命を失くした話 3
無造作にギルバートはドアを蹴り破った。
得物を握り直し、鋭く闇を見据える。
「・・・隠れてないで出てきな。もはや隠れても無駄だ」
「・・・・・・・・・」
ギルバートが見据えた先にはこの村の村長の姿があった。
ゆっくりとした足取りでギルバートの元まで歩み寄ってくる。
「げに恐ろしき男よ・・・ただの一人で村の人間を殺し尽くすとは・・・」

村長はゆっくりと愛用のパイプを左手に掲げて言った。
「我らが何をした?貴様ら冒険者には我らを裁く権利はあるまい」
「惚けなくていい。ここが小規模な麻薬の精製場である事は調査済みだ」
ギルは静かに言い渡した――この村に来たのは、ある人物からの依頼である事。
「麻薬が世に広まる事を危惧しての事だろう」
(麻薬の・・・精製場・・・?)
エセルはひたすら身を硬くして二人の会話に聞き入っている。
「この村で採れるラッシュと呼ばれる麻薬・・・それは体質的な都合で大人の男性しか服用できない。この村に女性が少ない理由が分かる。昔は村の全員で吸っていたのだろうな」
黒い眼が細められる。憤慨?悲哀?どちらだろう――?
「辛うじてこの世に生を受けることが出来たのはあのエセルのみだ」
(・・・・・・・・・!!)
「・・・いつから気づいておった」
「俺が集会所に行ったとき・・・無理に煙草を奨めてくるからそのときに確信したよ」
ギルバートは静かに首を振った。
「お前らはこうやって村の人間を増やして来たんだ。禁断症状という見えない鎖で旅人をこの村に縛ったんだ」
「ふん・・・。それで、どうするつもりじゃ。僅かに・・・じゃが、街には輸送した」
手のパイプを再び口に戻し、もったりとした口調で村長は喋った。
「そやつらはここの薬がなければ死んでしまう。貴様はそういった人間をむざむざと見殺しにするか」
「それは、お前の台詞じゃない。見殺しにするもしないも、俺は彼らが麻薬をヤった事とは全くの無関係だ。残念だが、今の医療技術では麻薬の呪縛から脱却することは不可能に等しい」
不心得者であるギルバートは口を歪めて笑う。
「たとえ聖北の神の力でもな。だからといって麻薬を許すわけにはいかない。自分の意思で禁断症状と闘うか、あるいは・・・」
「・・・・・・・・・」
(・・・・・・・・・)
村長は黙り込んでいた。それに合わせる様に、隠れているエセルもそれ以上のことを考えられない。
重々しい音を立てて、ギルバートが斧を構える。
「お喋りが過ぎた・・・そろそろ覚悟して貰おうか」
「ふん・・・とうに覚悟は出来ておるわ。だが、最期に教えて欲しい。貴様の依頼人とは・・・」
「悪いが、冒険者の義務だ。依頼人の素性を話すことは出来ない」
「そうか・・・まぁ良い。間違いではないじゃろう・・・」
言い残す事があるかギルバートが問うと、村長は銀貨の入った袋を投げて寄越した。300spあるという。
「その金で、エセルを助けてやってくれ」
(・・・・・・・・・!?)

「あの子は何も知らない。村で麻薬を造っておることも我らの正体も知るまい・・・」
村長は皺をいっそう深めて、いとし子を見る時のように微笑んだ。
「あの子はこの村の最期の良心なのじゃ・・・言うなれば、腐ったこの村の誇りじゃ」
後生だから助けてやって欲しい、と言い募る村長に、ギルバートは努力はすると答えて斧を振るった。
「村、長・・・・・・」
「次は君だ、エセル」
ギルバートは得物を収め、懐から短剣を取り出した。
「・・・うん。あんなこと聞かされたら、私だけ生きてる訳には・・・」

得物を握り直し、鋭く闇を見据える。
「・・・隠れてないで出てきな。もはや隠れても無駄だ」
「・・・・・・・・・」
ギルバートが見据えた先にはこの村の村長の姿があった。
ゆっくりとした足取りでギルバートの元まで歩み寄ってくる。
「げに恐ろしき男よ・・・ただの一人で村の人間を殺し尽くすとは・・・」

村長はゆっくりと愛用のパイプを左手に掲げて言った。
「我らが何をした?貴様ら冒険者には我らを裁く権利はあるまい」
「惚けなくていい。ここが小規模な麻薬の精製場である事は調査済みだ」
ギルは静かに言い渡した――この村に来たのは、ある人物からの依頼である事。
「麻薬が世に広まる事を危惧しての事だろう」
(麻薬の・・・精製場・・・?)
エセルはひたすら身を硬くして二人の会話に聞き入っている。
「この村で採れるラッシュと呼ばれる麻薬・・・それは体質的な都合で大人の男性しか服用できない。この村に女性が少ない理由が分かる。昔は村の全員で吸っていたのだろうな」
黒い眼が細められる。憤慨?悲哀?どちらだろう――?
「辛うじてこの世に生を受けることが出来たのはあのエセルのみだ」
(・・・・・・・・・!!)
「・・・いつから気づいておった」
「俺が集会所に行ったとき・・・無理に煙草を奨めてくるからそのときに確信したよ」
ギルバートは静かに首を振った。
「お前らはこうやって村の人間を増やして来たんだ。禁断症状という見えない鎖で旅人をこの村に縛ったんだ」
「ふん・・・。それで、どうするつもりじゃ。僅かに・・・じゃが、街には輸送した」
手のパイプを再び口に戻し、もったりとした口調で村長は喋った。
「そやつらはここの薬がなければ死んでしまう。貴様はそういった人間をむざむざと見殺しにするか」
「それは、お前の台詞じゃない。見殺しにするもしないも、俺は彼らが麻薬をヤった事とは全くの無関係だ。残念だが、今の医療技術では麻薬の呪縛から脱却することは不可能に等しい」
不心得者であるギルバートは口を歪めて笑う。
「たとえ聖北の神の力でもな。だからといって麻薬を許すわけにはいかない。自分の意思で禁断症状と闘うか、あるいは・・・」
「・・・・・・・・・」
(・・・・・・・・・)
村長は黙り込んでいた。それに合わせる様に、隠れているエセルもそれ以上のことを考えられない。
重々しい音を立てて、ギルバートが斧を構える。
「お喋りが過ぎた・・・そろそろ覚悟して貰おうか」
「ふん・・・とうに覚悟は出来ておるわ。だが、最期に教えて欲しい。貴様の依頼人とは・・・」
「悪いが、冒険者の義務だ。依頼人の素性を話すことは出来ない」
「そうか・・・まぁ良い。間違いではないじゃろう・・・」
言い残す事があるかギルバートが問うと、村長は銀貨の入った袋を投げて寄越した。300spあるという。
「その金で、エセルを助けてやってくれ」
(・・・・・・・・・!?)

「あの子は何も知らない。村で麻薬を造っておることも我らの正体も知るまい・・・」
村長は皺をいっそう深めて、いとし子を見る時のように微笑んだ。
「あの子はこの村の最期の良心なのじゃ・・・言うなれば、腐ったこの村の誇りじゃ」
後生だから助けてやって欲しい、と言い募る村長に、ギルバートは努力はすると答えて斧を振るった。
「村、長・・・・・・」
「次は君だ、エセル」
ギルバートは得物を収め、懐から短剣を取り出した。
「・・・うん。あんなこと聞かされたら、私だけ生きてる訳には・・・」
