”歌の一族”というのをご存知ですか?」
「”歌の一族”ですか?いえ・・・」
「深緑都市ロスウェルの近郊に、キルヴィの森というところがあります。その奥深くに存在する、憩いの滝という場所でエルフが歌を教えているというのですよ」
「エルフが!?」

 ガタッ、と椅子を揺らして立ち上がったのはミナスである。
 傍らのアウロラも眼を丸くして驚いている。

「それ、どこの氏族のエルフかとか分かる!?」
「申し訳ありません、あくまで誰かが持ち寄った噂だけですから・・・」

 興奮するミナスに対して、店主は気の毒そうに首を横に振った。

「そっか・・・・・・」
「・・・ミナス。違う氏族でも何か情報が入るかもしれませんし、私もそのエルフさんが教えてる歌に興味があります。ひと段落したら、行ってみませんか?」
「え、いいの?だって・・・僕わがままなんじゃ・・・」
「吟遊詩人同士で交流を図るのも大事・・・そうですよね、トミテさん?」
「ええ、そうですね。多くの人と情報や歌を共有するのが私の目標ですので」

 旅先で珍しい楽譜などを見つけたら、ぜひここで披露してみせて欲しい、と彼は言う。
 それ自体は全く構わないものの、さていつになったら一人前の吟遊詩人として声が出せるだろうと、思わずアウロラは遠い目になった。

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■後書きまたは言い訳
店シナリオによるオリジナルストーリーです。
ジーニ(アタノオル:SIGさん作)の場合は、「傍若無人な彼女だって、いろいろ努力してるんだよ」ってあたりを。
エディン(律法の管理人:飛魚さん作)の場合は、「お父さんの休日」(何)な姿を。
アウロラ(吟遊詩人寄合所:烏間鈴女さん作)の場合は、「吟遊詩人の称号貰うためにレッスン中」なところと、本来は吟遊詩人寄合所の雑談には出てこないのですが、周摩さんによる「歌の一族」への伏線を張らせていただきました。

歌の一族とミナスの氏族に関連性はないのですが、同じエルフと出会う事自体が稀ですので、ミナスにとっての救いというか癒しになるかと。ギルたちは種族差別をしていませんが、やっぱりそれまでと全然違う社会の中で暮らすって、子供にとってはやたらとストレスになるんじゃないかなーとか思ったので。

後はアレクのソロシナリオなんですが・・・さて、どうなるやら。
そういえば、各PCのイメージキャラクターボイスが何となく固まってきました。脳内で再生されると面白いですね。読者さん側でも、「このキャラならこの声優さんだな~」とかあるんでしょうか?

2013/02/08 22:05 [edit]

category: 小話

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