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翡翠の海 1  

1.周辺地区は結界で平和。
2.結界はミナクア様が管理。
3.ミナクア様の転生で結界消滅。
4.妖魔が祭り状態←いまここ

「・・・――というわけで、これは大変なピンチなのよ」

 彼らをこの地に誘った小妖精は、腕を組んでうんうんと唸りながらそう言った。
 偶然にもある旅の帰りにこの地を訪れた”金狼の牙”たちが、この小妖精に近隣の宿場町で叩き起こされてから既に1刻となる――。

「ああ・・・もうそろそろ、夜が明けますね」

 しみじみとアウロラが呟いた。出発時にはまだ暗かったのだが、もうそんな時刻らしい。

「・・・ええと。それで、そちらにいらっしゃるのが――?」

 アウロラは重い瞼を持ち上げ、あくびをかみ殺しながら訊ねた。

「――あ、はいっ。お話に上りました大精霊ミナクアです!」

 ”金狼の牙”たちが視線を向けると、今まで湖岸に腰掛けてジャブジャブと水面を足で掻き混ぜていた少女が、すっと立ち上がってお辞儀した。
 大精霊などという大仰な肩書きとは裏腹に、その姿は歳が二桁になるかならないか程度のなんとも幼いものである。歳より小柄なミナスといい勝負だろう。大精霊は何百年かに一度転生を果たすそうだが、とても”玉泉水”の二つ名が付くようには見えない。

「・・・ミナクア様はさっき起きたばかりなのよー。お姿も随分と可愛らしくなってしまって・・・・・・」
「結界の事なんて、きれいサッパリです!」

ScreenShot_20130119_094614812.png

 大精霊はお下げ髪を弄りながら恥ずかしそうにそう言うと、ペロっと舌を出して照れ笑いをする。

(大精霊といえば、精霊王に次ぐ程の強大な存在――ってお母さん言ってたっけ。その大精霊がこんな状態じゃあ、この周辺地域の安全は・・・・・・)

 ミナスは心中で慌てていた。
 そんなたいそうな存在に出会う機会は滅多にないはずだが、実際に出会った上、転生に立ち会うようなことになるとは想像の外だからである。
 一方、その余りに緊張感の無い仕草に他の冒険者たちは揃ってため息をつく。
 ギルは”清流の飛沫”ペリエ――自分達の顔に濡れ布巾を被せるという危険な方法で叩き起こしてくれた――に目を向けた。彼女はミナクアに仕える下級妖精だと言う。
 青みがかった透き通る姿は確かに清流の名に相応しいが、口調はかなりフレンドリーである。

「依頼内容は道中に説明した通り、7日間の森の警備と、ミナクア様の特訓よ!」
「特訓・・・・・・ねえ」
「お姉さまの話では、ミナクア様がお力を取り戻すまで丁度一週間かかるらしいわ。・・・なんか、月齢の関係みたい」

 森の警備とはなんだ、と聞いたのはエディンである。
 目をこすりつつだから、彼の目が眠たげなのは本当に眠いからなのだろう。

「結界が弱まったのをこれ幸いって、毎日夜になると南方の魔軍から魔物の刺客が来るのよぉ」

 ウザくってウザくって、とペリエの口調はのんびりしているが、それは結構な大事なのではないだろうか。

「だから、森を巡回したり罠を設置したりして連中を撃退してほしいの」
「・・・なるほど。そんじゃ、もう一つの”特訓”というのは?」
「ミナクア様の霊力を高めるお手伝い。具体的には、勉強の手伝いと周辺のお世話系のお仕事ね」

 一週間も経てば、大精霊ミナクアの力は結界の維持に十分な程には回復するのだと言う。
 しかし、本当のことを言えばそれだけでは少し心許ないらしい。ジーニが確認する。

「・・・心許ない?」
「一週間後のミナクア様が張れる程度の結界では、ゴブリンなんかの低級の妖魔なら完全に無力化できるんだけど――」
「問題は上級妖魔ってこと?」
「行動に支障を与えるのがやっとの話でね・・・・・・」

