Mon.

賢者の選択 2  

 老人は言った。
 自分は魔術の心得がある、あの呪術士がこの地下墓地の何処かに隠した老人の腕を取り戻してくれたら、報酬の代わりにここから脱出させてやろうと・・・。

「あのじじい、年老いた魔術師だ以上のことは言わなかったな。盗賊としちゃ、金になる報酬も欲しいとこだが」
「それで十分だろうとあしらわれましたからね」

 通路の暗がりから現われたゾンビたちをあっけなく退けながら、一行は先程の老人について話し合っていた。

「それにしても・・・っと、この扉はどうだ?えーと・・・鍵が掛かってるな・・・」

 墓地には名工の手による錠がかかった扉が複数あり、エディンはさっきから苦戦を強いられていた。
 これの前には、武器庫らしき様々な種類の武器が飾られた部屋で、奥の壁に掛けられていた両手持ちの大剣を手に入れていた。
 大剣はまるで打ち立てのような鈍い光を放っており、刀身がうっすらと青白く光っているように見えたのである。

ScreenShot_20130118_085953796.png

 アレクが剣の柄に触れると指先に軽い痛みが走ったのは、氷の様に冷たいからだった。
 持っているだけで指先が凍傷になる、とぼやきながらも、彼は今それを背に負っている。

「・・・開いた!」

 エディンが小さな歓声を上げて扉を開いた。ミナスとジーニは、すでにそれぞれ召喚魔法を準備してある。
 そこもまた、大きな部屋だった。何の装飾もされていない。
 ・・・部屋の奥に何か青白く輝く物体がある。

「これは・・・」

 アレクが呟いた。精巧に作られたその金属鎧は、彼の背負っている剣と対になるもののように思える。
 石造りの鎧立てからそれを取リ外すと、やはり氷の様に冷たい。

「この鎧、旧文明期の王国ソドムの様式で作られているわね。・・・強力な魔力が秘められているから、魔法への抵抗力も増大させてくれるはずよ」

 鎧をしげしげと見つめたジーニが鑑定結果を口にすると、ギルは困ったように首を横に振った。

「いや、残念だがこいつは俺やアレクとは体型がちょっと合わない。ベルトを調節し直せば、なんとか着られるかもしれないが・・・」
「とりあえず持っていくだけにしとくか。今回、どこからも報酬は出ないんだからな」

 エディンの意見に全員が賛同した。
 ・・・やがて彼らは、ある北壁の扉を開けて中に入った。
 その部屋は今までと同じ中央に石棺のある部屋だったが、石棺の中身が違っていた。

「穴が開いてるね!」
「この大きさなら、全員通る事は可能よ」
「垂直に折れ曲がった後、北の方へとのびてるようだが・・・リーダー?」
「行こう。他に行くところもないしな」

 冒険者たちは穴に潜り込み、先へと進んだ・・・。
 細い通路は行き止まりとなるが、上へと続く穴がある。”金狼の牙”たちはゆっくりと立ち上がった。

「これ、石板ですね」
「どいてくれ、アウロラ。ギル、手伝え」
「はいよっと」

 メインウェポン二人が力を合わせて石板を手で押してみると、動く。
 どうやらそれは石棺の蓋だったらしい・・・彼らが穴から這い上がると、穴の入り口となった部屋と似たような感じの部屋に出た。
 扉がひとつあり、内側の錠を外して通路に出る。
 床を調べても通路に違いがなかったので、一行はギルの勘にしたがって西に進むことにした。

「む・・・これはさっきのと同じ呪法の札か・・・」

 突き当たりの扉を調べていたエディンが唸った。老人を閉じ込めた札ということは、腕はここに封じているのかもしれない。
 仲間たちの同意を見て取ると、彼は静かに札を破きながら扉を開けた。
 ”金狼の牙”たちが周りを見渡すと、部屋の中には四つの大きな石棺が整然と並べられていた。

「何かしら、あれ?」

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 細い指が示したのは、奥の壁に鎖で吊り下げられた棒のようなもの――ミイラ化した右腕だった。
 エディンが静かな足取りで石棺の間を通り、その腕を手に入れる。
 完全に干からびたそれは、皮膚の色が緑色に変色している。エディンは若干の吐き気をこらえながら、それをバックパックに詰めた。

 ぴたん・・・ぴたん・・・。

「・・・水?」

 ジーニの首筋に冷たい滴が落ちる。首筋に手をやり、何気なく天井を見上げると・・・。

「ひっ」

 天井に皮鎧を着た人間が張り付いている!
 土色の肌の周りを取り巻く黄色い光を見て、エディンが叫んだ。

「ワ・・・ワイト!?」

 彼ら四体のワイトは、天井に張り付いたままこちらの様子を伺っているようだ。
 エディンは迷った。体勢を整えるべきか、刺激しないよう逃げるべきか・・・。
 結果、彼は逃走を選択する事にした。目でそっと合図をして、仲間たちから先に通路へと逃がすようにする。
 殿についたエディンは、ワイトの動向を見守りながらゆっくりと扉に近づいた・・・。

「あと少し・・・」

 つう、と冷や汗が焦りを呟いたギルのこめかみを伝った。
 すると、まるでそれに呼応するかのように、突然ワイトの一匹が奇声を発した!

「やばい!エディン、急げ!」
「だめだ・・・逃げ切れない!!」

 エディンは腰の細剣を引き抜いて、天井から落下してきたワイトに向き直った。
 アレクとギルは踵を返し、彼の隣に立つ。「こいつら・・・確か・・・」と洩らしたアレクに、エディンが反応した。

「ああ、ゾンビパウダーの密売組織との戦いで出てきただろ。ワイトは人間の精神力を吸い取る能力を持ってる」
「・・・ずいぶんと詳しく覚えてるのだな」
「若い頃にも、ちょっとな」

 それぞれ、対複数への技として【花散里】と【風切り】を準備していた二人は、言葉を交わしながらワイトの爪を武器で防いだ。
 エディンが口にした能力がある以上、後ろの魔法使いたちにワイトの攻撃を通すわけにはいかない。
 しかし、心配は杞憂だったようである。ギルの【風割り】でまず一体が仕留められた。二体のワイトもエディン&アレクの波状攻撃と、召喚された旋風や野人に攻撃され、その動きを止める。
 残った一体も、再生はしたもののジーニの【魔法の矢】に射抜かれ、戦闘が終わってみるとアレクがかすり傷を負っただけだった。
 アウロラがその傷を法術で癒す。

「この石棺、ワイトのだったんだな」

 保証するエディンの向こうで、不心得者なギルがつま先で棺を蹴った。
 罰当たりな仕草にアウロラが眉をしかめたのを見て、慌てて足を引いた。休火山をわざわざ目覚めさせることはない。
 反省する様子を見せたリーダーに軽くため息をつくと、アウロラは「終わりましたよ」と癒した腕をぽんと叩いた。

2013/01/21 09:38 [edit]

category: 賢者の選択

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