Mon.

賢者の選択 5  

 ディマデュオは部屋の床にある敷物の下に、何か陣を置いていたらしい。魔法使いたちが魔法を抑えられた事に気付き、驚きの声を上げる。しかし、すぐに気を取り直して接近戦を挑むことに決めた。

「小賢しい・・・っ!」

 彼の手から発せられた【炎の玉】の直撃を受けて、ジーニが倒れる、かろうじて防御体勢を取っていたミナスとアウロラは軽傷だが、エディンは重傷に近い。そして、肉弾戦の主力であるギルとアレクは――。

「なんだと!?無傷!?」
「残念だったなあ!お前の魔法より、古代の魔術師が作った結界のが上だったんだよッ!」

 前の依頼で入った暗き洞窟にあった、【絶対の防壁】。難しい呪文だけにわずか数回しか唱えられないのを、呪術士相手だからとアウロラが事前にギルとアレクへ使ってくれたのだ。
 この絶好の隙を逃すわけにはいかない。ギルの斧とアレクの剣がざっくりとディマデュオの胸を断ち割ると、さらにエディンが素早く駆け寄って、その喉を掻き切った。

「がはっ・・・」

 ディマデュオの手から杖が落ちた・・・彼はよろめき、背後のテーブルにもたれかかる。
 口元を押さえた掌の隙間から大量の血が溢れ出した。
 朱色に染まった自分の掌を、ディマデュオは呆然と見つめ、そして憎悪に血走った目を冒険者たちに向けた・・・。

「馬鹿者どもが・・・後悔する事に・・・なるぞ・・・」
「口先だけは立派だな。すぐにあの老人も同じとこへ送ってやるさ」

 エディンがにやりと笑うと、ディマデュオは崩れ落ちるように床に倒れた。
 彼の死によってだろう、既に魔法封じの陣は解かれている。アウロラはすぐに法術を使い、全員の傷を癒した。

「さて・・・と。ここからが本番だぞ。アレク、用意はできてるか?」
「ああ。大丈夫だ」

 幼馴染コンビが頷く向こうで、かつての紅き鷹旅団退治の時に取得した≪防護の指輪≫を、アウロラ・エディン・ジーニ・ミナスの順で使っている。何しろ、今回上級の術を身体に収めるので【信守の障壁】が使えなかったのだ。
 指輪の魔法は発動が不安定らしく、ジーニだけあいにく防護の魔法がかからなかったものの、

「いいわよ、あたしには旋風の護りがあるからね」

と言って、彼女は再び【風刃の纏い】を唱えた。
 回復用の髭天狗茸も持ち、一行は墓所へ向おうと廊下に出た。

「灯りが消えてる・・・?」

 エディンの呟きと同時に、背後に気配を感じた”金狼の牙”たちは振り返った。
 そこには地下墓所の老人・・・・・・ソドム王国最期の王、カナンがいた。

「重畳、重畳・・・ようやく自由を取り戻す事が出来たわ・・・」

 何処なりと立ち去るが良い、もう用は無いという老人に、ギルは無言で斧を向けた。老人は苛立たしげに眉をしかめる。

「・・・何をしとるんじゃ。まだ何か用でもあるのか?死にたくなければさっさと消えろ・・・」
「じい様。悪いけど、もっかい眠ってくれや」
「なんと!わしと戦おうと言うのか?」
「その通りだよ」
「・・・多少は見所があると思っておったが、所詮は猿か」

 さも残念そうに老人は首を横に振った。

「身の程もわきまえずこのわしに刃を向けようとは・・・思い直すなら今の内じゃ。今すぐ立ち去れば、許してやる。よくよく考える事じゃな」
「わざわざ起こして放置した村人も悪いけど、十人も殺したじい様も良くない。ここで倒されてくれ」
「正直に言うと、俺はあの村人達がどうなろうと知ったことじゃないんだが・・・」

 ギルの横で、エディンがぽりぽりと頬をかく。

「まあ、浮世の義理というか成り行きだ」

 老人はしばらく呆れたように黙り込んでいたが、やがて重々しく口を開いた。

「よかろう・・・かくなる上はお前達を殺し、今宵の宴の余興とするまでじゃ・・・!」

 老人の身体が宙に浮く・・・皮膚がぼろぼろと崩れ落ちていく・・・!
 たちまち、髑髏に変わった顔を向けて彼は言った。

「愚かさの報いじゃ・・・この場で朽ち果て、哀れなる屍を晒すがよい!」

ScreenShot_20130118_125422546.png

 その言葉を聞きながら、アレクはずっと後ろに置いてあった”秘密兵器”を取り出した。天頂部に取っ手の付いた大きな金属製の箱。
 アレクを狙った左腕をギルが受け止め膝をついた時に、アレクは引き金を引いていた。

