Sun.

花を巡りて・・・ 6  

 一際広い異様な部屋の中にあったのは、今までに見たこともないような装置だった。
 中央の透明な筒状のモノの中にあった怪物は、今や”金狼の牙”たちの目の前に倒れている。
 3メートルを越える、深紅の巨躯に鋭い牙と鍵爪を持つ・・・・・・炎の悪鬼、バルログ。
 正体を看破したジーニなどは、見た瞬間に悲鳴を上げた。
 とはいえ、バルログが冷気に弱いことも承知していたので、一行はジーニの助言に従い、冷気属性の攻撃を主軸に戦ったのである。 

「ディーンのお母さんに、どう顔向けすればいいんだよ・・・」

 涙をこぼすミナスを慰めようと、ギルは亜麻色の頭を不器用に撫でながら言った。

「・・・お前一人が思いつめることではない。放置しておけばヤツはさらに成長し、手がつけられなくなっていただろう・・・」

 そして、成長したバルログはレピア村に牙を向いたかもしれない。それは極めて可能性の高い未来図だった。

「俺たちが倒したのはただの怪物だ。ディーンは今ごろリューンで頑張ってるんだ・・・そう考えようぜ」

 そして一行は、バルログのいた部屋のさらに奥へと進んだ。
 最後の部屋に入った”金狼の牙”たちは、瞬時に独特の空気を感じ取った。
 いつかと同じ、神秘的な・・・。

ScreenShot_20130116_153411281.png

「・・・フィロンラの花・・・あの時と、同じ・・・」

 ジーニが呆然とした様子で言う。
 彼らが見覚えのある花の筒に近付くと、不意にその筒が開き、花がこぼれ出てきた。

「おっとっと・・・・・・」

 ミナスが慌てて駆け寄り、それを拾い上げる。

「・・・これで、せめてレミラさんは喜んでくれるかな・・・」
「ああ・・・さあ、早く届けてやろうぜ」

 哀しそうに目を伏せたミナスを、アレクがそう言って慰める。
 一行は洞窟を後にし、レピアへ向かった・・・。

「・・・村長への報告は、後でも出来るだろう。今は一刻も早く、この花をレミラさんに届けようぜ」
「ええ・・・そうね」

 夕暮れ前に村にたどり着いた冒険者たちは、大人コンビの指示でレミラの家へと足を向ける。
 まずミナスがノックした。ところが返事が無い。

「・・・あれ?どこかへ出かけてるのかな?」
「まあ、じきに日が暮れれば帰ってくるでしょう。中で待たせてもらいますか?」
「そうだね・・・」

 失礼します、という言葉と共にドアを開けたミナスは、一瞬にして声を失った。
 レミラの母親が、床に突っ伏していたからだ。すぐさま助け起こす。

「ど、どうしたの!?大丈夫?しっかりして!」
「・・・ミナスさん・・・みなさん・・・大丈夫・・・いつもの事です・・・少し・・・休めば、すぐ・・・」

 顔をあげ、うつろな視線で見上げ、あえぐようにミナスに声をかける。アウロラが脈を計りながら彼女の様子を窺うが、症状は軽くないことが見て取れる。

「お、お母さん!しっかりして!!」

 そこにちょうど外から聞きつけたのか、レミラが慌てて入ってきた。
 冒険者たちの手助けを受け、慣れた手つきで迅速に介抱を進めていく・・・。
 ・・・ようやく落ち着きを取り戻したのは、1時間以上も経ってのことだった。それまで荒かった呼吸も、今では安らかな寝息に変わっている。

「レミラさん・・・」

 ギルが呼びかけると彼女は全員を外へと促し、澄んだ小川の土手まで移動した。強張った雰囲気を何とかしようと些細な話題から切り出すものの、ミナスが不安そうな顔で固まっているのを見て、レミラは決心したように口を開いた。

「・・・ごめんなさい。私、みなさんに隠していたことがあります。実は、お母さんは・・・あの病気にかかっているんです」
「・・・!!まさか・・・」

 一番先に反応したのはエディンだった。

「・・・そうです。不治の病・・・現段階でどうしても治らない病気・・・フィロンラの花を除いて」
「・・・なんてこった・・・」
「もしかして、レミラさんが医術研究の道を志したのは・・・」
「・・・ええ、そうです。全ては母の病を治すため・・・」

 レミラの話では、すでに母親は半年くらい前から発作を起こしているという。
 幼い頃に違う病気で父を亡くしたレミラは、今度こそ何かを為そうと医術研究の道へ進んだ。
 彼女は続ける。

「・・・フィロンラの花があるという情報が入り、私が同行すると決まった時・・・なにがなんでも手に入れて、お母さんを治してあげようと、最初は思ってました・・・でも」

 そこで顔を伏せる。

「先生が必死に探して、やっとの思いで見つけたフィロンラの花・・・それに・・・みなさんが、ボロボロになって私をここまで連れてきてくれて、花を取ってきてくれたと思うと・・・」
「・・・・・・・・・」
「胸が痛くて・・・どうしたらいいのか分からなくて・・・」

 レミラは涙を流していた。
 今までずっと悩んできたのだろう。支えが外れたように、涙があふれ出てくる。

「おかしい、ですよね・・・フィロンラの花を手に入れるつもりでなら、こんなこと話さないで・・・黙って・・・私が皆さんから受け取って、先生には私から嘘の報告すればいいのに・・・」