 それで”金狼の牙”達がいる内に、出来る限りの力をつけて欲しい――というのが彼女の意向であった。
 ミナクアの頭がしゅんと下がる。

「・・・あぅ、力不足でごめんなさい」
「――あっ、いえ、違うのっ!お気になさらないで!つ、つまり、アレよ」
「どれよ」
「修行をつけて欲しいんだってお姉さまが言ってたわ。・・・折角、精霊の扱いにお詳しい方もいるみたいだし」

 仲間たちの視線がミナスに突き刺さる。この小さなエルフは優秀な精霊使いで、水や氷に親和性が高い。

「日頃、手助けしてるんだから、こういう時はしっかり、ね?」
「・・・うん、いつもお疲れ様。キミ達には感謝してるよ」

 でも・・・と、頼られて嬉しいのが半分、困惑してるのが半分といった表情でミナスが続ける。

「あんまり期待しないでね。こういうのは専門外だから・・・・・・」
「そういうわけで、ミナクア様。この冒険者たちの言う事をちゃんと聞いて、しっかり勉強してくださいね!」
「はいっ、前向きに善処します!」
「えっ、善処だけじゃダメじゃね?」

 ぼそっとギルが言ったが、その発言は黙殺された。
 何でも質問していいとペリエが言うので、ミナスは小首を傾げて訊ねる。

「君は下級精霊の中でも下位、いわば下っ端の存在でしょう?もっと上位の精霊は、一体、何をやってるのさ?」
「――下、下言うなッ!アタイは雑魚じゃない!足軽なめんな!投石すんぞ!」

 ペリエは背負った天秤から飛沫をぴちゃぴちゃとミナスの上に降らせてから、頬を膨らませ答える。

「本当は直接のお世話は姉さま達がするんだけど、今は結界の維持と転生の儀に出向いてて、アタイしか手が空いてないのよ!」
「お姉さま――。中位の精霊や妖精、例えば、ウンディーネ達か・・・・・・」

 精霊使いの脳裏に澄んだ水から顕現する乙女達の姿が浮かんだ。

「翡翠の海のミナクアといえば、精霊使いの間では、それなりに有名な存在なんだよ」
「そうなのですか?」
「・・・・・・俺には、残念ながらただの子どもにしか見えん」

 アレクは唸った。
 かつて古き神殿で出会った海精はもっと神秘的な佇まいをしていたのだが、同じ眷属に見えない。

(俺が精霊使いとしての素養に欠けてるからだろうか・・・)

 唸る仲間に構わず、ミナスは説明を続けた。

「この周辺の土地が綺麗で豊富な水に恵まれて、農作物の生産が安定しているのも、彼女の存在による所が大きいんだ」
「そそ、ミナクア様はえらいんだからね!あがめたてまつれ」

 小さな羽根を懸命に動かして宙返りをしたペリエが強調する。

「――でも、彼女の転生に関する資料なんて、この辺りの精霊宮では目にしたことが一度もないよ?」
「毎回、転生のときは魔物に狙われるらしいけど、ドゥルイドとかエルフの協力で何とかしてたんだって」
「あー・・・・・・」

 まさか、自分の血族――とりわけ母なども関わったことがあるのではないだろうか。
 小さなエルフはたらーりと一筋の汗を流した。
 そんな彼を他所に、ペリエは「服に十字をつけた人」を見るようになってから、そういう守人を見ることは無くなったと語った。

「人間は慌しいからね。セカセカしてるというか、カサカサしてるというか。・・・人の世は無常だわ」
「・・・そこっ。人間をゴキブリみたいに言わない」

 アレクが顔をしかめる。
 報酬を確かめると、宝石で800sp相当を支払うつもりらしい。ジーニはなにやら不満げだが、ミナスはすっかりやる気になっているようだし、精霊使いとして貴重な経験になるのであれば、仲間として協力するのにやぶさかではない。
 ペリエに巡回や勉強等の役割分担について詳細を聞き、一行は早速仕事に取り掛かることにした。

2013/01/21 12:00 [edit]

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