Sun.

花を巡りて・・・ 3  

 あまりのオニカバネの臭気に、それを持つギルはますます顔をしかめた。

「・・・・・・くさい」
「我慢してくれ、リーダー。あとちょっとだろうが」
「このにおい、ちゃんと取れんのかなあ」
「花を捨てればどうにかなるさ。くじ引きで負けたアンタが悪いんだから、文句言うな」

 ギルとエディンのやり取りに忍び笑いをしつつも、ミナスが歎息する。

「それにしても、この近所にエルフの隠れ里かあ。僕、久々に同族に会ったよ」
「空間の歪曲とは、エルフたちもかなり大掛かりな術を使うんだな」
「うん。外から気づかれないようにするのが一番大事だからね。僕の里でも、多分似たようなことやってたんだと思うよ」

 ミナスが言う同族とは、この街道の入り口と中間地点を繋いだ空間に隠れ里を作るエルフだった。

ScreenShot_20130116_112129984.png

 エルフが隠れ住むのには色々と理由がある。彼らも訳ありらしく、入り口の仕掛けを対立勢力が破ってゴブリンをけしかけられたというので、街道を立て札で封鎖していたそうだ。
 このまま進んでも出口が塞がっており、”金狼の牙”たちが目的地のレピア村へ進むには入り口の仕掛けを直して転移してもらうしかない・・・・・・しかし、入り口の仕掛けを直してしまったら、ゴブリンまで同じ空間に閉じ込められてしまうので八方塞がりだと嘆くエルフの女性に、ゴブリン狩りを提案したのはギルだった。
 レミラさんをエルフに預け、ゴブリンが好むオニカバネの花に魔法をかけてゴブリンを誘き出すことになったのだが・・・。
 その花から発せられる腐臭が、半端なレベルではなかったのだ。
 途中、スリングによる遠距離攻撃をしてくるゴブリンなどに悩まされつつも、一行は無事に行動部隊を片付け、ゴブリンの残党が潜むアジトへやってきていた。

「・・・難しいわね。ここは比較的開けた土地で、見張りまではかなりの距離があるわ・・・」

 地形を確かめたジーニが戦法について注意を発する。

「【魔法の矢】などの魔法攻撃は届かないわね。遠距離攻撃は・・・よほどの腕が必要になるでしょうね」
「この距離じゃあ、忍び寄って仕留めるのもまず無理か。何かで隠れられれば、また違うんだろうが」

 それぞれの専門化である大人コンビが言うのに、他の面子も一所懸命考え込む。
 そのうち、アレクがぼそっと「空でも飛べれば・・・」と呟くのを、ミナスが聞きとがめた。

「空?行けるよ、僕なら」
「あ、そうか≪エア・ウォーカー≫がっ」
「でもミナス一人が先行することになります。危険ではないですか?」

 思慮深くアウロラが懸念を口にするが、今のところそれ以上いい方法はないように思える。
 結局、かけられるだけの補助魔法をかけて、空からミナスがスネグーロチカを見張りにけしかけることになった。
 ミナスが慎重に近づき、雪精は空恐ろしいほどの冷気でゴブリンを永久の眠りにつかせる。

「よし、行くぞ」

 リーダーの合図で、他の者たちは洞窟の前まで近付いた。・・・と、その時。

「何か、妙じゃない?」
「どうかしたのか、ジーニ?」
「いや・・・洞窟内が騒がしいような気がするんだけど・・・」

 ジーニの言うとおり、何やら向かう穴の中から騒音が聞こえる。
 どこか興奮したような、そして彼ら”金狼の牙”たちには聞き覚えのあるような声をあげて・・・。
 それが何かに思い当たったギルは、「・・・あ!」と言って自分の頭を叩いた。

「この声は、さっきオニカバネを持って探索していた時に、引き寄せられたゴブリンがあげていた声だ!」
「まさか・・・オニカバネの残り香にゴブリンどもが引き寄せられているっていうこと!?」

 上空に待機したままのミナスが、ギルのセリフにぎょっとした顔になった。
 洞窟内の怒号は、やがて足音となりこちらへ近付いてくる。

「まずい、先手を取るなら今しかないわよ!」
「布陣を組め!ゴブリンを迎え撃つぞ!」

 咄嗟の判断で叫んだギルに従い、各々が迎撃の態勢を整える。

「・・・行くぞ!」

 ばらばらと足並み揃わぬまま駆けてきた集団の中に、一際立派な体躯を持った影がある。

「親玉のご登場ですよ!」

 アウロラが示したのはホブゴブリンのことであった。ゴブリンより一回り以上大きな妖魔は、時に信じられない膂力を持って冒険者を攻撃してくることがある。
 アレクの【風切り】、ジーニの【火炎の壁】でほとんどの雑魚を片付けた一行だったが、まだ気は抜けなかった。

ScreenShot_20130116_122538437.png

 エディンが銀の細剣から花に似た氷の欠片を飛ばしつつ、

「ダメだ、届きにくい!先にこの護衛を倒した方が良さそうだぜ!」

と、ホブゴブリンの両隣に控えているゴブリンについて看破する。
 ミナスが「任せて!」と叫び、立ちふさがる護衛にスネグーロチカを誘導し、ジーニが詠唱していた【眠りの雲】を飛ばして親玉を眠らせた。その親玉にアレクが駆け寄る。≪黙示録の剣≫の刀身がまばゆく光り、魔力が切っ先から真空波となってあふれ出す!

「とりゃあああああ!」
「ゴブゥ!?」

 魔力を取り込んだ刀身によって重傷を負ったホブゴブリン。
 最期に彼が見たのは、ジーニから奔った風の刃だった・・・。

「か、勝った・・・」

 やれやれと一息ついた一行は、一応洞窟の内部も点検し、残党がいないかどうかを確認した。
 どうやら全滅させたらしいと分かると、”金狼の牙”たちは待ち合わせた場所へ移動し、エルフやレミラと再会した。

「・・・ありがとう。本当に助かったわ」

 金髪のエルフの女性は礼を言うと、「約束の宝石よ」と報酬を差し出して、一行に先程見た立て札の前に移動するよう指示した。装置を動かして空間の閉鎖を解いてくれるそうである。
 言われた場所で待っていると、彼らの見つめる前で視界が歪み、たわんでいく。

「滝だ・・・」

 呆然と言うアレクの言葉どおり、一瞬にして視界が元に戻ると、そこにはしぶきをあげる滝が現われていた。

「・・・そうです。確かにこの街道は、滝の見える場所があった・・・」
「やっと正しいルートに戻ったみたいだな」

 レミラの証言にエディンはにやりと笑った。

2013/01/20 16:48 [edit]

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