Sat.

子供狩り 4  

 城の裏口を見つけた”金狼の牙”たちは、急いで城の中を歩いていた。
 ・・・・・・実は途中の応接間で、エディンが仲間に内緒でアンティークドールを荷物袋に突っ込んだりしてたのだが、幸いというか悪運が強いというか、誰にも気付かれていない。
 1階にある最後の部屋に入ると、そこは異様な雰囲気が立ち込めていた。

「なんだ・・・・・・ここは・・・・・・」

 密閉された部屋のはずなのに、どこからか冷気を帯びた風が流れ込んでくる。いやに肌寒い。
 他の部屋より埃を被っている様子を見て、エディンは「あんまり使われてねえ部屋だな」と見当をつけていた。

「なんでしょう、あのかまどは。台所でもないのに・・・」

 正面に置かれている大きなかまどを指し、調べてみてくれないかと言い出したアウロラだったが、エディンはすでに油断のない足取りで近づいており・・・・・・。

「ひでえな、炭が。何をこんなに焼いたん・・・・・・・・・・・・」
「エディン・・・・・・? 何があったんだ」

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「やめろ。見るな。胸が悪くなるぜ」

 普段はのんびりした口調のエディンの声が、異様な緊張を孕んでいる。
 問いかけたギルは見ないことにした。

「・・・・・・やめておこう。なにがあるのか大体想像がつくからな」
「ひでえ奴だぜ・・・・・・ここの城主は。血も涙もねえ」

 行こう、とエディンに急かされて冒険者たちは扉に向かった。
 その時、いっそう冷たい風がミナスの頬を撫でた。

「なに?風が、」
『アア・・・・・・イタイヨ・・・・・・コワイヨ・・・・・・』
『ダレカ・・・・・・』
『タ ス ケ テ ・・・・・・!』
「これ、は・・・・・・!」

 ≪護光の戦斧≫を構えてギルが驚きの声をあげると、アウロラが「気をつけて!」と叫んだ。

「これは恐らく、領主の手にかかった子供たちの怨念・・・・・・!」

 さ迷う亡霊の悲嘆に呼応したのか、新たな亡霊が集まってくる・・・。
 一体目は手早く倒した”金狼の牙”たちだったが、新たに現れた亡霊がアレクに手を伸ばし、その体力を削っていく。

「くっ・・・なんて、冷たい・・・・・・」
「アレク!今、【活力の法】を!」

 慌てて治癒呪文を唱えるアウロラにも、襲いかかろうとする影がある。

「駄目!渓流の魔精、ナパイアス!アウロラを守って!」

 しかし、ナパイアスの激流は亡霊をすり抜けていってしまった。
 慌てたミナスの肩をとん、と安心させる為に叩いてから、エディンがよくしなるレイピアの刀身より魔力の波動を放つ。
 クリスベイルと銘のあるレイピアのそれは、生半な魔法より強烈に亡霊へと突き刺さった。
 残っていた一体も、ギルと治療を負えたアレクの攻撃で存在を消失した。

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『パパ・・・・・・ママ・・・・・・』
『アリガト・・・・・・アリガト・・・・・・』
「・・・・・・ごめんなさい。貴方たちをちゃんと見送ることが出来なくて・・・」

 アウロラは哀れな子供たちの魂に十字を切った。
 今回はやむを得ず強制的に浄化してしまったが、このような恨みや哀しみのこびりついた魂は、強制浄化では上手く天に召されることが出来ないことが多い。
 もっと高位の司祭などであれば、彼らを説得してちゃんと送ることができるだろうが・・・。アウロラは悲しげに首を振った。
 気を取り直した一行は階段を上がった。
 2階に上がってすぐの扉を開くと、図書室のような部屋である。