「さらばだ、カナン王・・・!!」

 会心の一撃・・・!
 黒衣が揺れ、おぞましい髑髏の姿から見慣れた老人の姿へと変わる。足首の辺りが徐々に灰色に染まり、崩れ落ちていく。
 その様子を老人はまるで他人事のように眺めた・・・。

「見事じゃ・・・よもや、このわしがここまで追い詰められようとはな」
「俺たち自身の力、ってわけでもないがな」

 重たい金属製の箱を下ろし、アレクは述懐した。
 彼が撃ったのは、かつてリューンの下水道で見つけた旧文明の兵器だった。まさか一撃でリッチを退ける威力とは知らず、ただあの両腕さえ封じられれば勝てるだろうと思っていたのだが・・・結果オーライということだろうか。

「お前達の勇戦に敬意を表し、ここは退くとしよう。もはやこの村の猿どもの事などどうでもよい・・・」
「あ、いいの?」

 あくまで軽いギルの声音に、老人は穏やかな笑みを浮かべていた。
 老人の身体は、既に首の辺りまで灰と化している。ばさりと乾いた音を立てて、右肩が崩れ落ちた。

「わしは間もなく消える。だが忘れるな・・・わしは不死なる者。あるいは再び会い見えるときも訪れよう・・・」
「分かったよ、じい様。その時までに鍛えておくさ!!」
「ええええええええ!?」
「ちょ、ちょっとギルバート!?何あほなこと約束してんの!?」
「その日まで・・・しばしの別れじゃ・・・では・・・さら・・・ば・・・だ・・・」

 女性陣からとんでもないブーイングを食らいながらも、ギルは老人へ小さく手を振った。
 老人は完全な灰と化し、消えた・・・。
 半刻後。
 顔をしかめて村を出るよう薦める村長に、誰も一顧だにしていなかった。
 ただ、一応ディマデュオのみならず、かの老人による脅威も取り除いたことを伝えておこうと思っただけである。
 いくらかの事情があったとはいえ、リューンの騎士を殺し、テロリストを匿っていたこの村の未来が明るいとは思えない。
 だが、それ以上村長と言葉を交わそうとはしなかった。
 ”金狼の牙”たちは夜の明けぬ内に村を離れ、空が白み始める頃、中央公路へと辿り着いた。
 ヴィスマールの方角に半刻も歩けば、冒険の出発点ともなったあの宿・・・賢者の選択亭に行くことも出来たが、彼らはリューンへの道を選んだ。

「それに、ちゃーんと土産が届くだろうから大丈夫だって」
「土産?一体何をしたんだ、エディン?」

 さあさあと仲間の背中を押すエディンへ、アレクが問い掛ける。
 彼の白皙の美貌に顔を近づけて、こそっとエディンは囁いた。

「あの騎士のおっさんの遺髪と服の一部を持ってきた。後日、ギルド経由であの宿に送りつける」
「・・・・・・!?」
「朝には村長が村人に事情を説明すると言ってたし、どうせ俺らのやったことばれるなら、多少の意趣返しはしても構わんだろ?」
「・・・・・・まあ、一泡吹かせるくらいはしておきたいと思ってたが・・・そこまでやるか」
「俺はしつこいのが信条なの。いい盗賊はしつこいもんなの」

 すっとぼけた顔で、手をひらひらと動かしてエディンはリューンの城壁を示した。

「ほれ、麗しの我が家ってやつまであと少しだぜ」

※カナンの魔剣、カナンの鎧、隠者の杖入手※

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■後書きまたは言い訳
27回目のお仕事は、GroupAskさんの公式シナリオ・賢者の選択です。Askシナリオをやっていく中で、プレイヤーが初めて魔剣に出会ったり、ラストの選択に一番頭を悩ませたりする作品ではないかと思います。
ディマデュオとの決戦のために【絶対の防壁】をあの洞窟から取って挑んだわけですが、それでも【炎の玉】は痛かったです。そして本当はカナン様、聖水で倒せるらしいのですが、当てられる自信がなかったので鋼鉄の箱頼りで。まあ伝統技ですよね!
せっかくミナスに【黄金色の風】つけてたのに、プレイ中一度たりとも手札に回ってこなくて悲しかったです。

リプレイ中、妙にギルが軽かったりエディンが最後に真っ黒です。キャラクターに好きにやらせてみたらこんな感じになってました。ノリって怖い。
村長の詳細説明時にもっとパーティ側に葛藤があったり同情したりしてもいいのでは・・・とか考えたのですが、相手に殺意を向けられたのが明らかな時点で、”金狼の牙”の場合は仕返しに躊躇しなさそうです。「愛に生きる」キャラが一人もいない弊害ですかね?

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/01/21 10:14 [edit]

category: 賢者の選択

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