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金狼の牙のそれぞれ~エディン  

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「霊鳥の双翼剣。2刀にて右と左の切上を放つ。深く敵に踏み込むことが必要なその斬撃は必中だ。・・・1800spになるな」
「ハイハイっと・・・。金貨と銀貨混じってていいか?」
「かまわん」

 エディンが今いるのは、とある聖北教会の小礼拝堂だった。
 裏通りにあるせいか、立て付けの悪いドアやがたのきている教壇などのせいなのか、どうにも陰気なイメージが付き纏っている。
 人も、修道女なんて華はない。
 卑屈そうな視線の老神父に、黒外套と隻眼がこの上なく怪しげな男性がいるのみである。
 しかし、その怪しげな男性こそが、現在エディンの双剣の師であり、教会の凶悪な祓魔師(エクソシスト)であるミゼルその人だった。
 もともとエディンが教わろうとしている技は、聖北教会において祓魔師に支給される銀の細剣を使った剣技で、全て異端を滅する為に開発されたのである。
 ミゼルは、広く流布すれば教会の律法もより強固になるだろうと、金銭を取って教授する事を了承した。
 そしてミゼルの休暇を消費して、集中講習してもらう段取りになったのである。

「よし、そこに立ってくれ。いいか・・・」

 ミゼルは長髪を懐から取り出した紐で一つにくくり、腰に佩いていた銀の細剣を抜き出した。
 ぶらり、と垂れ下がった二本の腕は外套に包まれているものの、鉄片を打ちつけたような見事な筋肉に覆われていることに、エディンが気づかざるを得なかった。

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「神速の切上は後退を廃案にし、両脇から迫る刃は回避を許さず、その見に必ずや、二本の剣閃を刻み付ける」

 ゆっくりとミゼルの細剣が説明をなぞるように踊る。

「――この銀の剣の奥義の一つだ。初動の構えが特殊ゆえ、腰に剣を吊っているのなら、抜刀術として放つ事も出来るぞ」
「・・・ああ、なるほどな。こういう動きになるのか」

 実際に自分で構えてみて頷く。

「君の場合は片方がナイフだから、リーチが足りない分はもう少し踏み込みが必要になるだろう。素早さも問われてくるぞ」
「一歩の間合いが他人よりゃでかいから、そこでカバーできんものかね?」
「出来ない事もなかろう。ようは相手の動く位置を予測して先回りすればいい」

 論より証拠、と二人は試行錯誤しながら動きをシミュレーションしてみる。
 5時間ほど経って休憩になり、手ぬぐいをにわか弟子に手渡したミゼルは、「それにしても」と切り出した。

「あン?」
「どうしてそう強くなりたがったのかね?」

 そうそう戦いを好んでばかりのように見えないがと言われ、エディンは頭をがりがり掻いた。

「改まってそう訊かれると恥ずかしいもんだな。・・・バランスの為、かねェ」
「バランス?」
「そ。あんたも、うちのパーティ面子は知ってるだろ?」
「うむ」

 もともと、”金狼の牙”がミゼルのいる小礼拝堂と縁を持ったのは、ミゼルが≪狼の隠れ家≫に忘れていった細剣を、教会からの依頼の内容確認がてら、アレクが届けに行ったのが始まりである。
 その時に顔見知りになったのはアレクだけだったが、数日後に”金狼の牙”全員がこの小礼拝堂に足を運び、ミゼルの元に講習内容を確かめにやってきた。
 その際、すぐ実体のない者たち相手の技の有用性に気づいたエディンが、その場で【磔刑の剣】の技を教えてもらった経緯がある。

「6人のうち、まともな接近戦をやれるのは半数しかいねえ。だから、俺は中衛の位置に立っているべきなんだ。総攻撃が必要なら前に出るし、魔法使いたちが襲われそうならそれをある程度は守ってやらなきゃいけねえ」
「・・・そこまでは理解できるが」
「本来なら俺が相手をするのはラスボスじゃねえ、それは戦士二人の仕事だ。俺は雑魚を追っ払うのがメインの仕事」
「・・・・・・ならば、なぜ必中の技が必要になる?」
「まれにあるのさ。雑魚はいない、大物一匹だけって仕事も。そうなってくるとどうしても大技が必要になる」
「ほう。そういう事か・・・つまり、前衛にいなければならないパターンが増える、と君は踏んでいるのだな」

 エディンはゆったりと頷いた。戦士たちの実力がつくにつれて、自分の力不足を感じる部分も多い。
 けして戦士と同等に戦おうと思っているわけではないが、今までの技ばかりでは中衛の役目を果たし続けるのは難しい。

「年長者というのも大変だな」
「そーそー、大変なんだよ。好きでやってる事だからしゃーないがね」

 エディンは手ぬぐいをミゼルに返し、音を立てずに立ち上がった。

「さーて、もうひと踏ん張りするかー」

2013/02/08 21:46 [edit]

category: 小話

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