Sun.

花を巡りて・・・ 5  

 見つけた洞窟の内部は明るかった。光ゴケ、あるいは魔法で壁や天井から発光させているのかもしれない。
 明らかに自然の洞窟ではなく、人の手がしっかり入っていた。
 無限回廊の罠に嵌まり、慌てて引き返したところをムカデ型のゴーレムと一戦交える羽目に陥った一行は、鍵の掛かる小部屋で身体を休めていた。
 これほど消耗しているのは、以前出会った大ムカデと一緒で頭が弱点だと思っていたのが、ゴーレムの特性で別の場所に埋め込まれた「核」が弱点だったためである。

ScreenShot_20130116_143419171.png

 小休憩を終えると、一行はエディンが無限回廊の近くにあると睨んだ場所の所まで引き返した。

「・・・あったぜ。本物の通路だ」

 壁の凹みに紛れるようにしてあったスイッチを押すと、一部がスライドして隠し扉が現われた。
 扉を潜ると、さらに長い通路が続いていた。途中で二手に分かれており、”金狼の牙”たちは真っ直ぐ進んだ。だが、行き当たりの扉は特殊な鍵が必要なようで、エディンの技術では開かないという。
 仕方なく一行は分かれ道まで引き返し、もう一つの扉の方へと向かった。

「・・・ここは書斎のようだな」

 呟いたエディンが辺りを探索すると、一冊の本が目に付いた。どうやら、研究の進み具合が日記形式で綴られているようだ。
 ジーニが手渡された本を手早く捲り、関係のありそうな項目をざっと洗い出した。

「いくわよー。『私の思った通り、この遺跡は幻の花「フィロンラ」を人工的に培養するための施設だった。そのための設備や資料もわずかながら残っていたのは幸いだった』・・・ふーん」
「あ、やっぱりここって、フィロンラの花に関わりあるところなんだね!」
「『これがうまく行けば、世界では難病と言われているあの病気が全て、いとも簡単に治ってしまうのだ。なんという素晴らしいことか・・・・・・』面白くないなあ」
「え、何が?」
「いや、真っ当すぎて何か癇に障るわあ」
「ジーニ・・・・・・」

 呆れたようにアレクが言う。「冗談よ、冗談」と流すと、ジーニはその先を続けた。
 5月1日まで設備を四苦八苦しながら作っていく様子が書かれており、3つのポットまでを復元して培養を始めることにしたとある。
 フィロンラの研究がひと段落した日記の主は、遺跡に残っていた他の書物を漁ってみたらしい。
 星の研究から、物の運動。当時の文学から人工生命体まで・・・・・・。

「ここから、どういうわけか日付が飛んでるのよね。『私は大きな勘違いをしていた。この遺跡でのフィロンラの研究は、2次的なものに過ぎなかった』」
「へっ!?だって、それが目的でここに来たんじゃ・・・」
「ところがどっこい、『本当の研究は、人工生命体に関してだったのだ』とか書いてるわよ。強力な生命体を作れるかもとか・・・こいつ、なんかに取り憑かれてたんじゃないかなあ」
「・・・考えられるのは、人工生命体を作成していた古代魔術師の妄執、か?」
「もしかしたらね~。しばらく生命体の研究データが続いてるわ。あたしに詳細はわかんないけども・・・お、最後に正気を取り戻したっぽい・・・」

 唐突にジーニが鼻に皺を寄せて唸った。エディンが「どうした?」と訊くと、本当にこれ以上続けていいのかと聞き返される。
 わざわざそれを口にするということは、ろくでもない内容に違いない。ギルはしばらく上を見て考えていたが、ジーニに頷いてみせた。

「覚悟してよね。『操られていたとはいえ、人間の手で・・・強力なモンスターを作るなどと・・・神を冒涜するような行為だ。あまつさえ、私の作った生命体が不安定であるため、村の青年を一人拉致し、融合させるということまでしてしまったようだ。何と言うことを、私は・・・』」
「・・・・・・!まさか・・・」
「『いずれ、ヤツは完全な姿になり、世に災厄をもたらすだろう。これを見た者がいれば、何とかあの装置を破壊してほしい』って。自分でその生命体とやらを始末するつもりで、果たせなかったくさい」

 眉をひそめて呟いたエディンに構わず朗読を続けたジーニは、そこでハーッとわざとらしく大きなため息をついて肩をすくめた。

「好奇心に負けて得体の知れない書物を荒らし、何かに取り憑かれて魔法生物作った挙句、それを始末もせずに他力本願するってどういうことだろ。これだから、禁呪に手を出すようなヤツは信用ならないのよね」
「・・・日付からすると、ディーンがいなくなった期間とちょうど合うな」
「成長過程としては充分・・・か」
「この本は持ち帰ったほうが良いでしょう。ヴィアーシーに渡せば役に立つかもしれないしね」

 同意したギルが、ジーニの手にある日誌に小さな鍵がくっついているのに気づいた。
 一見しただけでも、特殊なつくりをした鍵だと分かる。

「・・・隠蔽魔法で隠してたのかしら?」

 指摘されたジーニが鍵を手にする。

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「俺たちに託すって意味かもな」

 ギルがそう言ってため息をついた。
 今までの朗読に間違いが無ければ、彼らが向かう先にいるのは「ディーンだった」者である。気も重くなろうというものだった。

2013/01/20 16:54 [edit]

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