「ちょっと待って。こっちは嘘っぱちばっか・・・こっちのも魔術書が多いわね。ん、これは・・・・・・日記かしら」

 魔術書の棚に埋もれていた一冊の日記を発見したジーニは、アレクが気を利かせて持ってきた椅子に腰掛け、素早く黙読を始めた。

「・・・・・・結構、1ページ目から思考が怪しいんだけど。ギルバート、これ口に出すの?」
「教育に悪そうか?」
「そうね、お勧めしないわ」
「ミナス、耳塞げ」

 少し不満そうな顔つきではあったが、ミナスもリーダーのこういう時の発言に反抗するのは良くないと直感的に分かっていたので、大人しく尖った耳を小さな手で覆い隠した。
 そしてそれは、最善の選択であった。

 ――弟の乱心によって戦場から引き離された領主は、徐々に不満を募らせていった。
 戦場における命のやり取り、断末魔の声を聞いて満たされた日々――それを渇望していたオーギュストは、有体に言って血に飢えていたのだろう。
 そんなある日、彼は十六代領主テオドールの日記を読んでしまうのである。
 禁じられた黒魔術に耽溺していたテオドールの所業に、彼も同調してのめりこむようになり、呼び寄せた黒魔術師の一人から、「虫よりは獣。獣よりは人間。穢れのない子供が望ましい。そして、貴方様にはそれが出来ましょう」と生贄について告げられた。
 それこそが、あの貧しい村々の子供を搾取するという外道の行いの始まりだったようだ。

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「へー。『領民の命など塵のようなものだ』だってさ。こいつ、誰のお陰で食料食えてるのか分かってないわね。畑は耕す人がいなきゃ、収穫だってできないのよ?」
「反吐が出るな・・・」
「ここでは出さないでよ、エディ。要約すると、子供を黒魔術の生贄にするために、お城に招いて殺したわけね」
「・・・・・・人の所業じゃないですね」
「家系でおかしいのかしらね。十六代領主も似たような事やってたみたいだし」
「家系だろうが、なんだろうが。止めさせるぞ」

 ギルの言に皆が頷き、ミナスにもう終わったよと呼びかけた。

「・・・僕だって、ちゃんと冒険者だよ?さっきもあんな目にあったんだし、どんなことかくらい想像は・・・」
「知ってるし分かってる。お前のためというより、俺たちのためだと思ってくれよ」

 ミナスのある意味正当な抗議に、ギルは珍しく言葉を遮って強く言った。
 エディンが二人の気まずさを取り成すように、波打つ亜麻色の髪を撫でる。

「つまりさ。リーダーは、お前さんにそんなのを平気で聞かせる人間でいたくない、ってことさ。甘いとは思うが、お前さんもそこはちょっと大人になって譲歩してやってくれ」
「ん・・・分かったよ」

 オーギュストが子供をさらうわけを理解した一行は、更にセシルが連れて行かれた場所を探して、あちこちを歩くこととなった。
 倉庫で宝箱を見つけ、ジーニがアウロラの気を逸らせた隙にマジックアイテムを手に入れる。
 そして・・・・・・。

 踏み入れた足がふわりと沈む絨毯。華美な家財道具。大人二人が寝ても余裕があるだろう寝台。
 いずれもここが領主の寝室であることを示していた。
 しかし、部屋の主の姿は無い。

「・・・少し調べてみよう」

 アレクの提案であちこちを探していた一行だったが、エディンはとある本棚の前に立ち止まって動かない。

「・・・・・・・・・」

 長い指を持つ手が、するりと棚の後ろ側を触っていた。

「やっぱり。この本棚、スライドするぜ」

 棚の後ろに隠れていたスイッチを押すと、そこに下へ続く階段が現れた。寒々しい空気が流れ出てくる。

「恐らくここが正念場ね。・・・・・・準備はいい?」
「いつでもよろしいですよ」

 補助魔法をかけ終わり、召喚も終えた”金狼の牙”たちは、ゆっくりと足を踏み出した。

2013/02/02 21:20 [edit]

category: 子供狩り

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