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金狼の牙のそれぞれ~ジーニ  

 大量の書物は薬液の香りが染み付き、ほどよい照明はフラスコの水銀を照らす。
 脇の錬金炉が静かに炎をゆらしているのを見守りつつ、ジーニは深く息を吐いた。

「やれやれ。これで出来上がってくれればいいんだけど・・・」

 先程そそいだ液体を腹に収めた蒸留器を、インクで汚れた繊手でつるりと撫で、最初にここに来た時のことを思い出す。
 以前、パランティアのバザー後に娘さん(あのシャドーボクシングは怖かった)から逃れようとリューンを出たことがある。
 そして、あちこちさ迷っていた時にこの工房にも立ち寄り、新しい術式を修めることが出来た。
 ジーニが修めたのは「呪縛」と「魔法の鍵」の鍵符を混ぜた液体の作り方で、経験の浅い錬金術師には到底作り得ないそれを、たった2日で理解し、自分で作ったのである。
 呪文による術式を展開するよりは、特殊な加工を施した薬瓶に抽出・凝固の過程を経た液体を詰めるほうが、ジーニにはやり易かった。
 【魔法の矢】や【眠りの雲】に代表される初期魔術であれば、詠唱にそう苦労もしないのだが、高等魔術になればなるほど詠唱は複雑に長くなっていく。
 熟練の魔術師であれば、その詠唱に使われる展開式を理解した上で、ルーン文字――ルーン文字は1語にいくつかの単純な意味が篭っている――の応用により詠唱を短くも出来るようだが、マイペースが信条の彼女にとってみれば、「何でそこまで苦労してやんなきゃいけないのよ!?」・・・ということらしい。
 薬瓶による魔術展開は詠唱を必要としない分、発動条件を色々自分で設定できるのだが、ジーニは薬瓶が割れて1秒後に発動するようにしている。
 特殊な加工を施した薬瓶の扱いにも、薬瓶を入れるためのホルダーが仕込まれたベルトポーチの付け心地にも、そろそろ慣れた。

「・・・・・・後は、今作ったこいつが使い物になってくれればなんだけどねー」

 蒸留器に段々とたまりつつある透明な液体を、硝子越しに突付く。
 それは「解放」の要素を徹底的に抽出したものである。

ScreenShot_20130201_182641296.png

 対象についている召喚獣や魔法無効化、補助魔法の解呪に留まらず、精神状態や中毒などまでも「解放」してしまうという凄い力を秘めているのだ。
 おまけに薬瓶を投げつけるだけでいいので、魔法などによって沈黙した状態でも使うことは可能となる。
 ただ、問題があるとすれば――。

「『鍵符』がねー。さすがに束縛と沈黙の解放分まで込められなかったからなあ。作用はすると思うけど、これでどこまでやれるか・・・」

 沈黙を癒す事が出来る≪ミューズの涙≫という青いペンダントは、呪歌まで修めることとなったアウロラに贈っている。
 もともと、パランティアのバザーでペンダントを見つけたのはアウロラの方だった。
 それをアウロラが魔法の効果があるのなら、護身用ナイフで一応の接近戦もやる自身より必要だろうと、快くジーニに貸していたのである。
 錬金術に半端ながら手を出すようになった結果、≪ミューズの涙≫なしでもやれることが多くなったのはジーニの方で、だからこそペンダントを返すつもりになった。後はどれだけこれを生かせるかがキーになるだろう。

「よし、そろそろ瓶に移そうかな。で、これが終わったら次はこっちと・・・」

 ジーニが机に新しい錬金術のレシピを広げた。
 広範囲に及ぶ雷撃を生み出す液体の作り方で、【災いの薬瓶】というらしい。

ScreenShot_20130201_182645468.png

「災いねえ・・・・・・。あたしにピッタリじゃない?」

 彼女はふっと笑った。自嘲にも似た笑みだった。

2013/02/08 21:44 [edit]

category: 小話

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