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Tue.

雪山の巨人 4  

 火の粉の爆ぜる音がする・・・・・・・・・。
 暖かさに包まれている――火花の散る心地よいリズム音を目覚ましにアレクは目を開いた。

「う・・・うん・・・???」
「良かった。もう大丈夫そうだね」

 軽く頭を振り、現状の把握を始めるアレクの背中をミナスが支えた。

「ここは?」
「精霊たちによると、ヒララギ山中にある大洞窟の中・・・みたい」

 なるほど、凍てつく風も入って来ない。洞窟の中、焚き火が明々と燃えている。

「アレクが守ってくれたお陰で、僕が一番初めに気が付いたんだよ」
「他の皆は?」
「そこに並んでるよ。まだ気を失ってるけれど、致命傷はないっぽい。そのうち目を覚ますんじゃないかな」

 ミナスは悪戯っぽく微笑んで、一点を指さした。

「ダレイドさんもこのとおりさ」

 皆、傷は癒えていない様子ではあるが重体というわけでもなさそうだ。
 ミナスによるとリース達も生きており、縄で縛り付けておいたらしい。
 あの雪崩の中を揃って生き延びるとはなんという悪運。いや生き運か。刹那、安堵したものの・・・。

「っ、後ろ!」

 フロスト・ジャイアントの見覚えある姿がミナスの背後に現れ、アレクは即座に抜刀して構えた。
 しかしミナスは警戒することなく立ち振る舞っている。

「ああ、薪を取って来てくれたんだよ」

 むしろ勝手しったる仲とでも言えそうな・・・これはどういうことだろう?
 ミナスは静かに語り始めた。
 雪に埋もれた冒険者達を掘り出し、洞窟まで運んでくれたのはこのフロストだったのだ。

「目が覚めたらフロストに抱えられていたの。ビックリしたけど、温厚な奴で助かったよ」

 恐るべきは子どもの順応性といったところか、けらけらとミナスは笑った。

「そうか。言葉は通じないだろうが・・・ありがとう」
「うぉー。うぉうぉうぉっ、うぉうぉうぉうぉ」
「ん?喜んでるみたい」
「言葉が解るのか?」
「ううん、せいぜい身振り手振りで簡単なことが通じるだけ。それでもなんとなく言いたい事は分かるから、こいつ賢いよ」

 2人の会話が興味深いらしい。顔を見比べては楽しそうに身体を揺する。

「フロストは、しきりに何かを伝えたがっているんだ。でも細かい話らしくて、さっぱり分かんない」

 しきりにダレイドを指差している、とミナスが説明し、アレクは首を傾げた。
 ダレイドの父親はフロストが殺したと聞いているが、この温厚なフロストがそんな凶事を起こすようには見えない。
 誤解ではないだろうかと二人が結論を出し、頭を捻ってるうちに――。
 フロストは洞窟の奥へせっせと歩いて行ってしまったが、すぐさま何かを握りしめてせかせかと戻ってきた。
 彼あるいは彼女が持ってきたのは、古ぼけた一通の手紙だった。

ScreenShot_20130126_035740171.png

 躊躇う様子も無くミナスが受け取り、それを広げる。

「何と書いてあるんだ?」
「ええと・・・」

 インクが滲んでただの染みになっていた箇所もいくつかあったが、何とか前後の文脈から類推して当てはめ読んでいく。
 それによると、この手紙を書き記したのはレベイド――ダレイドの父らしい人物だった。
 癒し手である彼は、薬草採集の際にリース一味に尾行され、貴重なオルウェン草の苗を取られてしまうこととなった。
 それに憤慨して抗議した彼は、逆上した一味から瀕死の重傷を負わされ、フロストに辛うじて救われたらしい。
 そしてこのフロストが温厚で賢い事に賭け、自分をあの雪崩が起きた峠――オルウェン村の近くまで運ぶよう頼んだというのだ。

『今、私は深手を負っている。』
『洞窟から出て、果たしてどこまで体力が持つかは疑問だ。しかしこのフロストに賭けるしかない。』
『もう一度会いたい、ダレイド、レベッカ』

 記述は、そこで終わっていた。

「フロストはこの手紙を・・・届けようとして、下山する間中ついてきていたのだろうな」

 アレクはふっと微笑む。
 二人が手紙から読み取った事で盛り上がっている中、ダレイドが目を覚ました。

「ううっ・・・私は雪崩に飲まれて・・・ここは・・・一体?」

 目を覚ました彼が最初に見たものは・・・フロストであった。
 暖かい焚き火が火の粉を爆ぜる。しかし、空気は凍りつく。
 アレクとミナスは、そこで漸く彼らの依頼人が目を覚ましたことに気付いた。

「こいつ・・・っ!!!」

 今やダレイドにはフロストの姿しか目に入らないようだ。
 あろうことか彼は腰に差していた鉈に手を伸ばし、フロストに斬りかかって行った!