 答えの出ない彼女は、ついに言った。「その花をどうするか・・・みなさんで決めて下さい」と。
 議論は白熱した。ミナスはレミラの母を救うべきだと主張し、ジーニは特効薬のためにヴィアーシーに渡すべきだと反論する。
 レミラの母が特効薬の完成までもつという保証は無く、花は一輪しかない。
 全員がギルの決定に従うと頷いた時、ギルは迷わずに言った。

「フィロンラの花は・・・・・・」

ScreenShot_20130116_162540750.png

 ――その後、彼らはリューンに戻ってきた。
 彼らはヴィアーシーのもとを訪れ、報告と調査結果として日誌を渡してきた。・・・レミラは同行していなかった。
 彼女は、一行に報酬の1500spと、ヴィアーシーからの預かり物を託し、レピアに留まったのだ。
 預かっていた物をヴィアーシーに返し、偽りの理由を話した。
 ・・・彼は、気づいていたのかもしれない。だが、彼は何も尋ねず、一行が返そうとした前金も受け取ろうとはしなかった。

「・・・・・・本当にこれで良かったのかしらね、エディ」
「さてねえ。正解なんてものはないからな」

 ジーニとエディンは他の面子が部屋に入って休むのを横目に、一階で酒を酌み交わしていた。

「ただ、リーダーなりに感じ取ったんだろうよ。レミラさんが医術研究家としての道を閉ざす覚悟もしてたってこと。大勢の患者を捨ててまで母親救っちゃ、もう胸張って研究を続けられねえ」

 ぐびりとエールを煽る。

「それでも、たった一人の母親失くすよりゃマシだって思ったんじゃねえか?あいつも母子家庭だからな」
「辛い思いするでしょうね、レミラさん。後ろ指さされるって言うのは嫌なものよ」
「あの人なら、逃げずに受け止めるさ。俺らは精々、彼女のおっかさんが長生きしてくれることを祈ろうぜ」

 杯を掲げたエディンをしばらく見やり、やがてジーニも自分の持つワイングラスを捧げて祈った。

※収入2000sp、≪宝石(400sp相当)≫≪コカの葉≫入手※

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■後書きまたは言い訳
26回目のお仕事は、がじろーさんのシナリオで花を巡りて・・・です。Askさん作「遺跡に咲く花」とのクロスオーバーなので、前述のシナリオをやってから開始すると色々感慨深いですね。あと、こちらは同氏の「護衛求む」や、ブイヨンスウプさん作「竜殺しの墓」にも対応している台詞があるので、プレイされた方はにやりとされるかもしれません。
「竜殺しの墓」から今作をやるのは、一度レベル上げてからドレインしないとちょっと辛いですけれども。(笑)

最後のエディンとジーニのシーンはオリジナルです。
蛇足かなとは思ったのですが、リーダーであるギルがその選択を行った理由を、一歩離れた位置から推測させたかったので、このような書き方となりました。

当リプレイはGroupAsk製作のフリーソフト『Card Wirth』を基にしたリプレイ小説です。
著作権はそれぞれのシナリオの製作者様にあります。
また小説内で用いられたスキル、アイテム、キャスト、召喚獣等は、それぞれの製作者様にあります。使用されている画像の著作権者様へ、問題がありましたら、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。適切に対処いたします。

2013/01/20 17:13 [edit]

category: 花を巡りて・・・

tb: --   cm: 2

コメント

拝読しました。

がじろーと申します。
ふとしたきっかけで拙作の感想を見つけ、楽しく読ませていただきました。
このシナリオは当時ハマっていた「ブラックジャックによろしく」というマンガ、クロスオーバー、正解のない選択肢という三要素をもとに勢いで書き上げたシナリオで、読む内に当時の思い出が呼び起こされました。

最後のシーンは解釈を委ねすぎて、言葉が足りなかったかな…と思っていたので、素敵な後日談を加えていただいたことも嬉しく思います。こんな場面を加えても良いですね。

今後のますますのご活躍を期待しています。
楽しいひとときをありがとうございました。

URL | がじろー #17ClnxRY | 2014/07/16 18:03 | edit

コメントありがとうございます!

>がじろー様

はじめまして、Leeffesと申します。
コメントいただいた日にちから、大分経ってからの返信になってしまい申し訳ございませんでした。

プレイヤー専門だったカードワース初心者時代からがじろーさんのシナリオやMIDIを楽しませていただいてた身としては、まさかご本人様からコメントを貰えると思っておらず、恐縮でございます。
「ブラックジャックによろしく」ですか!
あの漫画は後味のどこかに残る人生観というか、そういうものが漂ってるのが好きでした。

シナリオとしてはあのままの方がすっきり終わっていたから、最後のシーンは蛇足かな?と思ったのですが、上記にも書いたように、大事な選択の理由をちょっと客観的に付け足したかったためにどうしても入れたかったものです。
委ねられた解釈をちょっとでも昇華できていたのであれば、これに勝る喜びはありません。

こちらこそ、面白いシナリオをプレイさせていただき、まことにありがとうございました。

URL | Leeffes #zVt1N9oU | 2014/07/22 11:12 | edit

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