「いけない・・・っっ!!!」

 アレクが叫んで、鋭く≪黙示録の剣≫でもって鉈の柄を撃ち、跳ね飛ばす。
 唯一の武器がなくなった事に衝撃を受けるダレイド。だがしかし、それにより若干周囲を見回す余裕が出来た様だ。

「こっ・・・この状況は一体・・・!?皆さんも何をしているのですか!」

 ミナスが手紙を読ませようと宥めるも、それに激昂した彼はフロストに指を突きつけて叫ぶ。

「目の前にフロストがいるのに、何の話があるというのだ!依頼人として君らに命ずる!こいつをぶちのめせ!!」
「いいえ、梃子でも動きません。その願いが、向ける相手を違えている限り」
「何だと!?」

 彼は素手のままフロストに飛び掛った。
 だが圧倒的な体格差の前、自身がぶつかった反動だけで勝手にダレイドが転んでしまった。

「うわっ!」
「うぉぉー・・・ん・・・」

 フロストはただ、悲しそうな声をあげるばかりである。哀れんだミナスが近寄り、彼の足を撫でた。

「何故だ・・・なぜ反撃しないんだ!そんな目で私を見るな!!お前は父の仇なんだろう・・・父の・・・」

 そこから先は声にならず、ダレイドは嗚咽とともに崩れ落ちる。彼が平静を取り戻すまでもう暫く時間が必要だった。
 それほどまでに彼の悲しみは深く、家族を思う気持ちも深かったのだろう。
 慟哭を終わらせ、何もかもを受け入れる表情になったダレイドに、アレクとミナスは明らかになった事情を説明した。
 驚く依頼人にインクの滲んだ手紙を握らせると、彼は貪るように何度も手紙を読み返した。
 彼はただ一粒の涙を零した。

「ん・・・?手紙を結んでいる紐に何か巻きつけてある・・・」

 それは茶色く硬い、小さな種子であった。

「これは・・・!去年から採れなくなっていたオルウェン草の種子じゃないか!」
「良かったね、ダレイドさん!!」

 ミナスが種子を握り締めるダレイドの手に、自分の小さな手を重ねて喜んだ。

 翌日。
 冒険者達とダレイドは、洞窟のフロストに別れを告げ下山した。
 ダレイドはすっかり穏やかな顔つきになってフロストを見上げ、謝罪と別れを口にした。
 リース一味はエディンがギルド式にきつく縛り、武器で脅しながら歩かせた。
 連れ帰ったリース達は、ダレイドの父レベイドの遺した手紙からその悪事が明るみとなり、村の懲罰房に押し込められることとなる。
 幾日かすれば、彼らは街の治安隊によって留置所へ護送されることだろう。

「やれやれ、今回はちょーっとハードだったわね」
「まさか雪崩に飲まれるとはな」
「ほんと、大自然は凄いよなあ。あっはっは」
「「ギルは何でそんなに元気なままなの(なんだ)」」

 筋肉痛で軋む身体をゆっくり動かしながら、大人コンビが恨めしげにギルを睨んだ。
 ここはダレイドの家。
 家主は、冒険者達への依頼料を出しに奥へ行ったところだった。
 本当の父の仇をとり、妹を救う為の薬草も確保、そして稀少なオルウェンの種子まで手にしたダレイドは、これからきっと大忙しになるのであろう。村の癒し手は彼だけだというから。
 700spの約束だった報酬を1000spにして差し出してきたダレイドの顔は、しかしかなり晴れやかである。

「私の感謝の気持ちです。受け取って下さい」
「少し・・・予定より多いんじゃない?」
「どうか、何も言わずに受け取ってやってください」

 小さな身体で懸命にフロストを庇っていた少年に、ダレイドは微笑みかけた。

「今回は皆さんに依頼できてよかったと思っています。・・・ありがとうございました」

 依頼の途中で意見を異にしたこともあったが、彼はやはり親父さんのお墨付きをもらうだけの人物であった。
 きっと、彼の父親にも勝る立派な癒し手になってくれるだろう・・・・・・”金狼の牙”たちはそう確信している。
 数日後、妹のレベッカの病が癒えたのを機に、冒険者達はリューンへの帰途についた。
 馬車の幌から顔を出して、すでに遠くなりつつあるヒララギ山を見やるミナスの口には、ダレイドと同じ微笑が刻まれていた。

※収入1000sp、【雪精トール】※

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■後書きまたは言い訳
31回目のお仕事は、原案:ヒラメさん、原作とシナリオ制作:ハチミツさん、シナリオ演出と脚色:小柴さんのお三方でお作りになった雪山の巨人です。ウィルダネスとはちょっと違いますが、雪の野山を駆け回る冒険者たちの物語。

今回やりたかった事は、「アレクに精霊との縁を作ろう」でした。以前にも、階下に潜むモノ翡翠の海などで精霊との接触がありましたので、そろそろ精霊使いに対するコンプレックス(=父へのコンプレックス)を昇華できるのではないだろうか、と思っていたのです。しかし、いい加減な作者の特徴づけのせいで、アレクに中々適正のある精霊がいません・・・こりゃダメかなあと諦めかけた時。
ありました・・・適正:筋力/大胆の精霊が。それがこちらに出てきた雪精トールでした。ともすれば特徴通り地味~で発言が埋もれがちなアレクに、快活でぴったりな相棒ができて嬉しい限り。

このシナリオ、どのように台詞分岐を当てられているのかエディタを見ていないのですが、こちらが意図していた設定にぴたりと当てはまる事が多くて、プレイしていてとても爽快でした。
上記の雪精トールは、アレクに対してやり取りをして憑いてきてくれたり。密かに雪国出身の設定があるギルが、フロスト・ジャイアントについて詳しかったり。果ては一番怒らせちゃいけないアウロラがぷっつん切れたりして、プレイヤー非常に楽しかったです。(笑)

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/01/29 00:39 [edit]

category: 雪山の巨人

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